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Tilte_LOGO
アメリカの高校生活にも徐々になれてきました。
とはいっても、毎日が新しい日々の繰り返し。
「Giro o Mundo」アメリカ留学編、後半の彼の高校生活を見てみましょう。

[ 1、留学開始編 ] [ 2、英語苦戦編 ]  [ 3、前期体験入学 ]
[ 4、高校生活編1 ] [ 5、日常生活編1 ] [ 6、後期体験入学 ]
[ 7、高校生活編2 ] [ 8、日常生活編2 ] [ 9、卒業編 ]

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 険しい英語道 OHHS
1990年2月 ★★

留学前半戦を終え、アメリカの高校や生活には徐々に慣れていきました。
しかし、思ったよりなかなか身につかないのは『英語』でした。

「Hi, how are you doing?」(=やぁ、調子はどう?)
「This is really dericious!」(=これ、本当においしいね!!)

挨拶や、自分の思ったことなど簡単な表現はできるようになってきています。
さすがに留学当初より、単語の量や慣用表現なども少しずつですが増えていっているはずです。
しかし、客観的な状況説明はまだまだできませんし、考えずに英語を言うことなどまだできませんでした。

「3ヶ月で英語は話せるようになります。」
留学開始前にオリエンテーションで言われた言葉ですが、そんなことはありませんでした。

「俺、このままたいして英語も話せないまま帰国するのかなぁ…。」
英語がペラペラになって華やかな留学生活が送れると勝手に思い描いていたのに、実際はそううまくいかないようです。

Oak Harbor 89
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 サッカークラブ パート1  OHHS
1990年2月 ★★

3月から春のシーズンスポーツ、サッカーチームに重太は参加することにしました。
留学前、日本の高校の部活動でサッカー部だった彼には当然の選択です。
シーズン前から体育館のジムで筋肉トレーニングをさせらりたり、家の周りをいやいやジョギングしたりして、 準備は万端です。

シーズンのはじめ、とりあえず2軍に入れさせられました。
簡単なテストをした後、1軍入りを認められます。
アルゼンチン育ちの彼には当然の結果でしょう。

いよいよ1軍での練習が始まりました。
日本ではなかなか味わえない芝生のグランドが何ともうれしいものです。

soccer 1
「スクウェアー!」
「シューター シェイク!」
「プレイ オーン!」

英語でいろいろ指示を出されますが、よく意味がわかりません。

「それ、どう言う意味ですか?」
プレー中にこんなことを聞いたら、バーカー監督に殺されそうです。
その叫び声は、彼が寝る前に頭の中で永遠にこだまし続けました。

そんなこんなで、開幕戦になりました。
なんと、彼は左サイドバックとしてアメリカデビューすることになりました。
日本でもディフェンスをやっていたので、これならうまくやっていけることでしょう。

チームメートとあまり英語でコミュニケーションをとれないまま、試合が進みます。
 :
 :
 :
結果は0対1、惜敗です。
悔しいですが、まだ初戦、次から頑張りましょう。

その後、彼は何試合も出場しますが、チームはなかなか勝てません。
風邪をひき、練習に出れなくなってから、彼はレギュラーからはずされてしまいました。
アメリカで華々しくサッカー界にデビューしたはずですが、どこかで歯車が狂ってしまったようです。
彼はこのままズルズルと落ちぶれていくだけなのでしょうか?

パート2につづく

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 念願のスクールジャケット  OHHS
 ★★★

オークハーバー高校に制服はありませんが、スクールジャケットをみな好んで着ています。
スクールジャケットとは、スクールカラーの「スタジャン」に自分の名前や学校のマスコットキャラクターを入れたもののことです。

School Jacket オークハーバー高校のスクールカラーはゴールド&パープルなのですが、スタジャンは濃紺をベースに黄色がちりばめられています。
大抵の生徒は背中に自分の名前と「WILDCATS」(=学校のマスコット)のロゴとマスコットキャラクターを張り付けます。
胸にある「OH」(=Oak Harbor)のロゴの上には所属スポーツチームのマークをいれます。
ポケット付近には、自分の卒業年をいれます。

重太はせっかく作るなら特別なものを、と思い考えていたものがありました。
それは、背中に日本の国旗「日の丸」を張り付けることです。
左腕にはアメリカの国旗、右腕にワイルドキャッツのマスコットキャラクターを入れました。

