
重太は3週間程、シエナにあるアンドレの家に居候しました。
その間、アンドレは色々な友達を紹介してくれます。
そして、重太は観光だけでは味わえない貴重なイタリアンライフを体験するのでした。
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シエナの夜遊び その1 ![]()
1993年8月2日〜 [シエナ] ★★ 「こいつがルーカ。こっちがジョルジョ。」
「ピアチェーレ」(=はじめまして)
アンドレが地元の友達を紹介してくれました。「どっちもおばかさんだから、よろしく。」
「ははは。」
「アンドレ、今、重太になんて言ったんだ?」
重太とアンドレは英語で、アンドレとその友達はイタリア語で話します。
ルーカたちはあまり英語がわからない様です。「重太に二人は『いい奴だよ』って教えたんだ。」
「あぁ、そうなのか。それならいいや。」
ルーカもジョルジョももう少し英語を勉強した方が良さそうです。
買ったばかりと言うジョルジョの新車、アルファロメオに乗って、4人で隣町へ行くことになりました。
「いやっほーーー!」
高速道路を時速190kmでぶっとばし、あっという間に名も知らぬ小さな隣町に着きました。
さすがイタリア車、イタリアの道路と良くなじむようです。町の広場で、ジョルジョが何かしています。
「これでよし!」
「にげろー!!」
急にみんな走り出しました。
「????」
わけもわからず、重太も一緒に逃げます。「車の排気口に、雑巾をつめてやった!」
「ウワッハッハッハー!!」
そのまま、時速190kmでシエナに戻ってきました。
これだけのために隣町へ行ったようです・・・。
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シエナの夜遊び その2 1993年8月2日〜 [シエナ] ★★ シエナの町外れの薄暗い路上で、ジョルジョの車は急にスピードダウンしました。
アンドレが足元から細くて長い鉄パイプを取り出し粘土をその先につめ込みます。
「フッ!!」
街灯の下に立つ娼婦めがけて、吹き矢の様に粘土を吹き付けるのです!
「当たった、当たった!」
「ウワッハッハッハー!!」
「………。」
その後、何度も行ったり来たりして娼婦めがけて粘土を吹きつけました。
今度は娼婦が立つ街灯の下でジョルジョは車を停めました。
「ねぇ・・・。」
助手席のルーカがある娼婦に話しかけました。「・・・なに? 何か用?」
「4人でいくら?」
「ふざけんじゃないよ!!」
「いや、本気だって! 4人でいくら?」
「ガキはあっちに行きな!」
「金はちゃんと払うからさぁ!」
ルーカたちはしつこく娼婦をからかってからその場を去りました。「見たか? あの姉ちゃんの顔!!」
「ウワッハッハッハー!!」「………。」
重太はこのイタリアの若者の斬新な遊び方にただ驚かされました。
・・・何ともたのしいシエナの夜遊びでした。
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たのしいイタリア人1 1993年8月4日〜 [シエナ] ★★★ 水色のおんぼろフィアットでアンドレとシエナの中心へ向かいます。
カンポ広場でみんなと会い、何の目的もなくブラブラするのが彼らの慣例となっている様です。「チャオ、ジョルジョ。」
「チャオ アンドレ。チャオ、シゲタ!」
ジョルジョと道で会いました。
早くも重太の名前を覚えてくれた様です。
3人で一緒にカンポ広場を目指します。「シゲタ、アキヒトに会いに行かなくていいのか?」
当時、ちょうど天皇陛下もイタリアのシエナにいたのでした。
「会う約束をしてないからね。」
「ウワッハッハッハ! そうかい!」
こんな返答をジョルジョはたいそう気に入ってくれました。「チャオ、アンドレ!」
「チャオ、ジョバンニ!」
アンドレが道で別の友達、ジョバンニと会いました。
お互いの近況報告会が始まります。
その間、ジョバンニと面識の無いジョルジョと重太は彼らの報告会が終わるまで待たされるのです。
これはアンドレに限ったことで無く、ジョルジョでも他の友達でも同様に発生することです。
道で友達に会う度に報告会が始まり、つれは待たされ、また別のつれが友達と会い報告会が始まり…。そんなこんなで、なんとか無事カンポ広場にたどり着きました。
特にすることも無く、地面に座り、みんなでわいわい話しながら時が経っていきます。
言葉がわからないのと、ちょっとした旅疲れで重太はうたた寝をはじめました。
夕暮れ時なので暑さもおさまり、寝るにはちょうど気持ちいいくらいです。「うわぁぁぁ!!」
ジョルジョが重太に水をかけました。
「ウワッハッハッハー!!」
「ここで寝るな! 日本人!!」
わざわざご丁寧に噴水から水を運んできて、寝ているところに水をかけてくれたようです。「まったく!!」
なんともイタズラ好きのたのしい人たちです。
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美味しいエスプレッソ [シエナ] ★★★ イタリアでは、大抵食後に味の濃いエスプレッソを小さなカップに入れ、飲みます。
「それでいれるの?」
エスプレッソメーカーの独特な形に重太は興味を持ちました。
エスプレッソメーカーイラスト「うまい!」
そのエスプレッソメーカーでいれたエスプレッソの美味しいこと!
