World Cup 98
1998年6月13日 〜 1998年6月15日
「野人が決めたぁーーーーー!」

1997年11月16日、サッカー日本代表チームは悲願のワールドカップ初出場を決めました。
そして抽選の結果、日本の初戦の相手は、なんと彼が幼年期を過ごしたあのアルゼンチンに決まりました。
「フランスが俺を呼んでいる!」
勝手に運命的なものを感じた彼はフランス行きを決めます。


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 チケット問題、発生 avion avion
1998年 6月上旬 [横浜] ★★★

観戦チケットはイギリスにいる彼の兄に頼み、トゥールーズまでの飛行機を押さえました。
日本代表のユニフォームも買い、ワールドカップ観戦の準備は万端です。

「ところで、お前、どっちを応援するの?」
「え?」
「日本とアルゼンチンだよ!」
日本が出られなかったそれまでのワールドカップでは、重太はいつも自分が昔住んでいた国、アルゼンチンを応援していました。

「…も、もちろん日本さ。」
アルゼンチンのユニフォームも買おうかと散々迷ったくせによく言います。

そんな彼の耳にいやぁーなニュースが入ってきました。
観戦チケットの枚数が足りない、というのです。

「俺のは平気だろう…。…?」
念のため、彼はイギリスにいる兄に電子メールを送りました。
 :
 :
1日が過ぎ、2日が過ぎ…。
返事が来る気配が一向にありません。
もしかしたら、ぜんぜん平気でない事態が彼の知らないところで起こっているのかもしれません。

ニュースでは毎日のようにチケット不足のことが話題になっています。
「…もしかしたら…。」
彼の不安は募るばかりです。

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 チケット問題、解消? avion avion
1998年 6月上旬 [横浜] ★★

そんな時、イギリスから念願の電話がかかってきました。
しかし、受話器の向こう側、お兄さんの声はさえません。

「わ、わりぃ…。」
「えええ?! ま…、まさか…?!」
「チケット代がもっと必要なんだけど…、OK?」

どうやらチケットを購入する予定だったブローカーがお金を持って消えたらしいのです。
その後、急きょ他のルートからチケットをなんとか手に入れたということでした。
チケットがあるだけでよしとしましょう。

しかし、お値段はお安くありませんでした。
最初にブローカーが持って逃げたチケットが、1枚約50ポンド、およそ1万円!
次に何とか入手したチケットは、1枚約100ポンド、およそ2万円!
合計なんと3万円!!!

「一生に一度の事かもしれないから、高くてもいいや。」
通常、4〜5000円のチケットに3万円も出す太っ腹ぶり!
金銭感覚が完全に麻痺しています。
これがワールドカップの魔術なのでしょうか。

しかし、こんなことが許されていいのでしょうか?
彼のフランス食わず嫌いはさらに加速されていきます。
チケットの配分くらいしっかりやっとけ! という感じです。

さらには「ニセ」のチケットが出回っているという噂もあります。
果たして本当に彼はワールドカップを生で観戦できるのでしょうか?
とりあえず、現地へ行ってみることにしましょう。

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 現地入り avion avion
1998年 6月13日 [横浜 → トゥールーズ] ★

Toulouse 成田 → フランクフルト → ミュンヘン → トゥールーズ。
2度も飛行機を乗り継ぎ、丸1日かけて、彼はおフランスのトゥールーズに到着しました。

「…………長かったなぁ…。」
「………あぁ…。」
3年前に『ブラジルアメリカ卒業旅行』に一緒に行ったアツも一緒のサッカー観戦の旅です。
二人とも快適なエコノミークラスの長旅でクタクタでした。

乗り継ぎがうまくいかず、キックオフに間に合わなかったらどうしようか、という心配もありましたが、 とりあえず、トゥールーズまでは予定通りたどり着けたようです。

「一生フランスに行くことはないだろう。」
何故かアンチ・フランス派の彼は、そう思っていました。
しかし、「ワールドカップ」というビッグイベントの前にその思いは一気に吹き飛ばされていました。

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 市庁舎前広場へ avion avion
1998年 6月14日 [トゥールーズ 市庁舎前広場] ★★

長旅の疲れを一晩ぐっすり寝て、なんとか回復させました。

次の日、トゥールーズの市庁舎前広場で彼は兄と待ち合わせしていました。
観戦チケットを手に入れるためです。
それを手に入れない限り、何しにここまで来たのか、わかったものではありません!!

