留学と言えば、学問を修める場です。
彼はいったいどんな授業をとったのでしょうか。
前期の授業の様子を見てみましょう。
[ 1、留学開始編 ] [ 2、英語苦戦編 ] [ 3、前期体験入学 ] [ 4、高校生活編1 ] [ 5、日常生活編1 ] [ 6、後期体験入学 ] [ 7、高校生活編2 ] [ 8、日常生活編2 ] [ 9、卒業編 ]
前期のスケジュール表 [このページの目次]
前期 (9月〜翌年1月)
1st Semester科目名 内容 1限
7:45-8:40スピーチ
Speech I人前に出て話す。 2限
8:45-9:40幾何学
Geometry数学のお勉強。 3限
9:55-10:50心理学
Psychologyそのまま心理学。 10:50-11:20 ランチタイム
Lunch timeお昼やすみ 4限
11:25-12:15美術
Inc Drawingペンでお絵かき。 5限
12:20-1:15アメリカ史
U.S.Historyアメリカの歴史を学ぶ。 6限
1:20-2:15世界問題
World Problems中東問題をお勉強。
1限目 「スピーチ」Speech I 1989年9月〜1990年1月 ★★
『スピーチ』は留学生必修の科目、『英語』の一つです。なるほど、学校側が自信を持って留学生に薦めるだけあって、とても素晴らしい先生に恵まれました。
ハーレイ先生です。「おはよう! みなさん!」
毎朝、明るい笑顔で先生はクラスに入って来ます。「あなた、どこ出身なの?」
初対面の重太に気さくに話し掛けてくれました。
もちろん英語で。
「に、日本からきました。」
「そう! 去年、日本から素晴らしい生徒が来てたのよ!」
笑顔で迎え入れてくれたあの出会いは忘れられません。授業の内容は、その名の通り、人前で話すことを繰り返し行うクラスでした。
テーマはその度与えられます。
テーマ < 著名人になりきり、インタビューを受ける >
2人1組になり著名人とインタビューする人を演じます。
著名人役の人は、自分の興味のある有名人のことを調べあげ、シナリオをつくります。
それをインタビューする人にも渡し、質問してもらい自分でそれに応える、と言うものでした。重太はその年の2月に他界したばかりの『手塚治虫』を日本の偉大な漫画家として取り上げました。
「…だれ? あれ?」
もちろん、アメリカ人は『手塚治虫』のことなど誰も知りません。
有名人をとりあげたつもりだったのですが、アメリカでは通用しません。
せめて世界に名だたる『黒沢 明』くらいのビッグネームを持って来ないと…。
テーマ < 自分の知っていることを紹介 >
生徒それぞれが自分に関わりの深いものを紹介します。
ある生徒はアルバイトで習った接客の知識を披露します。
また、ある生徒は自分の馬を高校に連れてきて、蹄や毛の手入れの方法などを実際に行いました。
さすがアメリカ、かなり日本とは違います。「みんなに日本の伝統文化、折り紙を教えます。」
でました!
アルゼンチンにいた時にも大活躍した海外交流秘密道具=『オリガァーミィ』!
日本の文化を教えるのに、これほどお手軽なものはありません!「オオオオオオ!」
アメリカの高校生も『折り紙』に興味津々です。
どうやらツカミはオーケーの様でした。
重太はみんなの前に出て、日本人の得意技、折り紙の代表『ツル』の折り方を教えました。
前の日、家で一人『ツル』『真ん中まで折る』などといった英語を勉強してきたのでプレゼンテーションは完璧です。
皆にも折り紙をくばり、一緒にツルを折ってもらいました。「ゲイタァ、こっち来てぇ!」
「これでいいの?」
「ここを折り込むの?」気分は幼稚園の先生です。
あっちからもこっちからも手助けを求める声でいっぱいです。
それにしても、アメリカの『園児』たちはなかなかうまく『ツル』を折れません…。
どうやらいきなりハイレベルな折り紙を披露してしまった様です。
結局、重太はクラス全員の分の『ツル』を折るはめになりました…。
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2限目 「幾何学」Geometry 1989年9月〜1990年1月 ★★
「英語もたくさん勉強しなくちゃいけないのに、数学のレベルが高かったらどうしよう。」
受講する前にあった重太の不安はあっという間に消え去りました。
それほど彼が受講した「幾何学」Geometryのクラスは楽勝だったのです。授業は分数の足し算から始まり、角度の計算、面積を求める、因数分解など。
日本の中学で習う数学の知識で十分でした。初めのうちは、『英語が分からず』文章題の問題が解けないことがありました。
しかし、専門用語を覚えそれさえクリアしてしまえば恐いものなしです。問題を早くとけてしまった人の為に「エクストラクレジット」(=追加問題)というものがあります。
「すげぇーーー!」
「もう終わったみたいだよ…。」
それもドンドン解いてしまい、まわりの友達から天才扱いです。
「日本人は頭がいいんだ…。」
