学業ばかりが留学ではありません!
アメリカの高校に来たことで日本では味わえないようなイベントは多発します。
「Giro o Mundo」アメリカ留学編、彼の身にどんなことが起きたのでしょうか。
[ 1、留学開始編 ] [ 2、英語苦戦編 ] [ 3、前期体験入学 ] [ 4、高校生活編1 ] [ 5、日常生活編1 ] [ 6、後期体験入学 ] [ 7、高校生活編2 ] [ 8、日常生活編2 ] [ 9、卒業編 ]
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学期の最初に撮る写真 ![]()
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1989年9月 ★
日本では、新しい学年が始まる時にクラスで集合写真をとることが多いと思います。
ホームルームクラスのないアメリカでは、年度の初めに個人で写真を取ります。
撮った写真は、大、中、小、特大といろいろなサイズでたくさん焼き上がってきます。
裏に名前や住所、電話番号、そして一言書いて名詞代わりに生徒同士お互いに交換しあうのです。
どの生徒も笑顔で写真にうつり、斜め前から撮られるその写真はなにやらプロマイドみたいです。
重太ももちろん同様に写真を撮りました。
にきびヅラの笑顔はひきつっていてぎこちなく、写真に「撮られ慣れしていない」日本人留学生の雰囲気を丸出しです。
「ゲイタァ、なんで自分の写真をそんなに大事に持ってるの?」
半年程たったある日、ホストブラザーのスコットに言われました。
それを友だちに配るなんて言う事を知らなかった彼の手元には、反笑いのどんくさい写真がたくさん残っています。
2パターン撮ったうちの一つはなんと目をつぶっています。
その「特大」B6サイズ(大学ノートの半分の大きさ)の写真は目を覆いたくなるほどブサイクです。
仮に彼が写真を配る習慣を知っていたとしても、こんな写真をもらってくれる友だちがいるとはとても思えません。
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憧れのダンスパーティー ![]()
1989年9月 ★★★
映画「バック トゥ ザ フューチャー」(1985, アメリカ)のクライマックスで高校のダンスパーティーのシーンがあります。
この日のためにドレスを着飾った女生徒たちに、タキシードを身にまとう男子生徒たち。
バンドがステージ上で陽気な音楽をかもしだし、そのリズムにあわせ誰もが踊り狂います。
「すごく楽しそうだなぁ…。」
なんとも華やかなそのシーンは、いつしか重太の「憧れのアメリカン スクール ライフ」の典型となります。
そして、これは彼の留学の動機の一つとなりました。
オークハーバー高校では、地元でアメリカンフットボールやバスケットボールの試合がある金曜日の夜、 学校の講堂でダンスパーティーが開かれます。
学校で行う高校生のダンスパーティーということで、服装も普段取りラフで、アルコールなどは一切ない「ピュア」なディスコです。
M.C.ハマー、ポーラ・アブドゥル、ジャネット・ジャクソン。
はやりの音楽にあわせ、交互にすり足をしながら跳ねて踊ります。
「気持ちいい!! 楽しい!!!」
日本では、全くと言っていいほど味わえない体験です。
「いえーーーい!!」
ダンスなどしたことのない重太も適当に体を揺すぶり、踊ってる様なへんてこな動きでその場になんとか溶け込みました。
「…。 独特な踊りだね。」
まわりのみんなはコメントに困っています。
そんなのをお構い無しに、彼は踊り狂います。
かっこではなく、その場を楽しむ事が重要なのです!
♪〜〜〜〜〜。
汗をかくくらい踊り狂っているうちに、曲調が変わりました。
チークタイムの時間です。
彼はしずしず近くのいすへ引き上げていきます。
そう、女性にチークダンスを申し込む勇気など彼にはまだなかったのです。
カップルたちが体を寄せ合わせ同じリズムをゆっくりと刻みます。
ダンスホール中がムードたっぷりの空間になってしまいました。
それを彼は黙って遠くから見守ります。
テーブルの上のオレンジジュースだけがやさしく彼の相手をしてくれました。
こうして、静かに金曜の夜はふけていくのでした。
憧れの「アメリカのダンスパーティー」を体験することは出来ました。
彼は一つ、「夢」を現実にしたのです。
しかし、女の子の腰に腕をまわし、ロマンチックに踊る日は果たして来るのでしょうか?