ハミャン(韓国)、アンドレ(イタリア)、リサ(ブラジル)ら留学生も同様に自分の国旗を背中にでかでかと張り付けていました。

「いーねー!!」
これはこれでとてもいい留学の思い出の品になりました。
ただし、日本では恥ずかしくてとても着れたものではありません。

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 サウス・ウィッドビー高校にて 歓迎される
1990年2月 ★★★★★

widbey 地図
「留学生はサウス・ウィッドビー高校に行って下さい。」
なにやら、この近辺の留学生を一同に集めてイベントをするらしく、オークハーバー高校にいる10人の留学生は揃ってウィッドビー島の南にあるその名も「サウス・ウィッドビー高校」へ行くことになりました。

バスで1時間の旅はちょっとした遠足気分です。
学校の授業の事も忘れ、浮かれ気分で南を目指します。

待ち合わせ場所にはサウス・ウィッドビー高校の生徒が数人待っていました。
重太はサラという女の子の家に2日間、ホームステイすることになりました。
ジュニア(2年生)の彼女は国際関係に興味があるらしく、この留学生の集いの主催メンバーとの事です。

金曜日丸一日をサウス・ウィッドビー高校で過ごすことになりました。
違う高校で過ごすと言うのも新鮮でなかなかいいものです。
朝礼に続いて、留学生の集いがサウス・ウィッドビー高校の全校生徒を集め盛大に行われました。
各校の留学生が一人ひとり出身国と名前を呼ばれステージに立ちます。

Introduction
「シゲィタ=カブゥキィ、フロム ジャパーン!」
ボクシング世界タイトルマッチのような紹介のされ方です。
両手を上げガッツポーズをしながらステージへ歩き出すと会場から
「ドォー!」っと歓声があがりました。
ちょっとしたことが妙にうけたみたいです。
本当に世界チャンピオンにでもなったような気分です。

「大きな声援、ありがとう。 カブキ シゲタです。 サウス・ウィッドビー高校気に入りました! どうもありがとう!」(=英語で)

「ドォー!」
彼のマイクパフォーマンスの後、またまた大歓声が上がります。
彼は一躍サウス・ウィッドビー高校のヒーローになりました。
地元オークハーバー高校ですら味わったことのないこの待遇に彼は浮かれ気味です。
ここにきてやっと彼のアメリカ留学にも華やかさが感じられるようになりました。

その後、丸一日サウス・ウィッドビー高校の生徒として授業を受けることになりました。
「You are a funny Japanese guy!」(=日本のおかしな奴)
どのクラスへ行ってもまわりの生徒達から親しみを込めてこう言われました。

はるか7ヶ月前、留学開始時に教わった
「留学の心得」
・何でも試してみよう、
・ありがとう、と言おう
・英語を話そう
を実践してみると、なるほどうまくいきました。
一度成功すると、同じ要領でどんどんやってみたくなるものです。
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 サウス・ウィッドビー高校にて 積極的になる
1990年2月 ★★★★★

その日は一日体験入学のような感じで自分の好きな授業を選んで受けました。

まず、ウェイトトレーニングのクラスに参加しました。
「Good job!」
まわりの反応がやけにいいので、少し無理をしてまで重いバーベルを上げてみました。
次の日はもちろん、筋肉痛でした。

スペイン語のクラスでは
アルゼンチンの生活中、身につけた「なんちゃってスペイン語」で自己紹介をしました。
「スペイン語も話せるの?」
「ま、まぁね!!」
「すげーー!!」
まわりの驚く反応が心地よく、思わずそう答えてしまいました。

「クアント アーニョス ティエネ?」
「デ ドンデ エス?」
それからひっきりなしにスペイン語で質問されてしまいます。

「ノー エンティンド!」(=わかりません!)
ときちんとスペイン語で答えました。
これさえ言えれば恐いものなしです。

美術のクラスでは炭で絵を描きました。
「GIve me a good grade!」(=いい成績つけてね!)
と言って次のクラスへ行きました。

「日本の場合だとみんな、同じように足並みをそろえるのが普通です。」
アメリカ史のクラスでは日本との立場の違いについて積極的に意見を述べています。

Speaking English
なんでしょう?
この生き生きした重太は?
積極的にアプローチすることが評価され、少し調子に乗ってるようです。
「ここには数日の滞在のみ、失敗しても関係ないや!」
という捨て身覚悟の行動がうまくいったようです。
いつもの数倍も充実した1日を過ごしました。