ザワザワ…
市庁舎広場前には日本人、アルゼンチン人があふれかえっていました。



それぞれ、自分の国のユニフォームを来て、早くも応援歌を歌っています。
「これがワールドカップの熱気か…。」
試合前から徐々に気分が盛り上がっていきます。

「♪バモバーモー、アルヘンティーナー 〜!!」
アルゼンチンの応援歌は1982年のワールドカップの時にアルゼンチンで耳にしたものと変わっていませんでした。

「アル ヘン ティーナ!」
思わず重太もアルゼンチンを応援してしまいます。
「おいおい!!」
アツのつっこみがすかさず入ります。
昔懐かしい歌を聞いた事で彼はアルゼンチンを応援したくなってしまいました。
しかし、日本代表のユニフォームを着てアルゼンチンの応援はいただけません!

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 チケット難民 avion avion
1998年 6月14日 [トゥールーズ 市庁舎前広場] ★★★

world cup 「ねぇ、あれ見て!」
「あ、ワールドカップだ!」
重太がワールドカップのレプリカ(写真参照)を持ってそこらへんを歩いていると、 日本人、アルゼンチン人、フランス人、みんなが注目します。

「どこで買ったんですか?」
「韓国みやげでもらったんです。」
何人もの人に聞かれましたが、そう答えるとみなモノ欲しそうな顔をして去っていきました。

「くっぷ でゅ むん!」(=ワールドカップ)
それを持って、話せもしないフランス語で騒いでいるとTVカメラが何台も寄ってきました。
「くっぷ でゅ むん! くっぷ でゅ むん!」
それしか言えないくせに、ワールドカップをかかげて叫びまくります。
情報筋の話によると、バカ騒ぎしている日本人のその様子は、チャンネル3の夕方のニュースで映されたようです。

「チケットを売って下さい!」
そう段ボールに書いて広場に座っている日本人をたくさん見かけました。
多分、チケットがうまく手に入らず、とりあえずここまで来た人たちでしょう。
絶望感漂うその雰囲気の中にかすかな期待を抱いている様子がなんとも痛々しいです。

「チケット余ってませんか?」
すれちがう日本人サポーターに何回も聞かれます。
チケット難民は秒ごとに増えている感じさえしました。
兄に会うまでは彼もいつそうなるか、わかったものではありません。

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 集う! 日本の有名人 avion avion
1998年 6月14日 [トゥールーズ 市庁舎前広場] ★★★★


「あ、都並だ!」
「ジョン川平もいるぞ!!」
「ジローラモさんだ!」
「佐野アナ(フジTV)もいる!」
「安東アナ(フジTV)だよ!!」
広場では日本のサッカー番組の出演者やニュース番組のキャスターなどがうじゃうじゃいました。

「あれ、ナイナイの岡村じゃない?」
「え? どこ?」
「ほら、あそこ!」
「………どこだよ?」
気づくのに時間がかかるほどナインティナインの岡村はちっちゃかったです。
背番号が「99」というのがイカしていました。

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 再会できるか? avion avion
1998年 6月14日 [トゥールーズ 市庁舎前広場] ★★

「昨日、電話でここで待ち合わせって言ってたよなぁ…。」
昨晩、念のためお兄さんに『待ち合わせ時間と場所』を電話で最終確認しておきました。
その約束の時間、場所に来ているのにチケットを持ったお兄さんが見当たりません。

「あれ、お兄さんじゃない?」
「…いや、違うなぁ………。」
重太たちはなかなかお兄さんと会うことができません。

「…寝坊したとか…。」
「…どこかで事故ってるとか…。」
「…まさか、忘れちゃったとか…。」
「…スリにすられたとか…。」
二人とも、よろしくないことばかり発想豊かにどんどんと思いつきます。

「デイライト・セイビング・タイム(夏時間調整)で時間が1時間ずれてるとか?」
「そりゃ、ブラジルに行った時の話だろ!!」
1995年にアツと二人で卒業旅行でブラジルに行った際、 ちょうど夏時間に変わる日でお迎えの友達となかなか会えなかったことを思い出してしまいました。
(『ブラジル95』掲載予定)

しびれを切らした重太は、公衆電話からヨーロッパ中が通話エリアというお兄さんの携帯に電話をしてみます。
「×○⇔◆ん△☆犬±≠♪」
テープの声はとっても流暢なフランス語で何か言っています。
「わかるかぁ!!」
重太は受話器を叩き付け、広場に戻って来ました。