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ちょっとしたこと ![]()
★
「はじめまして!」
高校で先生、生徒などいろいろな人たちと知り合いになる機会があります。
会う人会う人、手を握っていると、握力がなくなってきてしまう程です。
知り合いのほとんどいない留学生の場合、初対面の握手は毎日の様に繰り返されました。1時間ごとにクラスを移動するアメリカの高校では、廊下で友だちと頻繁にすれ違います。
「よ、元気?」
「なんか、面白い事あったかい?」
「かっこいいシャツ着てるね!」
すれ違う一瞬でも、みな、簡単な一言を交わしあいます。
「ハーイ! 元気?」
少ししゃべっただけのかわいい女の子に次の日、笑顔で声を掛けられた日には天にも昇る思いです。
そして、だんだん友達としての距離が近付いてくると、挨拶時に軽く抱き合う(HUG=ハグ)するようになります。
友達の距離が近ければ近い程、会っていなかった期間が長ければ長い程、ハグは強いものになります。
挨拶時、頬をあわせるキスも親しい間柄では行われます。
「ハーイ、ゲイタァ、元気だった?」
「うん、調子いいよ。」
キスで挨拶をしてから、普段通り何気ない会話が始まります。「お先にどうぞ」
ドアをあけて近くの人を先に通してあげることも彼の心をとらえました。
「ありがとう!」
通してもらった人も素直に笑顔でお礼をいいます。
なんだかとってもいい感じがしました。「ああ、アメリカにいるんだなぁ…。」
普段の行動のちょっとしたことからも、アメリカにいる実感は湧いてくるものです。
気持ちいい人間関係は、こうしたことから生まれるんだな、とアメリカの高校生活で感じました。
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ホームカミング・ダンスパーティー ![]()
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1989年10月28日(土) ★★★
「ホームカミング・ダンスパーティー」というものが多分、大抵のアメリカの高校にはあると思います。
オークハーバー高校では、「トロ」、「シニアボール」(後述)と三大ダンスパーティーの一つに数えられます。
このダンスパーティーは、アメリカンフットボールの記念試合の後、学校でいつもより盛大に行われます。
この日ばかりは、男性はタキシード、女性はドレスでめかしこみます。
そしてカップルで夜、一緒に高級レストランで食事をしてから会場へ向かうという、特別な日なのです。
毎年その年のホームカミング「キング」と「クイーン」を選びます。
日本の高校の文化祭でよくある「ミスター、ミス コンテスト」みたいなものです。
その選出にも全校生徒の関心が寄せられます。
この「キング」もしくは「クイーン」に選ばれると言う事は、孫の代まで語り継がれる大変な栄誉なのです。
ひょっこり8月に日本から来たばかりの重太には「キング」に選出される、などという話は一切ありません。
それより、誰とそのパーティーに行くか、という方が大きく切実な問題です。
誰もがとっくに彼氏、彼女がいるアメリカの高校で、パーティーの相手を探すと言うのはとても難しいことでした。
相手がいないから行かないというのは、せっかくのアメリカ留学を無駄にしてしまいます。
なんといっても彼の「憧れのダンスパーティー」です。
是非とも参加したいところですが、一人で行くというのもなんとか避けたいところです。
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憧れのチークタイム ![]()
1989年10月28日(土) ★★
「ゲイタァ、ホームカミングダンスに一緒に行かない?」
スピーチのクラスで一緒の女の子が声をかけてきました!
ヘザーです。
大抵ホームカミングは男性から女性を誘うものなのですが、まぁこういうのもありでしょう。
ヘザーは、ジョークをいつも飛ばしている明るい女の子です。
留学当初から気さくに彼に話し掛けてくれた人です。
「…OK!」
断わる理由が見つからない彼は、ちょっと考えた後、返事をしました。
これでやっと一緒にダンスに行くパートナーが見つかりました!