さらに、まがりなりにも英語がどんどん出てきます。
とりあえず、相手に通じている様ですから、ここはよし、としましょう。

昨日までたどたどしかった英語が急に話せるようになったのです。
このままでは、帰国した時に日本語を話せなくなってしまいそうです。

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 サウス・ウィッドビー高校にて 夢叶う
1990年2月 ★★★★★★★

その晩は金曜日と言うことで、ダンスパーティーが留学生を交えて盛大に行われました。
オークハーバー高校とは規模が違いますが、小さいながらもいいノリのパーティーが続きます。

はちまき
うかれ気分の重太は日本から持ってきた秘密兵器「カミカゼはちまき」を頭にまいて登場です。
「ワーオ!」
「カラテキッド!」
日本人が日の丸はちまきをつけて踊ってるだけで注目のまとです。
それも皆、暖かく迎え入れてくれます。
サウスウィッドビー高校の人たちはいい人ばかりです。
「たまには、はめをはずしてみるものだなぁ!」
このとき彼は悟りました。

ノリのいいビートから、ミディアムテンポの曲に変わりました。
そう、チームタイムです。
いつもだと、踊る相手もいないので、しずしず近くのテーブルに戻ってコーラでも飲んでいるところです。
しかし、この日ばかりははめのはずしついでに、クラスで一緒だった女の子をダンスに誘ってみました。

「僕と踊ってくれる?」
「ええ、よろこんで!」

Dream comes true!!
こんな事があっていいのでしょうか?
さっき知り合ったばかりのかわいい女の子の腰に腕をまわし、リズムにあわせて同じステップをゆっくりと踏むのです。
「うれしいぃぃぃぃ!!!」
彼はもう有頂天です。
アメリカ青春映画の主人公にでもなったかの気分でした。
そして、チークの度に次々と積極的に女の子を誘い、踊りました。

重太はアメリカのダンスパーティーに憧れ、留学を決意しました。
そして今、彼はその夢の瞬間にいるのです。
普通の女の子とチークを踊る「夢」がやっと達成されました!
(参照→
ホームカミングダンスパーティー
思い起こせば、これが彼の人生で最良の日だったのかも知れません。
永遠にこの時が続けばいいとさえ思いました。

この「サウスウィッドビー高校」に来たことは彼の留学のターニングポイントなりました。
ほんの1、2日しか滞在しないこの地で「捨て身の行動」に出たことがいろいろうまく言ったのです。

「元気でね!」
「すごく楽しかったよ!」
次の日、重太はオークハーバーに戻りました。
留学生活もいよいよ残り3ヶ月です。

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 神を見るような目 
1990年2月 ★★★

ある夜、友達が集まって、ニンテンドウ(=ファミコン)をすることになりました。
1年遅れでアメリカでも発売になった「スーパーマリオ3」をするためです。

ステージをクリアしようと皆で頑張ります。
コントローラーを奪い合うほどの熱の入りようでした。

「ちょっとまって!」
重太が叫びます。
「ここに隠し部屋があってアイテムがあるんだよ。」
「どこだよ!」
「ちょっとコントローラー貸して。」

god....!
彼はマリオを操作して画面の外、見えないところへ飛んでいきます。
普通にゲームをしている限り、そんな所へ行ってみようと考えすらしないようなところへです。

「????」
急に画面が切り替わりました。
なんとその部屋にはアイテムの箱があり、ステージをワープできる笛があったのです!

「これで好きなステージ、どこへでも行けるよ。」
「……………。」
「……ワオ…。」
「すげぇ、なんでそんなこと、知ってんだよ。」
まわりの友達の視線はまるで神様でも見ているようでした。
ちょっとした予知能力者気分です。

日本で遊びこんだゲームがこんなところで役にたとうとは夢にも思いませんでした。
世の中、何が役に立って、何がそうでないか、分からないものです。

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 TOLO 
1990年3月 ★★★★

2月のある日、風邪を引いてくたばっていた重太のところに電話がかかってきました。
「シゲチャン? ケリーだけど。」
「ハーイ、ケリー。 元気?」
「うん。 元気だよ。 あのさ…。」
「?」
「3月にある、TOLO なんだけど…。」
「TOLO? なにそれ?」