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 本当に、再会できるのか? avion avion
1998年 6月14日 [トゥールーズ 市庁舎前広場] ★★

「やばい、このまま会えなかったらどうしよう…。」
このままお兄さんと会えない場合、歴史に残る日本のサッカーワールドカップ初出場、初戦を現地にまで来ているのに見ることができなくなってしまいます。

焦りつくし、困り果て、泣き出そうかと思った頃、お兄さんらしき人影を広場の真ん中に発見しました。

「兄さーーーーん!」
「おう、重太! 久しぶり!」
「うわぁぁー! 会えて良かった!!」
「…? ど、どうしたんだ、お前?」
重太の異常な興奮状態にお兄さんも困惑しています。

「チケット! チケットはあるんでしょ?!」
1年ぶりに会う兄よりチケットの方が気掛かりでした。

Ticket!
「ほら!」
「おおおおぉぉ!」
これがワールドカップのチケットです!
3万円もした、あのワールドカップのチケットです!
すかしもあり、見た目はどうやら本物の様です。
これで、とりあえず段ボールを探す必要はなくなりました。

「でもさ…。」
重太は思いました。
「これって日本側の応援席なのかな?」
アルゼンチンサイドで日本のユニフォームを着て応援などしようものなら、確実に病院送りです。

「さぁ、そこまでは…。」
でも、フランスの看護婦さんとお知りあいになるのも悪くないかもしれません。

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 橋の入り口にて avion avion
1998年 6月14日 [トゥールーズ スタジアム] ★★★

キックオフは現地時間で14:30の予定です。
昼飯をスタジアムで食べれるようにと、サンドウィッチと水を買いました。

ザワザワ…
スタジアムに近づくに連れ、人が増えてきます。
入り口の前は、人であふれかえっていました。

「チケット余ってませんか?」
市庁舎広場前にいたチケット難民はこちらにもたくさんいました。

「…なんか恐いな。」
キックオフまであと数時間。
それまでの間になんとかチケットを入手しようと、みな必死に駆けずり回っています。
周囲が殺気だっているので、重太たちは早めに中に入る事にしました。

ゲート前にいるスタッフにチケットを渡します。
「・・・・・・。」
まじまじとそのチケットを見つめています。

「これはニセモノだ! ちゃんとしたチケットを持ってきな!」
などと言われたら目も当てられません。
重太たちも先ほど見たチケット難民の仲間入りをしなくてはなりません。

「…早く、早く通してくれ!!」
ドキドキしながら心の中でそう念じました。

「よし、通っていいぞ!」
どうやらチケットは本物だったようです。
ここでやっと、ワールドカップを生で見れる実感が湧いてきました。
「よっしゃー!!!」
別に何かをやり遂げた訳でもないのに妙な達成感がありました。

「ちょいと、失礼!!」
得意満面で橋の入り口を後にします。
少し進んだところで、記念にと1枚写真を撮りました。
チケットを胸の前に掲げ、入場できない人たちを背景にして…。

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 スタジアムの入り口にて avion avion
1998年 6月14日 [トゥールーズ スタジアム] ★

橋の入り口からスタジアムまで10分ほど歩く必要がありました。
膨らむ期待とともにスタジアムがだんだんと近づいてきます。

スタジアムに入る前にもう一度チケットのチェックがありました。
ここでチケットは切り取られ、「入場」ということになります。

「ようこそワールドカップへ!」
チケットをきる人にフランス語でそう言われました。
そうは言ってないのかもしれませんが。


「よっしゃー!!!」
いよいよスタジアム敷地内に入りました!

目の前には荷物検査の列ができています。
かばんやビニール袋の中を隅々まで調べています。
ペットボトルのフタがなぜか全て回収されている様です。
こうなるとペットボトルのありがたみも半減です。

さて、重太の検査の番です。
イギリスに住んでいる兄へのおみやげがぎゅうぎゅうに入ったバックパックは、隅から隅まで調べられました。

「⇔×☆犬±○⇔◆ん△☆≠◆♪」
なにかフランス語で言っていますがわかりません。
みやげの漬物があやしまれているのでしょうか?
それともおせんべいがまずかったのでしょうか?