「シゲチャン、ヘザーとダンスパーティーに行くんだって?! はっはっは!」
イタリアからの留学生、アンドレは会う度に彼をあざ笑います。
それもそのはず、その子はクラス一、いや学校一「横幅のある女の子」だったのです!
彼が「ちょっと」考えた理由はここにありました。
そして、いよいよホームカミング当日になりました。
重太もスーツを身にまとい、大舞台へ向かいます。
「はい、もっと寄り添って! では、撮ります!」
入り口付近で一生の思い出となるホームカミングの記念撮影をしました。
それは彼にとって一生思い出したくないものとなりました。
日本に帰国した後、偶然その写真を見つけた彼の友達は言いました。
「うわ! 何、このドラム缶!」
「こんなのとダンスパーティーに行ったのか?」
「…け、経験値を上げに行ったんだよ…。」
ダンスパーティー自体はいつも金曜日の夜にあるのと雰囲気は変わりませんでした。
♪〜〜〜〜〜。
汗をかくくらい踊り狂っているうちに、曲調が変わりました。
チークタイムの時間です。
「ゲイタァ、踊ろう!」
チークタイムは大抵、一緒に来たパートナーととりあえずは踊るものです。
ヘザーの腰に手をあて、体を寄せ合わせ同じリズムをゆっくりと刻みます。
ダンスホール中がムードたっぷりの空間になってしまいました。
「………。」
念願の女の子とのチークタイムも、柔らかいドラム缶に手をまわして踊ってるようなものでした。
これは、彼が思い描いていたものとどこか違った様です。
念願の「女の子とチークを踊る事」は達成されました。
また一つ彼は「夢」を現実にしたのです。
しかし、「普通の」女の子の腰に腕をまわし、ロマンチックに踊る日は果たして来るのでしょうか?
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モーニングアナウンス1 ![]()
★
毎朝、始業時にアナウンスが入ります。
日付け、「星条旗への誓い」(Pledge to the Flag、右 参照)や連絡事項、オークハーバー高校のスポーツの対戦結果など放送されます。
「星条旗への誓い」とは、起立、脱帽して、右手を左胸にあて、誓いの定型文を皆で同時に斉唱することです。
式典や儀式、スポーツの試合の時などでも行われます。
彼ははじめ、わけもわからずまわりのマネをしていました。Pledge to the Flag
「星条旗への誓い」
I pledge allegiance to the flag of the United States of America and to the Republic for which is stands, one ntion under God, indivisible, with liberty and justice for all.
(アメリカ合衆国国旗とそれがあらわす共和国、神のもと1つの国家として、不可分であり、すべての人に自由と正義を与える国に忠誠を誓います。)
「お前はなんで星条旗に誓いをするんだ?」
「え?」
ある日、彼の留学仲間、イタリア人のアンドレが彼に聞きました。
アメリカ国籍を持たない彼は別にそれをする必要がなかったのです。
それ以降、彼は毎朝起立脱帽はしますが、右手を左胸にはあてませんでした。
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新しい校則? ![]()
★
「なんか、今日みんな帽子をかぶってるぞ!」
「!! 今日は、みんな頭が爆発してる!」
「なんで今日は、みんなぬいぐるみ持ってンだ?」
なんだか、高校中で示し合わせたかの様にみんなが同じ格好をしています。
「はやり? おまじない? それとも、校則?」
何が起こっているのか、重太には知る術もありません。●月曜日は「帽子をかぶってくる日」。
●火曜日は「パンクヘアーの日」。
●水曜日は「先生っぽいいでたちの日」。
●木曜日は「動物のぬいぐるみを持ってくる日」。