TOLOとはオークハーバー高校3大ダンスパーティーの一つ、仮装パーティーのことです。
普通のダンスパーティーでは男性が女性を誘うものですが、このTOLOでは女の子が男子をパーティーに誘うことになっています。
そしてカップルで何かに仮装してパーティーに参加するという「一風変わった」ダンスパーティーです。

「一緒に行く女の子はいる?」
「いるもなにも、そのパーティーのこと自体を今知ったよ。」
「よかったら、一緒に行かない?」
「うん、いいよ。 よろこんで!」

ケリーは、前年、1年間日本に留学していた活発で明るい女の子です。
日本語も話せますが、アメリカでは他のアメリカ人と同様、英語で重太に接してくれました。

3月、TOLO の当日になりました。
昼間は、フェリーに乗り、隣の島のポートタウンセンドという小さな町に行きました。
大きなメインストリートの左右に可愛らしい店が並び、とてもいい感じの町です。
小雨混じりの中、外でミルクシェーキを飲んでから、オークハーバーへ戻りました。

police and ...
夜、二人は仮装して夕食をメキシコ料理屋、エル カザドールで食べました。
重太は1920年代のスコットランドヤード(イギリスの警官)、そしてケリーはコールガールに扮しています。
「こんな格好で外食するのもなぁ…。」
こっぱずかしく思っていましたが、オークハーバーの町中がこのTOLOのことを認識しているようです。
変な目で見られることもなく、普段通りに食事をできました。
仮装してレストランで食事することは、これが最初で最後でしょう。

食事を終わらせ、いよいよダンスパーティーの会場、大学のパーカーホール(=講堂)へ向かいます。
まわりを見回すと、マフィアや赤ちゃん、50年代の高校生、日本の浴衣姿など、様々な衣装の人たちがいました。

「はい、笑って!」
記念撮影を済ませた後は、踊って騒いで、といつものダンスパーティーと変わりませんでした。
しかし、チークタイムはいつもより長い気がしました。

「踊ってくれないと逮捕するぞ!」
「OK!!」

警官とコールガールが「Stand by me」のリズムにあわせて踊りはじめます。
おや?
なんだかちょっといいムードです。

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 サイクリング1  bike
1990年3月 ★★

「今度の土曜日、空いてる?」
「うん、空いてるよ。」
TOLO 以降、重太はケリーとよく遊びに行くようになりました。
気候も穏やかになり、町から30km位離れた海岸の要塞までサイクリングをしました。

そこには西の海岸に向けられた大砲が何台も残っています。
大平洋戦争中、日本がアメリカ本土に攻めてきた時の事を考えてたてられた要塞とのことです。

そのへんを散歩して芝生の上で話ながらランチをしました。

行きは順調に目的地に辿り着いたのですが、帰りは途中でどっと疲れてしまいます。

「バスにのせてもらおうよ。」
ケリーが言います。
「自転車も一緒には無理じゃないかな。」
重太はそう思いましたが、彼女は果敢にバスのドライバーと交渉をします。

「ダメだって…。」
「そう…。 残念だね。」
結果的には自転車をバスに乗せることはできませんでした。
しかし、ダメもとでも聞いてみる彼女の姿勢に大変感心したものです。

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 虎穴にいらずんば… 
1990年4月 ★★

重太もアメリカに来てからはや8ヶ月経ちました。
徐々に英語を話せるようになってきたと言っても、まだまだ知らない単語、表現は山ほどあります。
それでも身ぶり手ぶりを加えて、ちょっとばかりの冗談も言えるようになりました。

「Don't be silly!!」
ばかなことをやってる彼にケリーはそう言いました。
「今のは『ふざけないで!』って意味だよ。」
なるほど、新しい表現を知りました。

彼女が出来ればいろいろ話をします。
英語もメキメキと上達していくものです。

ある日、重太はケリーに夕食に誘われました。
彼女の家族に囲まれ楽しい時間が過ぎていきます。

「最近、食事がおいしくてたくさん食べるんだ!」
「豚みたいに?」
「なんですって?」

軽いジョークのつもりでいったセリフが、彼女を怒らせてしまいました。
「怒らない、怒らない。彼も悪気はないんだから!」
笑いながら彼女の母がケリーをなだめます。

どん欲、不潔、おお飯ぐらい、などの意味をもった豚(pig)という語は女性に使うべきではありません。
英語を話していく内に、こういった失礼なこともしてしまうものです。
虎穴に入らずんば虎児を得ず、どんどん間違えて正しい使い方を学びましょう。