「カム ウィズ ミー!」(=ついてきなさい!)
おフランスなまりの英語で小屋まで連れて行かれ、かばんを預けさせられました。
「ラッキー!」
こちらとしてもデカイかばんを持って歩くのは面倒だったので、好都合でした。
後で聞いた話によると、グランドに投げ込めてしまう「折り畳みの傘」がどうやらまずかったらしいです。
フーリガン対策なのでしょうか、ピッチに投げ込めるものは次々預けさせられていました。

警備スタッフは彼のデカイかばんに気を取られすぎたようで、彼が手に持っていた ペットボトルにフタが残っている事には気が付かなかったようでした。
ワールドカップの荷物検査もたいしたことありません。

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 スタジアム周辺の見学 avion
1998年 6月14日 [トゥールーズ スタジアム] ★★

身軽になったところで、スタジアムの周りを練り歩きます。
ワールドカップのレプリカを持っているとTVカメラがあちこちから寄ってきます。
想像以上に注目され、重太も御満悦の様子です。
「くっぷ でゅ むん!」
(=ワールドカップ)とフランス語らしき言葉を叫んでその場を後にします。
フランス語はそれしか知らないので、話し掛けられたくありませんでした。


スタジアムの周りでは、PK大会をしてるコーナーがあったり、仮装して竹馬にのった人がパフォーマンスしていたりします。
「いいねぇ!!」
お祭り気分はどんどん盛り上がります。

「あっ!」
あちこち歩いている間に先ほど買ったサンドイッチが、落っこちてしまいました。
尖ったフランスパンの先っちょがいつのまにか袋に穴を空けていた様です。
お昼に食べようと大事にとっておいたのに、一口も食べずにごみ箱直行です。

そんなことなどお構い無しに、スタジアムの中からは両国の応援歌が聞こえてきます。
試合前の応援合戦が早くも始まっているようです。
早くスタジアムへ入りたくなってきました。

「よしっ!!」
トイレで用をきちんとすませ、これまた身軽になりました。
いよいよワールドカップのスタジアムに入場です!!!

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 入場、座席へ! avion
1998年 6月14日 [トゥールーズ スタジアム] ★★

「ワァーーーー!!!!!」
ものすごい歓声です!
いよいよやって来ました!
ワールドカップ、フランス大会!!



日本、アルゼンチン両国の国旗があちこちに見えます。
お気に入りのプレーヤーを応援する横断幕が所せましとスタンドを埋めています。

まず、自分の席を捜すことにしました。
何やら狭いスタンドです。
「これかぁ?」
やっと見つけた席はコンクリートでお尻の形をかたどっただけの質素な席でした。


↓こっち側がグラウンド

「いぃねぇーー!!!!」
くぼみの感じがおしりにフィットし、ちょっと冷たく、いい感じです。
シートに『列番号』が書いてないので、本当にこれが自分の座席か、ちょっと怪しいところです。

とりあえず席に落ち着いて周りをみまわすと、ワールドカップにきた実感がさらに深いものになりました。
『ここで、両国の流行歌を紹介いたします。』
♪きゃにゅせれぶれー きゃにゅきぃすみー とぅなぁあい うぃー うぃる らぁぶ 〜
「なんだぁ?」
流れてきた日本の流行歌、「Can you celebrate?」(='97、アムロ奈美恵)はそれまで盛り上がっていたワールドカップの雰囲気を一気に盛り下げてくれました。
なぜ「ワールドカップの場」で「1年以上も昔」の「結婚式で流すようなバラード」を流すのでしょう?
もっとノリのいい、「ワールドカップだぜぇー!!」みたいな選曲をできなかったのでしょうか?

おかげ様でその後この曲を聞く度に、『結婚式』でなく『ワールドカップ』を思い出すようになってしまいました。

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 選手、登場! avion
1998年 6月14日 [トゥールーズ スタジアム] ★★

応援席には、どうやら「日本側」、「アルゼンチン側」というものがない様子です。
双方の応援団がごちゃ混ぜに座っています。

「これで日本が試合に圧勝でもしてしまったら、どうなるんだろう…。」
ものすごい日本ビイキの試合結果予想にドキドキしてしまいます。

「ワァーーーー!!!!!」
そうこうしているうちに、両国の選手がピッチの上に入場してきました。

「川口だ! ゴンだ! 名波だ! 秋田だ!!」
お馴染みの日本イレブンのお目見えです!
一層ワールドカップが熱く、盛り上がっていきます。

「………あれ??」
いつも水色と白のストライプのユニフォームを来ているアルゼンチンの選手が赤いシャツを着ています。


手前、アルゼンチンの選手 (奥が日本代表)