●金曜日は「かっこよく着飾ってくる日」。
実は、その1週間だけ限定の仮装通学週間が催されていたのです。
私服のアメリカの高校だからできるイベントでした。
「ゲイタァはいつも同じ服装で分かりやすいな。」
確かに、いつも赤い帽子に赤いジャケット、TシャツにGパン姿です。
校則や制服などないのに、そのスタイルが彼の制服になってしまっていました。
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シニア ロックイン ![]()
1989年9月30日 ★★
9月末には「シニア・ロックイン」という行事がありました。
シニア(12年生)限定、学校の講堂に土曜日の夜、一晩お泊まりするというイベントです。
ロックインの名の通り、外出禁止で次の日の朝まで講堂に閉じ込められる、というものでした。
とは言っても、そこでビデオ上映があったり、室内ゲーム大会があったり、ただみんなでくっちゃべったり…、とわいわい楽しく遊ぶだけのものです。
眠くなった人用に寝袋も用意されていました。どの生徒も徹夜慣れしているのか、ただ単純に楽しいからか、疲れを見せる様子すらありません。
明け方4:00。
アメフトのボールをキャッチするゲームが開催されました。
スポンジでできたアーモンド型のボールを壁に投げつけ、不規則にリバウンドするボールをキャッチした人が 次にボールを壁にぶつける、というお遊びです。
「うおぉぉぉぉ!!!」
徹夜などそれまで殆どしたことのなかった重太は、ハイテンションでその大会に参加していました。
「なんだよ、それ!」
「へたくそ!」
180cmある彼はリバウンドボールをキャッチ出来るのですが、 アメフトのボールをまっすぐ投げることは出来ませんでした。
うまい人が投げると、ボールはアーモンドの形を維持したまま、綺麗に回転して飛んでいきます。
日本でアメフトのボールなど投げたことがないので、当然と言えば、当然です。「ゲイタァは横で練習してろ!」
しまいに、ブルペンでの投げ込みを命じられてしまいました。
何回やっても格好わるい回転をしながらしかボールは飛んでいきません。
「こうやるんだよ。」
見兼ねたケリ−が来て、投げ方を教えてくれました。
「う、うまい…!」
女の子だから飛距離こそありませんが、しっかりと綺麗に回転したボールを投げています。
「アメフトのボールをうまく投げられないのは、アメリカ全土で俺だけ?」
その日から彼のアメフトボール投げの特訓は始まりました。
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モーニングアナウンス2 ![]()
★★
「モーニングアナウンスで日本語の挨拶をしてくれない?」
ある日、学校の事務室で頼まれました。
色々な国の挨拶をモーニングアナウンスで流そう、という企画の様です。
「オークハーバー高校のみなさん、おはようございます!!」
次の日の朝、日本語でマイクに向かって挨拶をしました。
気分はラジオのDJです。
朝一番、オークハーバー高校に彼のダミ声が全校放送されるという暴挙がなされてしまったのです。
「朝、なんて言ってたの?」
「あれ、ゲイタァが言ったんだろう?」
その日は廊下ですれ違う友達に一日中聞かれることになります。
日本語の挨拶が好評だった?らしく、この後数回、朝の挨拶をしに放送室に通うことになりました。
何がそれほどアメリカ人のハートをつかんだのでしょうか。
「シゲィタ=カブゥキ、あとで事務室に来て下さい。」
後日、重太はモーニングアナウンスで呼び出されます。
モーニングアナウンスで直々に呼び出されるとは、一大事です。
その日の空いた時間におそるおそる事務室へいってみました。
「悪いけど、退学してもらうよ。」
などと言われるようなことは一切していません。
「あ、シゲタ!悪いけど…、」
「!!!!」
「近くの小学校ヘ行って、日本のことを色々話してくれない?」
課外活動をしてくれ、という依頼でした。
