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1993年8月1日 〜 1993年9月9日
1年間のアメリカ留学を共に戦い抜いたイタリア人の悪友、アンドレ。
「いつでも遊びにこいよ!」
そう言われたからには、お邪魔しないわけにはいきません。
重太の初ヨーロッパ浪夢のはじまりです。

 
[ 1、シエナとパリオ ] [ 2、シエナでの日々 ] [ 3、シエナ周辺 ]
[ 4、イタリア放浪1 ][ 5、イタリア放浪2 ] [ 6、イタリア放浪3 ]

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 感動の再会?
1993年8月1日 [ ローマ ] ★★

to ROMA 大学の夏休みを利用して、40日間イタリア旅行の始まりです。
大韓航空にのり、ソウル ― チューリッヒ経由で重太はイタリアのローマを目指します。
重太にとって、初のヨーロッパ訪問です。

ローマのレオナルド・ダ・ヴィンチ空港に着いたのは現地時間の夜8:00過ぎでした。
「え? もういいの?」
入国スタンプも押されもせず、あっけなくイタリア入国です。
日付けと国名だけでいいので、記念に入国スタンプは押してほしいものです。

「シゲチャーーーン!」
「アンドレ!!」
約束通り、アンドレが重太を迎えに空港へ来てくれていました。
彼の髪はソバージュがより強くかかり、横にふわっと広がっていました。
アメリカにいた時とちょっと雰囲気が違います。

Hello again! 「へい! どうだい! 調子は!」
「久しぶり! 元気そうだな!」
そう、アンドレとはアメリカ高校留学の卒業以来、実に3年ぶりの再会となりました。
アンドレのイタリアなまりの英語も3年ぶりです。
アンドレも重太の日本語なまりの英語を聞くのは3年ぶりのはずです。

「飛行機は快適だった?」
「ああ、よかったよ。 …その水は何?」
「ガス入りのミネラルウォーターだよ。」
「!!! まじ?」
アルゼンチンで初めて目にし、二度と飲みたくないと思ったあのガス入りの水が なんとイタリアにもあったのです。
これは、レストランで水を頼む時、注意しなくてはなりません。

「ここに来る途中、車のフロントバンパーを前の車に少しぶつけちゃってさ…。」
「大丈夫なのか?」
「あぁ、まあね。 アメリカでもシゲチャンを車で送っていく時、 スピード違反で捕まったことがあったよな?
「あぁ、あった、あった! サッカーの帰りだ。」
「シゲチャンが絡むといつも何か車のトラブルがあるんだよなぁ…。」
そんなこと言われても、困ってしまいます…。

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 車中の話題
1993年8月1日 [ → シエナ ] ★★

アンドレの車でローマから彼の住むシエナまで向かいます。
既に日は沈み、あたりは真っ暗です。
初のヨーロッパの景色を楽しみたくても外は何も見えませんでした。

「さっき、俺を待ってる時、何を読んでたの?」
「キャプテン・アーロックだよ! 日本のマンガはおもしろいな!」(イタリア語では語頭のHは発音しません)
そうです、彼は留学当時から大の日本マンガ&アニメファンなのでした。

「ジャイアント・ロボの次のVTR、日本じゃもう出た?」
「……??」
「ヤマトの新作、知ってる?」
「今度OVAでさぁ…。」
アンドレは日本に住む重太より、ずっと日本アニメ通です。

「聖闘士 星矢のアニメを今やってるよ!」
「へぇ!」
「電影少女のマンガを今こっちでも売ってるよ。」
「日本じゃもう連載が終わってるよ。」
「ガンダムのビデオあるよ!」
「あぁ、見た! あれ面白いぞ!」
シエナに着くまでの3時間、二人は日本マンガ&アニメの話で大いに盛り上がったのでした。
なんだかイタリアに来た気が全然しません…。