「こ、これは新しいユニフォームか?!」
ただの練習着でした。

試合前の練習も終わり、両国国歌斉唱です。
「きぃ〜 みぃ〜 がぁ〜 あぁ〜 よぉ〜 おぉ〜 わぁ〜〜〜」
ワールドカップで初めて流れる「君が代」です。



重太も一緒に思い切り歌いました。
彼があんなに大声で国歌を歌ったのは、後にも先にもこの時しかありません。

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 いよいよキックオフ! avion
1998年 6月14日 [トゥールーズ スタジアム] ★★★★★

両チームのスターティングイレブンがピッチの上に散りました。

World Cup 98
◆◆◆ 日本代表、vsアルゼンチン戦 スターティングメンバー ◆◆◆

「いはらぁーー! かわぐちぃーー!!」
横浜マリノスファンの彼はマリノスのプレーヤーに思わず声援をおくってしまいます。

さぁ、いよいよ世紀のキックオフです!!

「一列前にずれてくれ! 席がないんだ!!」
世紀の一瞬を前にドキドキしていると、後ろで何やら叫んでいます。
座席に列番号が書かれていないしわ寄せが、キックオフ直前にきてしまったのです…。

ピ−−−−ーッ!!
「ワァーーーー!!」
重太が席のトラブルに巻き込まれている間に試合はとっとと始まってしまいました。

「うそぉ…。」
世紀の瞬間を見事に見のがしました。
現地にまで行ったのに…。

座席には列の番号まで、きちんと書いておいて欲しいものです!
彼はさらに、そして確実にフランス嫌いになりそうです。

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 バティゴール! avion
1998年 6月14日 [トゥールーズ スタジアム] ★★★★

席のトラブルも落ち着き、サッカー観戦に集中します。
選手との距離が近いこの席は「生」でワールドカップを見ている感じを十分に味わえるものでした。

日本はアルゼンチン相手に善戦しています。
「いいねぇ!!!」
と思った矢先、自分の席から遠いサイドのゴール前がなにやらごちゃごちゃしています。

「ゴーーーーーーーール!!!」


コーナー付近で喜ぶアルゼンチン イレブン

前半28分、アルゼンチンのエースストライカー、バティストゥータに先制されてしまいました。
「ワァーーーーーーーー!!!!!」
スタンドのアルゼンチンサポーターは大騒ぎです。

「くっそぉーー! (ま、しょうがないか!)」
(隠れ)アルゼンチンファンの彼は変に納得しているようです。

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 かわいい野次 avion
1998年 6月14日 [トゥールーズ スタジアム] ★

VERON
0対1のまま前半は終わり、ハーフタイムをはさんで後半になりました。

「……うーん…。」
時間は刻一刻と過ぎていきますが、日本は攻めあぐねています。

「あぁ、ハゲ! やめて!」
「あぁ、ハゲ、転べ!」
アルゼンチンの11番、スキンヘッドのベロンという選手がボールを持つと、後ろの席から女性の声でわかりやすい罵声が飛んできました。

「あぁ!! もう! ハゲ!!」
その可愛らしい罵声も何度も聞いているうちに、サッカーを全く知らない稚拙なヤジにしか聞こえなくなってきました。

「もう!! じゃま! ハゲ!」
彼もアルゼンチンのために精一杯プレーをしているのです。
日本に対してラフプレーをしているならまだしも、そうでないのにこういう野次は頂けません。

「もう! このハゲ!!」
なんだか、だんだん腹がたってきました。
この女性、普段は「サッカーなんてつまんない!」とか言っているくせに、 「ワールドカップ熱に便乗した『なんちゃってサッカーファン』」に違いありません!
こういう輩のために、普段からのサッカーファンが今、スタジアムの外で泣いているかも知れないのに…。

「あぁ!!! ハゲ!! じゃまよ!!」
「うるせぇぞ、お前! そーゆーヤジはやめんか!!」
と叫べたら、どれだけスッキリしたことでしょう。

「あぁぁ!!」
「……………うるせぇなぁ……………。」
日本が負けているのも、この人のせいにしたくなってきました。

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 試合終了、そして avion
1998年 6月14日 [トゥールーズ スタジアム] ★★★