どうやら、オークハーバーの町全体が妙に日本づいてしまったようです。
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世界にはばたく日本のアニメ ![]()
★★★
アニメーションは世界中に輸出されている数少ない日本が誇る大衆文化です。
「おお! これ、ガンダムだろ?」
重太が描いた落書きを見たアンドレが驚きました。
イタリアでも日本のアニメは大人気だそうです。
「じゃ、これ知ってる?」
「ルパンだ! すげぇー!! じゃ、次元は描ける?」
些細なことで話はどんどん盛り上がります。
「アラレちゃんは?」
「マジンガーZ描いてよ。」
いつの間にかリサやハミャン、ケリーなどが集まって来ました。
ブラジル、韓国、そしてアメリカでも日本のアニメは放送されているようです。
「ドラえもんだ!」
「似てる! 似てる!」
日本では理解されなかった彼の落書きが、今アメリカで大いに脚光を浴びているのです。
世の中、何が受けるかわかったものではありません。
そのうち、各国のオープニングテーマ歌合戦になってしまいました。
曲は一緒だけど、国によって歌詞が違うマジンガーZのテーマというのも面白いものです。
それにしても、アニメーションもバカにできたものではありません。
小さい頃、何気なく見ていたアニメが国際的なものだなんて、意外です。
「…よし! これからももっとアニメを見よう!」
そう心にかたく誓った重太でした。
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世界にはばたく日本の技術 ★★★
「ちょっとそれ見せて。」
「うわ、小さい! これ、どこで買ったの?」
彼は通学時、そして、クラスの移動時にいつもウォークマンをしてました。
当時、アメリカでうられていたウォークマンはがっちり頑丈、大きなボディーのものばかりでした。
彼のカセットケースサイズのウォークマンを見て、アメリカ人は驚きまくりです。
「日本人は何でも小さくするなぁ…。」
「え? これが電池?」
「これ何? リモコン?」
充電可能のガム電池、イヤホンについた簡単操作のリモコンを見て、またまた驚いています。
「日本人は何でも小さくするなぁ…。」
みんなの驚きは、ためいきにかわっていました。
「おい、それなんだ?」
カード電卓サイズの和英、英和辞書を発見したアメリカ人は驚きまくりです。
「これ、辞書なの?」
「こんなうすっぺらくて?」
「日本人は何でも小さくするなぁ…。」
日本の技術に誰もが驚きを隠せません。
「『しっと』、って入るかな…。」
試しに卑猥な言葉や汚いスラングをいれてみようとするのは、どの国の人も同じようです。
「それ、ビデオカメラか?」
彼の持っていたフォトカメラ、サムライを見てビデオカメラと勘違いしたアメリカ人は驚きまくりです。
「日本人は何でも小さくするなぁ…。」
「だから、これは写真をとるカメラだって!」
「何でも小さくするなぁ…。」
彼が何気なく持っていったアイテムはアメリカ人にはとても珍しくスゴイものに映ったようです。
まるでタイムマシンで原始時代に懐中電灯を持って行き、得意満面の「のび太君」の気分です。
日本の技術はなんとすごいこと。
「おお! ゲイタァ、今、どうやったんだ?」
授業中、何気なくやった「ペン回し」もアメリカ人には驚きの対象です。
「日本人は器用だなぁ…。」
「やり方、教えてくれよ!」
しかし、いくら教えてもアメリカの生徒達は、なかなかうまくペンまわしをできません。
「それはやめなさい、って言ったでしょう?」
みんながペンをしょっちゅう落としてうるさいので、ペン回しはクラスで禁止になってしまいました。
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世界にはばたく日本の文字 ![]()
★★
「なんて書いてるの?」
重太は留学開始当初、授業の要点は日本語でノートに書いていました。