しかし、言う相手とタイミングだけは十分に気をつけたいところです。

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 サイクリング2  bike
1990年4月 ★★

今度はケリーのお父さんの別荘までサイクリングすることにしました。
100kmの道のりを一日かけて走破する予定です。

林道を抜け、丘を越え、どんどんペダルをこぎます。
「気持ちいいなぁ!!」
冬が終わったワシントン州は、サイクリングが最適の季節になりました。

長い橋を渡ったところでランチタイムです。
「あとどれくらい?」
持ってきたサンドウィッチを食べながら聞きました。
「残り30kmくらいかな。」
「………。 そう…。」
とっくに200kmくらい走った気分でした。

ところどころ、二人で記念写真をとってから、また目的地を目ざしてペダルをこぎ続けます。
進んで、休憩をとり、少し進んで、また休憩をとって…。

「We did it!! (やったぁ!)」
「いやぁ、よく走った!!!」
ヘトヘトになりながら、6時間かけ、やっとのことで目的地に到着しました。
サッカークラブで運動をしていなかったら、途中でダウンしていたことでしょう。
ケリーより先に…。

cycling
一晩、ケリーのお父さんの家でお世話になり、次の日の昼過ぎ、オークハーバーに戻ることにしました。

自転車2台を車につみ、途中まで送り届けてもらいます。
「あれだけ苦労してこいで来たのに…。」
行きに6時間かかった道のりは、車だとたったの1時間で戻ってきてしまいました。
文明とは、とても偉大なものです。

数日後、途中で撮った写真が出来上がってきました。
「…なんじゃ、こりゃ?」
逆光で二人は真っ黒に写っています。
シルエットクイズに使えそうな出来映えです。

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 はち合わせ
1990年4月 ★★

「一緒にシアトルに行かない?」
ケリ−が買い物があるということで、重太もヒョッコリついていきました。

「ここのスコーンがおいしいのよ!」
パイクプレイスマーケット近くを車で通った時、ケリ−が叫びました。
店には駐車場がないので、重太がスコーンを2人分買い、車に戻ります。

「ジャムがなかったらおいしくないでしょ!」
「あ、これ、そういうモノなんだ…。」
再び店に戻って、スコーンにジャムをつけて来ました。

「うまい! うまい!!」
車を駐車場にとめ、港の近くにある公園でスコーンを食べている時のことです。
「シゲータ!!」
後ろから女性に名指しで呼ばれました。
シアトルに知り合いなんていないはずなのに。

「サラ!!」
誰かと思って振り返ると、そこにはサウスウィッドビー高校で友達になったサラがいました。
ショートヘア−で明るく元気な女の子で、重太もかわいいなぁ、と思っていた子でした。
「元気にしてた?」
「うん!」
隣でケリ−が不思議そうな顔をしていました。

「あ、彼女はサラ。サウスウィッドビー高校に言った時、友達になったんだ。」
別にサラとはやましい関係ではないのですが、なんとなくとまどいがちに紹介しました。
なんだか、ドラマでよくある『自分と親しい二人の女性が偶然はち合わせ』してしまったような感じです。

「Hi! I'm Sara. I'm from South Widbey! (私はサラ。サウスウィッドビーから来てるの。)」
「Hi, I'm Kelly. I'm from north. (私はケリ−、ノースから来てるの。)」
サウスウィッドビーのサウス(南)にひっかけて、自分はノース(そのウィッドビー島の北部)から来てるという対応です。

「……………。」
ジョークを交えたほがらかな対応だったのか、それ以外のものだったのか?
なんともとらえにくい自己紹介でした。

「…………。」
「…………。」
(な、なんかまずい雰囲気かな…。)
「あ! このスコーン、おいしいんだよね!!」
「そうなのよ! 食べる?」
重太の心配をよそに二人は意気投合したようです。

「いつもどこらへんで買い物するの?」
「そうねぇ…。」
「…………。」
重太なんかそっちのけで楽しそうな会話は果てしなく続きました。

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 サッカークラブ パート2 
1990年5月 ★★

風邪をひき、サッカークラブの練習から一時はなれた重太は、その後試合に出れなくなってしまいました。
「ゲイタァ、今日はでないのか?」
そういうときに限って、友達が試合を見に来たりするものです。
活躍どころか、出番すらまわってこない日々が続きました。