国境を越えた3年ぶりの再会です。
お互いの近況や昔の思い出など、何かもっと他に話す事があるはずです…。

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 シエナの朝
1993年8月2日 [シエナ] ★

静かな朝、鳥の声で目が覚めました。
見なれないブラインドの隙間から朝日がこぼれてきます。

「……ん。 ここは……?」
時差ぼけで寝ぼけた頭をなんとかフル回転させ、昨日の出来事を思い返してみます。

「……そうだ!」
たぶん、重太はイタリアのトスカーナ地方の街、シエナにいるはずです。

昨晩遅くシエナにあるアンドレの家に着いた後、移動で疲れ果てた重太は服だけ脱いですぐ眠りについたのでした。

昨日、イタリアに到着した時すでに日は落ち、景色をほとんど楽しめませんでした。
どんな景色が窓の外にあるのか、ブラインドを少し上げ覗いてみます。

「…うわぁぁ………。」
これ以上ないくらいの青色の空、明るく反射する白い雲が見えます。
家の中は涼しいのですが、外はとても暑そうです。

眼下には、入り組んだ路地や連なったエンジ色の屋根が見えます。
どことなくヨーロッパの雰囲気がします。
遠くには高い塔らしき建物も見えます。
どうやらきちんとイタリアにいる様です。

「………よっしゃぁぁぁっ!!」
なんだか、うきうき、うれしくなってきました。
部屋の中で飛び跳ねたい気分です。

Buon Giorno! 「よく眠れた?」
「は、はいっ…。…もう、ばっちり!!」
どこぞやの美人なお姉さんが重太に突然話しかけてきました。
「(…あれ、この人誰だっけ…。)」
彼にはこの美女の記憶が一切ありません。
イタリアに来て早々、ロマンスがあったのでしょうか?

「おお、シゲチャン! 起きたか!」
話し声を聞いたアンドレがやって来ました。

「彼女は俺の姉さんのバルバラ。で、彼はいかれた日本人、重太。シゲチャン。」
「こんにちは、いかれた日本人サン。」
「……は、はじめまして…。」
アンドレの素晴らしい紹介のおかげで、このトスカーナ美人が誰だかわかりました。

「さ、町を案内するぞ!」
いよいよ初のヨーロッパ見物開始です。
「早く行こうぜ!」
「待って!」
バルバラが重太を呼び止めました。
「まず、ズボンをはいてね。」

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 中世の町並み
1993年8月2日 [シエナ] ★★★

シエナはローマから北西に約150km、トスカーナ地方にある町です。
アンドレの家から車で走ること約10分、シエナの町の中心に到着しました。

「よし! 空いたゾ!」
アンドレは駐車スペースをいち早く見つけ、手馴れたハンドルさばきで水色のフィアット170をばっちり縦列駐車しました。
街路樹脇の縦列駐車。
幼き頃、アルゼンチンでもよく見かけた光景です。
初めてのヨーロッパなのに、こんな些細なことからなんだか懐かしい気持ちになってしまいます。

SIENA 突き刺さる夏の日差しの下、斜めに曲がった石畳の道をアンドレについて歩いて行きます。
道の左右には赤ちゃけたレンガでつくられた4、5階建ての建物がずっと連なっています。
「…なんか、いいねぇ…。」
入り組んだ道はその先にどんな景色があるのかあれこれ想像させてくれます。

細いわき道に目をやると、家と家をつなぐ掛け橋がありました。
「昔、仲のよかった家同士、ああやってつないだんだ。」
アンドレのシエナ・ガイドが始まりました。

家の外壁には、丸い鉄の輪をよく見かけます。
「昔、馬をつなげておくために使った輪だよ。」
そんなものが残っているなんて、なんだか歴史を感じます。

中央に聖人の銅像がある小さな広場。
白鳥や龍、カタツムリなど各地区(コントラーダ)のシンボルの彫刻でかざられた噴水。
アーチ型の入り口のある小さな教会。
道の角の壁にうちこまれた道名がかかれたタイル。

「…なんか、すげぇ…。」
中世にタイムスリップしたのか、はたまた、映画のセットに迷い込んだのか?
そんな錯覚すら感じてしまう町の情景に重太は大感激です。

そこらへんを飛んでる鳩までヨーロッパっぽく見えてしまうから不思議です。

「どいて、どいてぇ!!」
「なんだ、なんだ?」
少年が2人、何かから逃げる様にあわただしく走り去って行きます。
これだけでも、映画の1シーンのように見えてしまいました。

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 大聖堂
1993年8月2日 [シエナ] ★

SIENA DUOMO シエナのドゥオーモ(=大聖堂)は白と黒の横しま模様で独特の雰囲気をかもし出しています。
 ・正面のファサード
 ・壁に掲げられた数々の大きな宗教画
 ・高い天井
 ・内部の広い空間
 ・巨大な大理石の柱
 ・聖人の石のひつぎ
 ・静寂な全体の雰囲気
 ・正面の祭壇
内部をうっすら照らすろうそくの灯までもが彼には新鮮です。