見なれない文字を見たアメリカ人生徒は、不思議に思った様です。
「これが『ひらがな』って言って、音だけ表す文字だよ。」
「なにやってんの?」
興味を持った生徒たちが集まって来ます。
「こっちが『かんじ』って言って、文字だけで意味があるんだ。」
「俺の名前、日本語でどう書くの?」
「私の名前も書いて!」
「おれのも!」
授業を中断して、重太のひらがな、漢字講座が始まってしまいました。
初めて接する日本の文字や部首、表意文字の漢字にアメリカの生徒は興味津々です。
「文字が縦に書いてあるぞ!!」
縦書きの文章にびっくりしています。
「この本、逆から開くみたいだぞ!」
本の開く向きにも仰天しています。
我々日本人にとって、当たり前すぎることが彼らアメリカ人にとっては大変珍しく興味深いことのようです。
「英語を勉強に来たのに、日本語を教えてるよ…。」
これもまた、留学生の大きな使命の一つなのかも知れません。
こういった小さなレベルでの文化交流が広まると、お互いの国のより深い理解につがなるのではないでしょうか。
「………………。」
アンドレは、重太の日本語講座の横ですることもなくぽっつーんとしていました。
イタリア出身の彼は、文字においてはアメリカ人から興味を示されることがありませんでした。
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意外に知らない母国、日本 ![]()
★★
「ゲイタァ、宗教は何?」
「え? とくに何教というわけじゃ…。」
「えええぇ!!! 宗教に属してないの?」
「たいていの日本人は宗教にうといんだよ。」
それなりの事実を答えます。
「でも、宗教はあるんでしょ?」
「どれくらいの人が宗教に入ってるの?」
「どんな宗教が日本では多いの?」
未知の国、日本への質問はどんどん増えていきます。
「…………んっとね…。」
あれこれ聞かれてみると十何年間も住んできた自分の母国、日本のことを意外と知らないことに気付かされます。
宗教の話に限ったことではありませんが、日本について正しい知識があるかも疑わしくなって来ました。
日本語で説明することも無理そうなのに、英語でなどできるはずもありません。「日本文化について書かれてある本を送って!」
たまらず日本の実家に援助物資を要請しました。
宗教、言語、人種、産業、政治、思想、風土、文化、習慣、食事、…。
アメリカ人の中で生活をし、いろいろなことを比較することで自分が日本人であることをどんどん自覚していきました。
「よし! ちょんまげ姿、着物を来て学校へ行ってみるか!」
このように外見だけにとらわれた発想が海外でかたよった日本人像をつくってしまうのでしょう。
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ハロウィーン 大人側編 1989年10月31日 ★
「お菓子くれないといたずらするぞ!」(Trick or Treat!)
ハロウィーンは、子供がオバケに扮して、近所の家々をまわるアメリカの伝統行事です。
玄関先にオバケ(子供達)が来たら、お菓子をあげて退散してもらいます。
でないと家中を荒らされてしまうらしいのですが、そうなったという話はあまり聞いたことがありません。
「トリック オア トリート!」(Trick or Treat!)
夕方に家にいると、子供達が勢いよくブザーをならしてお菓子を催促に来ます。
「うわ! お化けだ!」
「わーーー!」
子供の仮装に驚いてみせたり、ちょっと驚かしてみたりして重太はお菓子をあげる大人サイドのハロウィーンを楽しみました。
「また来たな!」
ブザーがなったので玄関に行ってみました。
「…あれ?」
しかし、「Trick or Treat!」の可愛い声が聞こえてきません。
とりあえずドアを開けてみました。
すると一人のおじさんが立っています。
「? なんでしょう?」
「ご注文のピザです!」
何かと思ったら、ピザ屋のおじさんでした。
「お菓子をあげようかと思ったよ。」