そんな状況に彼はくさっていました。
「がんばれば、認めてもらえるよ。」
ケリーの声援は何よりの励みになりました。

ある日の練習でのことです。
「紅白戦やるぞ!」
「監督、僕は?」
「あ……。 えーーと、空いてるポジションは…。」
ここのところ存在感が薄く、忘れられていた様です。
「Bチームのフォワードに入れ!!」
人数調整のため、彼はフォワードをやることになりました。

SHOOT!!
そんな彼にパスが来ます。
「ゴー! ゲイタァ!」
一人かわし、二人かわし…、シュート!!
「ああ! おしい!!」
なんだか思った以上に体が動きます。

センタリングにあわせてダイビングヘッドをしたり、スルーパスを出したり…。
「いいぞ! ゲイタァ!」
ハッキリ言って絶好調でした。

「ゲイタァ!!」
監督のバーカーがなんだかすごい形相でやって来ました。
「ゲイタァ!!!」
「な、なんでしょう?」
「このことを何で今まで黙ってたんだ!」
「な、なんでって…。」
「今度の試合はフォワードで出場だ!」

人生どうなるか、分かったもんじゃありません。
確かに彼は小学生のころはバリバリのフォワードの選手でした。
しかし、それ以降はディフェンス中心の練習しかしていません。
それなのに…、…ねぇ。

次の試合、アメリカでフォワードとして再デビューが決まりました。

パート3につづく

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 スプリング・フリング 
1990年5月 ★★★

春の暖かい日、スプリング・フリングという小運動会が学校のグランドで行われました。
「ひざでバナナ渡しリレー」
「女の子運びリレー」
「ワーゲン押しリレー」
「綱引き」
「三輪車400mリレー」
「イズィ・デズィ」(バットをたて、額をあて10回まわってから走るリレー)
といった種目で日本の運動会とは、ひと味違う「お楽しみ会」的な大会でした。

Spring lunch
その後は学校の芝生の上で大勢の友達とランチです。
今日は全校生徒が2ndランチでした。
(普段は生徒が選択している4限の校舎によって、
1stランチと2ndランチと分けられています。)

アンドレ、リサ、ハミャンら留学生たち。
ケリー、ブランドン、トニー、エルシー、ジョアンといったアメリカ人の友達。
これらの面々と一緒にランチをとるのはこれが最初で最後でした。

「ピッツアだよ!!」
「コーラもこっちにあるぞ!」
BGMは、アカデミーオリジナル主題歌賞受賞曲「Under the sea」です。
(ディズニーの人魚姫「リトルマーメイド」)
陽気なこの曲のおかげで気分はまるでピクニックです。
学校の芝生の上にいるとは、とても思えません。

「ほら、ゲイタァ。 ピッツァを残すな!」
「もう、おなかいっぱいだって!」
「じゃ、ケーキはあげない!!」
留学の初めはどうなることかと思いましたが、いつの間にか彼のまわりには仲間がいっぱいです。

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 誰が仕切る?
 ★★

「イタリア人は黙ってスパゲティーでも食べてな!」
「なんだって? アメリカ人はハンバーガーしか食べないくせに!」

普段の会話の中でこういった冗談まじりの言い合いになることがしばしばあります。
悪意はなく、相手の文化の特徴をジョークに取り入れているだけのことです。

「アメリカが1番だ!」
「イタリアに決まってるだろ!」
「韓国だよ!」
「技術大国、日本を忘れてないかい?」
留学生が多い重太のまわりでは、どの国が優れているか、言い合いになることもありました。

「アメリカが世界を仕切ってるのを知らないのか?」
「そうだ、そうだ!」
学校では当然アメリカ人が多いので、世論はアメリカ寄りになってしまうのは仕方のないことです。
多勢に無勢、留学生がそれぞれお国自慢をしても、アメリカでアメリカの世論をくつがえせません。

「日本が戦争でアメリカに勝っていれば、こんなこと言われないで済んだんだぞ!」
アンドレのほこ先は日本人の重太に向けられました。
「一番最初に降伏したのはどこのどいつだよ!!」
不毛な言い合いは様々な方向に広がっていきました。

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 「英語で話せ!」
 ★★

スイスからの留学生のアンとフランスからの留学生のドミニクがフランス語でなにやら笑い話をしています。
「英語で話せ!」
横にいたアメリカ人の男子生徒が煮え湯を切らして怒鳴り散らしました。
わけのわからない言語で大声で笑い話をされていたのが不愉快だった様です。