学期末の成績は118%というとんでもないものでした。「…へっ、アメリカの高校の数学はこんなもんかい!」
重太は鼻高々、てんぐ状態です。
根っからの文系なのに、数学の天才かと勘違いしそうな勢いです。
しかし、後から聞いた話によると、もっと難しい数学のクラスもいっぱいあったようでした。
授業を選んだ時、学校側が「数学くらいはやりやすいものを」と気を使ってくれたみたいです…。
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3限目 「心理学」Psychology 1989年9月〜1990年1月 ★★
「なんとなく興味があるから…。」
この程度の動機で、この心理学のクラスをとりました。
英語も全然わからないくせに…。アメリカの高校にしては珍しく、教科書の内容にそって授業が進む、日本でも見られるタイプのクラスでした。
「記憶に関する報告」
「刺激に対する反応」など、日本だと大学で学ぶような内容が扱われます。
見当もつかない英語の専門用語がみだれ飛びます。
『普通の』英語すら話せない重太には何がなんだかさっぱりわかりません…。「明日までにこの20ページを読んでくるように!」
宿題の量がムチャクチャ多いクラスでもありました。「これについてどう思う?」
宿題を踏まえた上で、授業中に生徒が発言をするディスカッション形式の授業が毎日のように続きました。
そういう環境で育ってきたアメリカの生徒たちは、自分の思っていることは 間違っていようとしっかり発言します。
一方、重太は手をあげて授業中に発言するということを小学校卒業以来したことがありません…。
『英語』だけでも大きなハンディがあるのに、授業に参加する姿勢でも大きく出遅れた感じがしました。「………(ぐっ)。」
こんなにキツイクラスだと、誰か教えてくれれば、彼の地獄の日々はなかったはずです。
興味本位だけでクラスを選択しては行けないという、いい例でした…。「がんばっているけど、君はこの問題の意味をわかっていない。」
筋違いな解答をして、テストが評価されずに返ってきたこともありました。
こんな経験、日本ではなかなかできないものです。
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ランチタイム Lunch Time 1989年9月〜1990年1月 ★★
オークハーバー高校では、自分が選択した4時間目を受ける棟(建物)によって、 ランチタイムに2つの時間帯が設けられていました。
食堂での混雑をさけるための措置でしょう。
重太は前半ランチ組でした。ランチタイムは、友だちとの歓談タイムです。
ジョークを披露したり、最近あったことを報告しあったりする、学校の中の社交場です。
ここで一人で食事しているようなら、その人の高校生活は色で例えるなら『灰色』に間違いなしでしょう。重太の仲のいい友だちは、ほどんどもう一方のランチタイムでした。
このままだと、彼も灰色一色のランチタイムを過ごしてしまいそうです。「ゲイタァ、一緒に食べようぜ!」
チャックとマイクが声をかけてくれました。
友だちなんて、英語をしゃべれなくても結構すぐ出来てしまうものです。
友達がまた友達をよび、いろいろな友達と一緒にランチをします。
一人でぽつんと食事する灰色の事態だけはなんとかまぬがれました。
彼はいつも食堂でサンドウィッチ2つとピザかハンバーガーを買っていました。
「いつもいつも、よく食べるねぇ…。」
顔なじみとなった食堂のおばちゃんがあきれて言いました。
「ここのサンドウィッチ、おいしいからね!」
本当はほとんど間食をとらない彼には、この量の食事では全然空腹が満たされないくらいだったのです。
食後にりんごを自動販売機で買って食べたり、木箱のサッカーゲームを楽しんだりして過ごす生徒が多く見かけられます。
ランチタイムはどの生徒にとっても、授業から解放されリラックスできる素晴らしい時間なのです。
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4限目 「美術(インクドローイング)」Inc Drawing 1989年9月〜1990年1月 ★★
お絵書きが好きな彼は、迷わずこのクラスを選択しました。
ペンとインクで絵を描くクラスです。
英語もあまり話す必要が無さそうなので、食後のひと休みに最適のクラスと言えます。綺麗な景色、身の回りの風景などをペンとインクだけで表現するクラスです。
鳥、トナカイ、岩山、空、お城、…。
教室の外に出ず、綺麗な写真の多い雑誌や自分の手持ちの写真を参考に描画します。描き終えた絵はカッティングボードに収め、飾れる状態にして完成です。
その他に、毎週末、身の回りにある物を鉛筆でデッサンしてくる宿題がありました。描かれた絵は学内で展示され、生徒相手に販売されたりもします。
彼が描いた「アイアンイーグル」も売られていきました。
右はその絵を描く前のラフデザイン画です。
今、この絵の行方はわかりません。
「この絵、くれない?」