ドゥオーモの横にある階段に星印のついた場所があります。
「そこはシエナの聖女、サンタ・カテリーナが倒れた場所だよ。」
さすが地元民、アンドレがガイドブックには出ていない情報を教えてくれました。
シエナに行ったら探してみるのも面白いかも知れません。

「ここも、誰かが倒れた場所なのかな?」
この後、地面のどこかに星型のタイルを見る度、こう思うようになりました。

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 カンポ広場
1993年8月2日 [シエナ] ★★★

中世の町並みが見守る坂を上がり、階段の先の光をめざし下って行くとそこには大きな広場がありました。
シエナの中心にある、カンポ広場です。

Piazza de campo 「いいねぇ!」
ぐるりと見まわすと、趣のある石造りの政庁の建物やオープンテラスのレストランなどヨーロッパらしい風景があちこちにあります。
夏の日中と言うことで、噴水のまわりには人が集まっていました。
カメラとガイドブックを手に持った観光客もたくさんいます。

正面の高い塔がすぐ目に入ります。
そういえば今朝、アンドレの家からこの塔を見たのを覚えています。

「マンジャの塔だよ。」
13世紀頃に建てられた102mある塔です。

「のぼってみるかい?」
「うん! 行こう! 行こう!」
煙りとなんとかは高い所が好きの様です。

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 マンジャの塔
1993年8月2日 [シエナ] ★★★

4000リラ払い、マンジャの塔に登ります。
塔の中にはエレベータなど無く、壁に沿った階段をただひたすら上り続けます。
文明社会に慣れた日本人=重太には、これはこれで刺激的な体験です。

階段の幅は狭く、上る人と下る人でスレ違うのも一苦労です。
「プレーゴ。」
アンドレが角で立ち止まり、下りてくる人を先に通してあげました。
状況からして、「どうぞ。」と言ったのでしょう。

「プレーゴ。」
重太もにっこり笑って、マネして見ました。
「GRAZIE.(グラッツィエ=ありがとう)」
すれ違った人がにっこり笑ってお礼を言ってくれました。

from the tower 「シゲチャン! イタリア語にアクセント(なまり)がないな!」
アンドレがビックリしていました。
アメリカでは英語の発音を散々バカにされましたが、 イタリア語はどうやら発音しやすい言語のようです。
こういう些細な事からその言語に興味がわいてきたりするものです。

「うわぁー・・・!!!」
塔の頂上には最高の景色が待っていました。
眼下のカンポ広場が良く見渡せ、シエナの赤レンガの町並みが続いている様子が見てとれます。
その後方にはなだらかな丘が幾重にも続いており、広々としたトスカーナ地方を一望できました。

カシャ、カシャ!
綺麗な景色に思わずシャッターを押しまくります。
「??? あれ?」
後で現像してみると、意外にその時の感動は写真に反映されていなかったりするモノです。

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 パリオとは?
1993年8月13日〜 [シエナ] ★★★★

FLAG
シエナには『パリオ』という15世紀から続いている伝統行事があります。
それは、毎年7月2日と8月16日に行われる競馬レースのことです。

「競馬」と言っても賭けるのは『お金』ではなく地区(=コントラーダ)の『プライド』です。

レースは騎手がはだか馬にまたがり、カンポ広場の外周を3周します。
1番にゴールすれば優勝です。
面白いことに、騎手が落馬して馬だけが1番にゴールしても優勝なのだそうです。

優勝したコントラーダには『パリオ』(=神の旗、写真 右)が贈られ、栄誉を手にすることができます。

2位以下は全て『負け』とみなされる様です。
『優勝』か『負け』しかない、地区同士のプライドのぶつかり合いのレース。
それがシエナの『パリオ』なのです!