「はっはっは!」
重太のアメリカンジョーク(?)におじさんは素直に笑ってくれました。
「ハッピー ハロウィーン!」
「ハッピー ハロウィーン!」
ピザ屋のおじさんはそう言って帰って行きました。
やっと彼もなんとなく英会話が出来るようになってきた様です。
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ハロウィーン 子供側編 ![]()
1989年10月31日 ★
普通、高校生はハロウィーンのお菓子ハントはしないものです。
あれは小さな子供たちの特権なのです。
「せっかくアメリカに来たのだから!」
ケリーに勧められ、重太は留学生仲間とお菓子ハントに出かけることにしました。
ハミャン(韓国)とアンドレ(イタリア)は小人
アナ(スウェーデン)は魔女、リラーニ(フィリピン)はゾンビ。
リサ(ブラジル)は布をまとってお化け。
それぞれ、ハロウィーンらしい仮装をしています。
重太は上から下まで黒い服を身にまとい出かけました。
「それ、なあに?」
「え?」
「何に変装したの?」
「……。 えっと…。」
みんなに聞かれる度に仮装した本人も困っていました。
高校生の機動力を生かして車でお菓子ハント開始です。
知らない人の家のドアをノックし、全員で
「Trick or Treat!」(「お菓子くれないとイタズラするぞ!」)
と叫びます。
大きな来訪者に戸惑いながらも、どの家の人たちもお菓子をくれます。
「ところで、君は何に扮してるの?」
「……。 えっと…。」
行った先々でも彼は何度も同じことを聞かれました。
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ハロウィーン 帰宅編 1989年10月31日 ★
ハロウィーンを満喫し、お菓子も十分ゲットしました。
「そろそろ帰ろうか。」
車に乗ろうとすると、行きは全員乗れたはずの車に乗れません。
10人で1台の車に乗るのは、やはり無理があったのでしょう。
行きに10人も乗れた方が不思議になってきました。
「二人くらい、トランクに乗って!」
ケリーの提案で、アンドレ(イタリア)と重太(日本)が世界を代表してトランクに乗ることになりました。
息ができなくなると困るので、手でトランクのふたを少し開けた状態にして出発しました。
ガタッ、ドスン!
トランクの中には、クッションなどないので乗り心地がいい訳ありません。
外が全く見えないので、段差が近付いている、とか、停止する、といった車の動きに体をあわせる事ができません。
さらに警察に見つかったらキップを切られる事は間違いありません。
「いつまでこんな状態なんだぁ…。」
外で何が起こっているのか、いつ頃家に到着するのか、一切わかりません。
お菓子ハントの帰り道がハロウィーンで一番恐い体験でした。
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週末の映画 ★
金曜日は友だちと夜遊びをする日です。
次の日、学校が休みなので勉強のこともしばらく忘れ、ここは一つ大暴れしておきましょう。
と言っても小さな町オークハーバーで高校生ができる遊びと言うと限られてしまいます。
そこで高校生が金曜の夜によく行くのが「映画」です。
約5ドル(当時約700円)とお手ころ価格の映画は高校生の絶好の週末のレジャーです。
「7月4日に生まれて」
「マグノリアの花たち」
「ローズ家の戦争」
「リトルマーメイド」
「ブラインド フューリー」など見にいきました。
字幕のない映画は大変辛いものです。
しかし、「バック トゥ ザ フューチャー2」、そして「バック トゥ ザ フューチャー3」は違いました。
「バック トゥ ザ フューチャー」(1作目)のダンスシーンをみてアメリカ留学を決めたと言っても過言ではない重太にとって、この映画は思い入れのある特別なものです。
その続編を自分の留学中に2本も見れてしまうなんて、なんて幸運なのでしょう!