「ピッピッピー!」
試合終了を告げるホイッスルかと思うまぎらわしい笛があちらこちらから聞こえてきます。
早く試合を終わらせたいアルゼンチンサポーターの仕業でしょう。

「ピッ ピッ ピーーーー!!」
そして、とうとう世紀の一戦は終了しました。


試合終了直後 とっとと去るバティストゥータ(右下)

結果はご存知の通り、0対1で日本はワールドカップ初戦を飾れませんでした。
しかし、世界の強豪、アルゼンチン相手に良くやったと日本の選手達に拍手を贈りたいところです。

あっという間におわってしまったワールドカップ観戦。
「日本サッカー界における歴史的な試合を見れて、ラッキーだったよ!」
試合の結果は実に残念でしたが、ポジティブに考えることにしましょう。

満足感と少しの無念さを残しつつ、彼はスタジアムを後にしました。

「よっしゃ! アルゼンチン、頑張れ!」
スタジアムを出た直後、彼はアルゼンチンファンに早変わりです。

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「じゃ、お先に。」
「…おつかれ…。」

次の朝、重太は寝ぼけた体でアツを見送りました。
一緒にフランスまでサッカー日本代表を応援に来たアツは、仕事があるためサッカー観戦だけして日本にとんぼ帰りです。
この週末は、彼にとって人生で最高に慌ただしい週末だったことでしょう。

同じ社会人なのに重太はこれから1週間のスペイン旅行を予定しています。
「不良社会人は、今頃スペインでうろついているはずです。」
次の週、電子メールで重太はそう呼ばれていました。

続いてスペインへ行く Spain98

 明かされるチケット問題の解決の裏側 avion avion
1998年 6月 [ロンドン、イギリス] ★★

チケット問題が発生し、一時はどうなる事かと思われたワールドカップ観戦。
重太は全く何もしていませんが無事チケットが手に入り、なんとか日本の歴史的初戦を見る事が出来ました。

それもこれも重太の兄のおかげです。
彼は、重太とアツと自分の分のチケットを確保するのに世界中のコネをつかい、大奮闘したのです。


最初に手に入る『はずだった』チケットは、3枚で150ポンド(≒3万円)。
しかし、業者は代金だけ持っていなくなってしまいました。
何か急用でも出来たのでしょうか?

次に買ったチケットは3枚で300ポンド(≒6万円)しました。
結局、3人分のチケットに450ポンド、9万円の出費です。

「まぁ、金はいいよ。」
「…えぇ?! なんで?」
少し値ははってもワールドカップを見れるのです!
3万円くらいの出費を覚悟していたのですが、重太の兄は何故か大盤振る舞い!
チケット代はいらないと言うのです!

「某ブエノスアイレス支店の知り合いからチケットをさらに10枚入手してな…。」
なんてことでしょう!
チケットはあるところにはあるのです!

「1枚25ドル(≒3千円)なんだけど、6枚を6万円で売ったんだ…。」
「…やるぅ。」
こんな理由で重太は何もせず、チケット代も払わず、運良く試合もみれてしまったわけです。

World Cup 98

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 フランス ワールドカップ98 -目次- 

チケット問題、発生 ………チケットの枚数が足りないと連日の報道

チケット問題、解消? ………確保したはずの観戦チケットの存在は?

現地入り ………不安を抱きながら、とりあえず試合会場の町へ

市庁舎前広場へ ………チケットを持つ兄との待ち合わせ場所へ

チケット難民 ………チケットを持たずに来た日本人たち

集う! 日本の有名人 ………テレビでお馴染みの顔が

再会できるか? ………チケットを持つ兄と会うことができるのか?

本当に、再会できるのか? ………絶望しかけたその時

橋の入り口にて ………チケットが本物かどうか、ここで判明

スタジアムの入り口にて ………厳しい荷物検査

スタジアム周辺の見学 ………試合前に盛り上がる会場

入場、座席へ! ………開始前の興冷めなセレモニー

選手、登場! ………お馴染みの選手たちがピッチの上に!

いよいよキックオフ ………世紀の一瞬が来たる!

バティゴール! ………前半28分の出来事

かわいい野次 ………聞こえてくる罵声に罵声を

試合終了、そして ………歴史の証人に


明かされるチケット問題の解決の裏側 ………こうして手にいれたチケット3枚

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