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 コントラーダ
1993年8月13日〜 [シエナ] ★★

contrada! 「面白いデザインの布だな。」
カンポ広場のお土産屋さんで、鮮やかな色のスカーフを見つけました。

「それはコントラーダのスカーフだよ。」
カタツムリ、白鳥、塔や龍など、シエナの各コントラーダ(=地区)のシンボルが描かれています。
お土産になかなか良さそうです。

シエナには伝統的な地区、コントラーダが現在17残っています。
そのうち、10のコントラーダがパリオ当日のレースで優勝を目指し競い合うとのことです。

シエナの町を歩いていると、そのコントラーダの標識や噴水、銅像などを見つける事が出来ます。
地区によってシンボルカラーに違いがあり、町を歩いたり、土産のスカーフを見ているだけで楽しい気分になれます。

「今はパリオ前でスカーフの値段は高いから、買うのを待った方がいいぞ。」
なるほど、アンドレからナイスなアドバイスをもらいました。
土産はあとでまとめて買う事にしましょう。

「あ、でもキオッチョラ(=カタツムリ)のなら買ってもいいぞ!」
「なんで? 安いの?」
「俺のコントラーダだから。」

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 パリオの準備
1993年8月13日〜 [シエナ] ★★

course カンポ広場の最外周はパリオの際、馬の走路になります。(写真 右)
内側にコースをかたどる柵がたてられ、石畳の上には土が敷かれます。
カンポ広場は普段の観光地と違った装いを見せはじめていました。

コースのさらに外側のわずかなスペースに観客席などが用意され、当日は高く売り出される様です。

パリオの数日前からシエナの町を歩いていると、太鼓の練習や男性2人1組になった旗振りの練習を見ることができます。
ズバンディエラトーリと呼ばれる2人の旗手が大きな旗を振りかざし、息のあった演技を披露します。
これもパリオ当日のレースの直前に行われる行事の1つとのことです。

シエナの人々が毎年首を長くして待っているパリオの準備は着々と進んでいる様です。

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 パリオ 試し走り
1993年8月13日〜15日 [シエナ] ★★★★

コントラーダの代表の協議により30頭ほどの候補の中から出走馬が10頭選ばれます。
そして、選ばれた馬とコントラーダの組み合わせは抽選により決まります。

「まんま みーや!」(=なんてこったい!)
「ぽるか まいやーれ!」(=こんちきちょうめ!!!)
前評判が悪い馬が自分のコントラーダにあたると、そのコントラーダ一帯では悲鳴しか聞こえてきません。

「シゲチャン、にゃーも!(=行くぞ!)」
朝早く起き、カンポ広場に『プローヴァ』を見に行きます。

『プローヴァ』とはパリオ本番前の「試し走り」のことで、当日の朝まで6回あります。
自分のコントラーダの馬の調子はいいのか、他のはどうなのか、みんな真剣に見守ります。
仮にこの試し走りで馬が怪我しても、もう馬を代えることはできないそうです。

重太はスタート地点のまん前に陣取って初プローヴァ観戦です。
「黄色と赤の服を着ているの、見えるか?」
「ああ。」
「あれが俺のコントラーダ、キオッチョラ(=カタツムリ)だ。応援しろよ!」
アンドレに恐い目で言われました。
こんな真剣な目をした彼を見た事がありません。

それにしても、コントラーダのシンボルがカタツムリとは…。
レースに勝てそうな気が全くしません…。

綱で区切られたエリアに全ての出走馬が入ったところでレーススタートとなります。
バーーン!!
スタートがそろわなかった時、大きな号砲が鳴り響き、スタートのやり直しです。
この大砲は近所の御老人の心臓を止めてしまうのではないかと思うくらい、ものすごい音がします。

「いけぇ!!!」
今度はうまくスタートがそろいました。
「Vai! Vai!! Vai!!!」(=いけ、いけ、いけぇ!!!)
アンドレがいつも以上に熱く叫びまくります。
同時に回りの人全てが自分のコントラーダの勝利を信じ、応援しています。
全ての人の視線が馬を追って首や体を動かしている様子はかなり面白いものがあります。

「調子いいぞ! 優勝は決まったな!」
「これはたかが、プローヴァさ・・・。」
「ぽるか まいやーれ!!」
レースの結果で人々の感想はそれぞれです。

パリオに向け、シエナの町はどんどんヒートアップして行っていることだけは確実です。


「今朝、2人ともプローヴァを見に行っただろ?」
その晩、いつもの様に夜遊びのため合流したアンドレの友達=ジョルジョが言いました。
「なんで知ってるの?」
「TVに出てたもん!」

プローヴァの様子を中継していた地方局の映像に、カメラを構えた日本からのおのぼり観光客どドアップで映っていたようです。

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 パリオ前夜祭
1993年8月15日 [シエナ] ★★★