これは彼のアメリカ留学生活の中でベスト5に入るビッグイベントでした。
「面白かった−−ー!!」
映画を見終わった後はおおはしゃぎです。
ホバーボード(未来のスケートボード)に乗るマネをしてそこら中を走り回ります。
しかし、楽しい時間もここまで。
家に帰る時間がやって来ました。
「トウサン? 映画館の前まで来てくれる?」
車と言う機動力のない彼は、ホストファザーに迎えにきてもらうことになります。
高校生のくせに一人で家に帰れないのか、と情けなくなりますが、夜遅く電車やバスなどないので仕方ありません。
自分がさんざん遊んだ後、家に帰るためにわざわざホストファザーに迎えに来てもらうのは、なんとも気が引けてしまいます。
同年代のホストブラザーでもいれば多分車も免許も持っていて、随分と気楽に夜遊びもできたことでしょう。
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欠席する際 ![]()
★
「昨日、風邪で学校を休みました。」
学校を欠席をした場合、次の日に事務で欠席理由を言ってチケットをきってもらいます。
そのチケットを持って欠席したクラスの先生に見せると「理由のある欠席」とみなされます。
彼は留学生の集い、部活動の試合(後述)、風邪などで数回授業を欠席したことがあります。
「こんなので欠席証明になるのか…。」
いくらでもウソをついて好きなときに学校を休めてしまいそうです。
こんな荒技ができるなんて、学校側はよっぽど生徒を信頼しているのでしょう。
それとも、全て生徒の責任と割り切っているためでしょうか。
そういえば、ある友達は「バカンス」といって一週間フロリダへ行ったり、別の友達は海外へ行ったりしてました。
「そんなのも、ありなのか…。」
学業が生徒の本分、という日本の考え方からは考えられないことです。
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ドアのないトイレ ![]()
★★★
重太は、目のやり場にこまりました。
体育館のトイレの「大」をする方の個室にトビラがついていなかったからです。
中では一人の生徒が奮闘中でした。
これは、彼の留学中で1、2を争う程、ショッキングな出来事でした。
「自分がもし、もよおしてきてしまったら…。」
そう思うだけでゾッとします。
しかし、校舎内のトイレには、きちんとすべての個室にトビラがついていました。
なぜか、体育館のトイレにだけ、トビラがなかったのです。
なるべく体育館には近付かないようにしていました。
しかし、冬になり、彼は春のシーズンスポーツを前にウエイトトレーニングに参加することになりました。
「…う、うぐ!!!」
何日もトレーニングをしていれば、お腹が痛くなる日もあります。
仕方なく、近くのトイレに駆け込みました。
ひとまずホッとはするのですが、用を済ますまでは落ち着けません。
ただただ、人が来ないのを祈るのみです。
ザワザワ…。
しかし、そういう時に限って、生徒達がたくさん入ってきたりするものです。
ワイワイ………。
生徒達が通り過ぎていく際、何人かが何気なくこちらに目をやります。
「………………。」
話し掛けられたり、凝視されたりすることはありませんでしたが、なんとも落ち着かないものです。
奮闘中は、見るのも、見られるもの心地いいものではありません。
日本の小学校で大きい方をする時、なぜか落ち着けませんが、そんな感じなどここでは比べ物にならないほどです。
目次へ
留学中は、学校生活以外にもアメリカ人の家庭に入って営む普段の生活もあります。
日本とはかってが違うアメリカンライフで、彼はまたいろいろなものに出会います。
日常生活編1へ
高校生活編1 目次
・学期の最初に撮る写真 ………年度のはじめに個人写真撮影・憧れのダンスパーティー ………夢にまで見たダンスパーティーに参加
・ちょっとしたこと ………「あいさつ」で実感するアメリカ
・ホームカミング・ダンスパーティー ………高校生活3大イベントの第1段
・憧れのチークタイム ………いよいよ念願のチークタイムを女性と踊ることに
・モーニングアナウンス1 ………「星条旗への誓い」が毎朝アナウンスされる
・新しい校則? ………学校中の生徒が同じ服装に
・シニア ロックイン ………夜通し遊ぶ、学校公認お泊まりイベント
・モーニングアナウンス2 ………彼が全校放送でアナウンスをすることに
・世界にはばたく日本のアニメ ………日本産アニメの意外な認知度
・世界にはばたく日本の技術 ………ハイテク王国、日本の製品、他
・世界にはばたく日本の文字 ………伝統の国、日本の文化
・意外に知らない母国、日本 ………アメリカと比較することで生まれる日本人としての自覚
・ハロウィーン 大人側編 ………お菓子を求めて子供達はさまよう
・ハロウィーン 子供側編 ………お菓子を求めて高校生も車でさまよう
・ハロウィーン 帰宅編 ………帰り際のあぶない出来事
・週末の映画 ………夜、友達と映画を見に
・欠席する際 ………意外と簡単な欠席証明書
・ドアのないトイレ ………とにかく落ち着かない空間
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