左の絵は、ある生徒にとても気に入られました。欲しいと言われると、なんだか出し惜しみしたくなってしまいます。
オリジナルでなく、コピーをその生徒にあげました。
今となっては、自分の手元にとっておくものがコピーでもよかった気がします。
「ゲイタァ、これ知ってるかい?」
スタービッグ先生が自分で書いたメモを重太に見せました。
「ヘイク?(=H A K E) なんだろう?」
「知らないのか? おかしいなぁ、知人が日本の美術の道具だって行ってたのに。」「…………。」
重太はもう一度その文字をじっくり見ました。
「ああ! 『ヘイク』じゃなくて『はけ』(=H A K E)のことか!!」
多少は英語に慣れてきたためか、ちょっとアメリカンスタイルで文字を読んでしまった様です。
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5限目 「アメリカ史」U.S. History 1989年9月〜1990年1月 ★★
留学生必修科目その2、タイトルの通り、アメリカの歴史を学ぶクラスです。
本来なら11年生の必修科目なのですが、
「せっかくアメリカに来たのだから、学んでいきなさい」
と言わんばかりに選択させられた授業です。社会系のことがらに特に感心のない彼には大変『重荷』な授業でした。
アメリカの歴史の下知識もなければ、興味もないからです。
「お願いだから変えさせて下さい…。」
通年科目なのですが、彼は半年でギブアップしました。
このクラスで印象的だったのは、授業の内容よりも、先生と生徒のやり取りです。
授業中、納得ができない内容があり、ある生徒が先生に質問をしました。
そのうち、だんだんエキサイトして『議論』になってしまうのですが、生徒は一歩も引き下がりません。
自分が信じてきたものと少しでも違うものを聞かされようものなら、納得がいくまで引き下がらないのです。先生も人間です。
そのうち、つい生徒を非難して、結論を急ぐこともあります。
しかし、翌日、みんなの前できちんとその生徒に対して不適切なことを言ったと謝りました。この光景は、「先生は神、絶対間違ったことは言わない、教えない」
と言う日本的教育を受けてきた重太にはとてもショッキングな出来事でした。「日本の高校に戻ったら、授業中に納得できないところはトコトン先生に噛み付いてやる!」
彼は自分にそう誓いをたてました。
しかし、ディスカッションなどすることのない日本の『詰め込み型教育』の前では、 この誓いは何の意味もありませんでした。
前期のスケジュール表
6限目 「世界問題」World Problems 1989年9月〜1990年1月 ★★
世界問題(World Problems)はシニア(=最上級生)必修科目で、中東問題について学ぶ授業でした。中東と言えば、思想の違い、宗教の違いから戦争が何度もおこり、今でも多くの問題をかかえています。
前にも書きましたが、重太は社会系の事項にはほとんど興味がありません。
ハッキリ言って『苦手』です。
日本語でもよく分からない彼の専門外の内容を英語で学ぶとなると、大変さは2倍以上です。
たいして知りもしなかったことを英語でゼロから勉強していくのは、本当に苦痛でした。
成績はもっと痛いものでした。「なんで世界中にこんなに問題があふれているんだろう。もっと単純なら授業も楽だっただろうに。」
哀れな日本人留学生のために、世界中にあふれかえった様々な問題が解決される事を願います。
「ポップクイズ!」(=抜き打ちテスト!)
テスト範囲を指定されて勉強しても答えられないくらいなのに、 抜き打ちテストなんて死刑宣告されているようなものです。「みんな、安心してくれ。今日はクリスマスだから、誰もが点をとれるプレゼント問題があるぞ!」
誰もが答えられる『クリスマスにちなんだ問題』が最後にあると言うのです。●問:サンタのそりを引いているトナカイの名前をかけるだけ答えなさい。●
「………………。」
それは日本から来た留学生には、プレゼント問題でも何でもありませんでした…。
【答え】
ダッシャー、ダンサー、プランサー、ヴィクセン、コメット、キューピッド、ドナー、ブリッツェン、ルドルフ。
(Dasher,Dancer,Prancer,Vixen,Comet,Cupid,Donner,Blitzen,Rudolph)
前期のスケジュール表
…前期終了! 1990年1月26日 ★★
最初は英語もわからず、とにかく苦労した前期、ファーストセメスター。
ついていくのが精一杯ながらも、全ての課題をだし、テストも終わりです。
無事やり遂げる事が出来ました。
青空がまぶしかった。
「……努力すればできないことはない!」
アメリカを吸収しているのか、 英語も話せない 何を学んでいるかも分からなかった
前期のスケジュール表
留学と言えば、主な目的は『学業』です。
しかし、留学生活はそれだけではありません。学業以外の活動やイベントにも目をむけてみましょう。
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