「♪カンポ広場を舞台にして〜」
自分のコントラーダ(地区)の応援歌を大合唱しながら各地区の住民がスカーフを首から後ろにたらし町を練り歩きます。
アンドレは『キオッチョラ(=カタツムリ)』コントラーダの一員なので、重太も一緒にキオッチョラの行列に混じり町を歩きました。
行進にまみれ歌を歌いながら町を練り歩くのはとても気持ちがいいものです。
にわかセシーナ(シエナ人の愛称)気分を味わえました。

Party その夜はキオッチョラ・コントラーダで前夜祭が催されました。
道路に長机と長いすを敷き詰め、皆で明日の本戦の必勝を祈願して飲めや歌えやの大宴会です。

「おじょうさん、ワインはいかがですか?」
アンドレが向かいに座った見知らぬ女性にさりげなくワインを注ぎます。
「ありがとう。」
「どういたしまして!」
さすがイタリア男性。
女性と強引にめぐりあう術を知っています。

「(シゲチャン、こうやってお知り合いを増やして行くんだ! やってみな!)」
こっそりアンドレが重太に指示を出します。
「ワインはいかがですか?」
「ありがとう。ふふっ!」
同じことを繰り返しただけですが、向かいの女性にバカウケです。

「お名前は?」
「どこ出身?」
知りうる限りのイタリア語でのその女性に疑問文を投げかけます。

「よくやった。ま、こんなもんだろう!」
なんともためになる「女性に話しかけるきっかけ作り初級編」は無事終了しました。

馬のお披露目、地区代表のスピーチがおわり、最後に応援歌を歌ったところで、宴はお開きになりました。

いよいよ明日はパリオ本戦です。
アンドレのコントラーダ、キオッチョラは果たして優勝できるのでしょうか?

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 パリオ当日、仮装行列
1993年8月16日 [シエナ] ★★★★★

シエナ晴れの8月16日、いよいよパリオ当日になりました。
「昨晩、カンポ広場でコントラーダ同士のいざこざ(喧嘩)があったみたいだな。」
アンドレが新聞を見て言いました。
すでにパリオの戦いは、各地で始まっている様子です。

「まずはマンジャの塔の裏側へ行こう。」
アンドレに誘われるまま、下町雰囲気の路地へ行きます。
そこは、すでに地元の人や観光客でごった返していました。

carnaval ドン! ドン! ドン!
鼓笛隊の音が路地の向こうから聞こえてきます。
「かっこいいぃ!!」
甲冑を着た騎士、奇麗に装飾された馬、旗振り隊、旗持ち隊、鼓笛隊などが次々と練り歩いてきます。
その一角だけ中世にタイムスリップしたかのようです。

一つのコントラーダの行進が終わると、また別のコントラーダが来て、その後もまた別のコントラーダが・・・
と言った具合に大名行列さながらの行進は続きます。
これだけでも一見の価値あり、です。

「うっそぉ・・・。」
そんな時に重太愛用のカメラは、暑さにやられてしまったのか、シャッターが切れなくなってしまいました。
もうすぐレース本番です。
このパリオを見にシエナに来たようなものなのに…。

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 パリオ当日、レース直前
1993年8月16日 [シエナ] ★★★

Crouwds 夕方。
レースの会場となるカンポ広場中央への出入りが一箇所に限られます。
押し合いへしあいでなんとか広場に入りこみました。

広場は、下の石畳が全く見えないくらい、人でうめ尽くされています。
人口密度は東京の朝の通勤列車状態です。
トイレに行きたくなっても、トイレにたどり着くまでものすごく時間がかかりそうです。

レースに先立ち、鼓手による巧みな演奏が披露されます。
そして各コントラーダの旗手による旗を回転させる繰り芸合戦が始まりました。
2人1組になり一方の旗を飛び越え、降りまわす、といった演技が披露されます。
自分のコントラーダの勝利のため、他の人より高く旗を放り投げキャッチします。

その後、大歓声と共に騎手と馬が広場に登場します。
「キオッチョラ! おお!! キオッチョラ!!!」
アンドレも発狂寸前です。

そして、最後に優勝旗(=パリオ)が入場します。
各コントラーダはこの旗を得る栄誉のため、馬を走らせるのです。

レース前の段取りは全て終わりました。
いよいよ『パリオ』出走です!!