「アメリカでは英語で話せよ!」
「…そうだよなぁ。」
横で見ていた重太もそう思いました。

日本人が日本で英語で話し掛けられた場合、何故か英語で答えようとすることを重太は思い起こました。
「日本では日本語で話せ!」
という対応をする人は結構少ないのではないでしょうか?
あまり得意でない英語で丁寧に対応しようとする日本人の親切心にはただ感服するばかりです。

英語圏から来ている人で英語は世界中どこでも通じるのが当たり前と思っている人が中にはいます。
こういう人たちは、日本に来てもちっとも日本語を使おう、学ぼうとせず、英語だけで最後まで押しとうそうとします。
「ふー、英語もわからんのか、こいつらは?」
その人たちのこういった態度を目の当たりにしたことが何度かあります。
こういうごう慢ぶりは、なんとも腹立たしいところです。

『郷に入っては郷に従え』
どの国、どの地域に行ってもこれは誰もが心にとめておくべき最低限のマナーだと言えます。
言語に限らず、習慣、文化などその国のものを尊重する態度は忘れてはならないでしょう。
知らなかった、わからなかった、という場合も多々ありえるでしょうが、自分からその国、地域へ歩み寄る姿勢は大事にしたいところです。

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 シニアボール その1
1990年5月 ★★★★★

重太は
TOLOの帰りにケリーに聞きました。
「シニアボールの相手は決まってる?」
「まだ。」
「よかったら、一緒に行かない?」
「喜んで!」

『シニアボール』とは、オークハーバー高校3大ダンスパーティーの最大級のものです。
最上級生にとっては高校生活の最後を飾る盛大なダンスパーティーとなります。

男性はタキシードに身を包み、女性は最高のドレスを着てシニアボールに出席します。
これこそ重太が憧れていた『アメリカンハイスクールのダンスパーティー』の姿です!
素敵なガールフレンド、ケリ−と一緒に高校生活の最後を飾ることができそうです。

kayack
日中は、北西の島、サン・ファン島へフェリーで行きました。
サッカーのチームメイト、カール、そしてそのお相手エルシーとダブルデートです。

穏やかな春の晴天の下、生まれて初めてカヤックに挑戦しました。
「面白いねぇ!!」
二人で呼吸をあわせ、潮の流れにも乗ってどんどん下流へ進んでいきました。
「…と、遠い!」
調子に乗りすぎたため、もとの場所に戻るのに一苦労でした。

予定の時間を大分オーバーして、4人はウィッドビー島に戻ってきました。
途中で予約していたレストランで食事をし、急いで着替えてから会場へ向かいます。

「どうやってこのボタンをとめるんだ?」
初めて着るタキシードに重太は戸惑ってしまいます。
「急いで、シゲチャン!」
もう、とっくにパーティーは始まっています。
アメリカ留学最大のイベントに参加できない、なんて大ボケはかましたくないところです。

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 シニアボール その2
1990年5月 ★★★★★

「遅かったじゃない! 来ないかと思ったよ!」
ハミャン、リス、アンドレ、リラーニ、ブランドン、ジョアン…。
この9ヶ月、一緒に過ごしてきた仲間、友達がそこには勢ぞろいしていました。
みんなこの日、この瞬間のためにタキシードやドレスでバッチリきめています。

まわりの生徒たちもみな正装で会場の雰囲気もいつものダンスパーティーとはひと味違います。
「これだ! このダンスパーティーに来たかったんだ!!」
憧れのダンスパーティー、楽しいビッグパーティーの始まりです。

「留学生だけで写真を撮ろうよ!」
スウェーデンからの留学生、アナが言いました。
「いいねぇ!」
普通はデートのカップルと2人で記念撮影をするものなのですが、そんなのお構いなしです。

Seniro ball
「ケリ−、写真を撮ろうよ!!」
その後、重太はもちろんケリーとも二人で記念撮影をしました。
ホームカミングの時とは比べ物に鳴らない程の記念品となりました。

さあ、ダンスの時間です!
 ♪「U can't touch this!」(M C Hummer)
 ♪「Pump up the jam」(Technotronic feat. Felly)
 ♪「Bufalo stance」(Neneh Cherry)
1990年を代表する曲が流れてきます。
「ヒーーッハ!!」
アップテンポの曲ではタキシードということを忘れるくらい暴れまわりました。

曲が変わりました。
静かなバラード曲です。
チークではカップルが体を寄り添いあわせ、静かにステップをきざみます。

「ケリ−、踊ろう。」
「うん。」
留学開始当初はしずしずといすに引き上げていた重太もダンスパートナーをエスコートできるようになりました。

バラードにあわせ、静かに盛り上がる二人。
そんな二人にも、あと1ヶ月で別れの時がやって来ます…。

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 サッカークラブ パート3 
1990年5月 ★★★

いよいよ、サッカークラブ今シーズン最後の試合の日になりました。
前回の練習で監督に言われた通り、彼はフォワードとしてスタメンで試合に出場です。

今までのオークハーバーサッカーチームの対戦成績は0勝8敗。
決して弱いわけではないのですが、点がなかなか取れず、惜敗が続いたのでした。

最終戦は地元オークハーバースタジアムで行われるナイトゲームです。
友達も見に来るので負けるわけにはいきません!

ピーーー!!
彼は試合開始直後から走りまくって前線からプレッシャーをかけ、相手を威嚇します。
「くそ!!」
しかし、なかなか彼のところにボールはまわって来ません。

そんな中、相手のフォワードがボールを「手で」見事にトラップしました。
「ハンドだ!」
寝ていた審判はそのプレーを流します。
「うそぉ!」
ボールはその後、重太のチームのゴールに吸い込まれてしまいました…。

「逆転してやる!」
フォワードの彼は燃えます。
右足、左足、ヘディング。
体の全ての部分を使ってシュートは放ちますが、なかなかゴールネットを揺らすことはできません。
「いいぞ、ゲイタァ!」
「もうちょいで点を取れるぞ!」
「逆転してやる!」
押せ押せムードになってきました。

TIME UP!!
ピッ、ピッ、ピーーー!!!
無情にも試合はそのままピリオドをうちました。
と同時に彼のアメリカでのサッカーシーズンも終了です。
活躍するポジションを見つけたとたんの出来事でした。

「いい走りだったよ。」
「よくやった!」
「ゲイタァがもっと早くオフェンスやってれば…。」
チームメートが声をかけてくれます。
「…ありがとう。」
チームは結果を出せませんでしたが、他の何かを彼はこのサッカーチームでは見つけたようです。

「君たちは素晴らしい働きをしたんだ! さぁ、胸を張って帰ろう!」
ウエスタンブーツでいつも練習場に来ていたバーカー監督を見るのもこれで最後です。

「ゲイタァ。」
監督が歩み寄って来ます。
お誉めの言葉でもくれるのでしょうか。
「お前、ディフェンスはヘタクソだから、もうやめとけ。じゃぁ。」

Oak Harbor 89
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学校外の生活においても、まだまだいろいろな出来ごとが彼を待ちうけていました。
異文化の中で生活するということは、そう単純ではない様です。
考えさせられるところの多かった日常生活、後半をみてみましょう。

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 高校生活編2 目次 

険しい英語道 ………まだまだ身につかない英語

サッカークラブ パート1 ………アメリカの部活動に参加

念願のスクールジャケット ………オークハーバー高校のスタジャンをオーダー

サウスウィッドビー高校 歓迎される ………お隣の高校へ1日体験入学

サウスウィッドビー高校 積極的になる ………捨て身の積極的行動が功を奏す

サウスウィッドビー高校 夢叶う ………憧れのアメリカ留学の目的がここに達成!

神を見るような目 ………テレビゲームの裏技を披露

TOLO ………仮装ダンスパーティー

サイクリング1 ………春の日ざしの中、ウィッドビー島をサイクリング

虎穴にいらずんば… ………まだまだ続く英語のトラブル

サイクリング2 ………100km先の別荘までのロングサイクリング

はち合わせ ………重太とケリ−、そしてサラが偶然はち合わせてしまう…

サッカークラブ パート2 ………レギュラーをはずされた重太の次なるステップ

スプリング・フリング ………高校の「小運動会」、そしてみんなでの昼食

誰が仕切る? ………国の威信をかけた言い争い

「英語で話せ!」 ………『郷に入っては郷に従え』

シニアボール その1 ………日中はダブルデート、カヤックに挑戦

シニアボール その2 ………アメリカ留学、最大のダンスパーティーへ

サッカークラブ パート3 ………最終戦、負け続けたオークハーバーサッカー部に奇跡は起こるか?

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