「よかったぁ…!!」
少しだけ涼しくなり、なんとかカメラも正常に動くようになりました。
これでなんとかレース本番の写真も撮れそうです。

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 レーススタート!
1993年8月16日 [シエナ] ★★★★

Start line スタートエリアの前で各馬が円を描く様にゆっくりと歩きます。
一頭ずつ、スタートエリアに入っていきます。
全ての人がその一挙手一投足を見守っています。

10頭目の馬がスタートエリアに入ったと同時にスタートのロープが下ろされます。
ワァーーー!!!!
各馬、一斉にスタートです。

どのコーナーも曲がり方がきつく、騎手が何人か振り落とされます。
「ノーーーー!!」
場内のあちこちから悲鳴が聞こえます。
コントラーダ・ブルーコ(いもむし)の馬がトップで1周目を通過しました。

exiting! 「Vai! Vai!! Vai!!!」
(=いけ、いけ、いけぇ!!!)

アンドレも自分のコントラーダ・キオッチョラ(カタツムリ)を全身全霊で応援します。
時計回りに走る馬を広場の中心で見守る人々の体もまた、時計回りに動いています。

馬の走っていない方向を見つめると、全員が自分を見ているような感じです。
ワァーーーーーー!!
2周が終わり、トップはコントラーダ・ドラーゴ(龍)になりました。

「いけぇーー!」
「あぁぁ・・・。」
「先頭、ころべ!!」

会場から悲鳴や罵声が飛び交います。

各馬、最終コーナーをまわり、いよいよゴール目前です!
バーーン!!
ド派手な号砲がシエナの空に鳴り響きました。

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 パリオの行方
1993年8月16日 [シエナ] ★

優勝はコントラーダ・ドラーゴ(=龍)です。
「うわああぁっ!! やったぁー!」
「ドラーゴ!!」


パリオの栄光はコントラーダ・ドラーゴ(=龍)に与えられます。

「ぽるか まいやーれ! ぽるか まいやーれ!! ぽるか まいやーれ…」
(ちくちょう! ちくちょう!! ちくちょう…)

隣でアンドレが壊れたレコードの様に汚い言葉を繰り返します。
残念ながら、彼のコントラーダであるキオッチョラは優勝する事はできませんでした。

このレースに2着も3着もありません。
優勝こそ全て、あとは皆、敗者なのです。
今はアンドレに何も話しかけない方が良さそうです。

panic!! 「うわ、なんだ?!」
暴れ牛が突進してくるかのように、人の波がドドっと重太の方に押し寄せてきました。
広場の一角で始まった喧嘩から退避してきた人の波です。

どうやらドラーゴの優勝に不服な人が言いがかりをつけている様です。

ケンカ騒ぎから非難して窓の柵によじ登ってる人もいます。
「ほら、やめなさい!!」
直ちに警察が介入して場を静めていました。
乱闘騒ぎもパリオの華の一つなのかもしれません。

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アンドレの住むシエナに居候した3週間。
イタリア人の生の生活に触れることが出来ました。
次は、陽気でイタズラ好きなイタリア人の若者の生活を見てみましょう。

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 イタリア93 [ 1, シエナとパリオ ] 目次 

感動の再会? ………留学時代の友達、アンドレと3年ぶりの再会

車中の話題 ………イタリアで盛り上がる日本のアニメ&マンガ

シエナの朝 ………ヨーロッパで初めて迎える感動の朝

中世の町並み ………映画のセット?と思ってしまう町並み

大聖堂 ………威厳ある堂々としたその姿

カンポ広場 ………観光客であふれるシエナの中心地

マンジャの塔 ………シエナの素晴らしい景色を見渡せる展望台

パリオとは? ………シエナに行くのなら是非見てみたいはだか馬レース

コントラーダ ………シエナにある17の地区について

パリオの準備 ………レースに備え、様変わりするカンポ広場

パリオ 試し走り ………各地区の馬の様子をここでチェック

パリオ前夜祭 ………必勝祈願、飲んで歌って騒ぐ前夜祭!

パリオ当日、仮装行列 ………中世の衣装を着た行列が町を練り歩く

パリオ当日、レース直前 ………みなカンポ広場に集い、レース前のイベントが始まる

レーススタート! ………各地区同士のプライドをかけたレースが今始まる!

パリオの行方 ………レースが終わり、一悶着が…。

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