エスプレッソメーカーがいいのか豆がいいのか定かではありませんが、 コーヒーの味がしっかり出ていてとにかくおいしいのです。
「いいねぇ、これ!」
そのエスプレッソメーカーを重太はたいそう気に入りました。「シゲチャン、エスプレッソ飲むかい?」
翌日の食後もアンドレはエスプレッソメーカーを取り出し、重太にエスプレッソを入れてくれます。
「うん、ちょうだい!」
「お酒を入れてみる?」
寝る前にお酒を数滴おとしたエスプレッソを飲む人もいる様です。
重太も試しにリキュール入りエスプレッソを飲んでみました。「もう一杯飲む?」
「いいねぇ!」
小さいカップで飲むため、一杯ではちょっともの足りない感じです。「もう一杯飲む?」
「いいねぇ!!!」
おいしいエスプレッソは、何杯でも大歓迎です。「……………。 寝れネェ!!!」
調子に乗ってエスプレッソを飲み過ぎた重太は、その夜、目がさえてなかなか寝つけませんでした。
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たのしいイタリア人2 ![]()
1993年8月5日〜 [シエナ] ★★ 「昨晩、エスプレッソを飲みすぎて、目がパッチリ開いて寝れなかったよ!」
「ウワッハッハッハ!!」
次の朝、アンドレに寝つけなかったことを話したら、バカウケです。「昨日の夜、シゲタはエスプレッソを飲み過ぎて目がパッチリ開いてさぁ…!」
「シゲタはエスプレッソを飲み過ぎてさぁ…!」
「エスプレッソを飲み過ぎて…。」
アンドレはご丁寧にもその話しをドンドン友達に広めてくれます。「ウワッハッハッハ!! シゲタ、寝れなくて大変だったみたいだな!」
「エスプレッソ飲み過ぎてねれなかったんだって? ハハ!」
会う人、会う人がエスプレッソで寝つけなかった日本人に温かい声をかけてくれます。
「そうなんだよ、ハハ……。」
今後、寝る前にエスプレッソは2度と飲むまいと、重太は心に固く誓いました。
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ローマに行ったらローマ人のするようにしろ! 1993年8月5日〜 [シエナ] ★★ 「し、シゲチャン。 な、なにする気?」
スパゲッティを作ってくれたアンドレがびっくりしています。
「なにって、スパゲティを食べてようと…。」
「スプーンを使って?」
「そ、そうだけど…。 え? イタリアじゃ…。」
「そんなやつ、いないよ。」
一体、誰が始めたんでしょうか?
日本で左手にスパゲティを巻くために敷くスプーンは、スパゲティの本場イタリアでは使わないとのことです。「ズッズー!!」
「…し、シゲチャン。」
「? 何?」
「たのむからさぁ…。」
「??」
「その、『ズッズー!!』って大音を食べて、スパゲティを食べるのはやめてくれない?」
習慣とはこわいものです。
日本では、スパゲティもラーメンやそば同様、音をたてて食べてしまいます。
しかし、本場では綺麗に麺をまいて、音をたてずに口の中へうまく運ぶのです。本場では誰もやっていないこと、本場での不作法を実行してしまう、この剛胆さ。
『我が道を行く』、を実践しているなぁと、小気味よくもとらえられますが、
『郷に行っては郷に従え』をすべきでしょう。
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たのしいイタリア人3 1993年8月5日〜 [シエナ] ★★ シエナの郊外でバーベキューをやることになり、アンドレ、ジョルジョ、ルーカたちと車で会場を目指します。
道端で夕涼みをしながらお喋りをしているおばあちゃんたちがいました。
「わっ!!」
おばあちゃんの横を車で通りすぎる時、アンドレがいきなり大声をかけます。
「きゃーーーー!!!!」
おばあちゃんは全員その場で1mくらい飛びあがりました。
「見たか、今の! ハッハッハ!」
「ウワッハッハッハ!!!」
「・・・・・・・・。」
一歩間違えたら何人か天に召されてしまうイタズラです。
「あれぇ、会場はここら辺のはずなんだけど…。」
なかなかバーベキュー会場が見つかりません。
先ほどのおばあちゃんのところまで戻って、道をきくことにしました。
「もう、あんたたち! さっきはビックリしたじゃないの!!」
「いやぁ、ごめんごめん! ところで、この場所に行きたいんだけど・・・。」
おばあちゃんたちは意外とあっさり、親しげに応対してくれました。「ありがとう! じゃーねー!」
「イタズラはほどほどにね!」
なんともさわやかな人たちです。
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これぞイタリア男児! 1993年8月8日〜 [シエナ] ★★★
いつもの様に、アンドレと水色のおんぼろフィアットでシエナの中心へ向かいます。
「チャオ! 元気かい?」
運転していたアンドレが、急に道端を歩いている2人の女性に向かって手を振りました。
「知ってるの、今の人たち?」
「いや。」
スタイルのいい後ろ姿に思わず声をかけた、とのことです。
さすが、イタリア男児!
アメリカ留学中もいろんな女の子とデートをして伊達男ぶりを発揮していましたが、ホームでの力は圧倒的です!
いつもの様に、アンドレとその仲間たちはシエナの町を何の目的もなく練り歩きます。
突然、みんなそろって方向転換をしました。
2人組の若い女の子を見つけたのです。「I can speak English! (=英語、はなせるよ!)」
「Why don't you have "Cappucino" together?(=カプチーノでも一緒にどう?)」
からかい半分、本気半分で後ろから聞こえるように英語でつぶやきます。
こうるさいストーカー状態です。
相手にされないとわかると、また次のターゲットを探しに練り歩きます。観光地シエナにはヨーロッパを始め世界中から観光客が訪れるのです。
「服装で大体、どの国の人だかわかるぜ。」
アンドレが得意気に言い放ちました。「特に日本人は奇麗な服をきていて、アクセサリーをつけてるから、わかりやすいぞ。」
さすがイタリア男児、こういう事への研究はものすごく熱心です。
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がんばれ日本男児! ![]()
1993年8月16日 [シエナ] ★★★ 「イタリア人はおもしろいな!」
積極的なナンパ術を繰り広げるアンドレたちを見て、重太はそう思いました。
「感心してないで、重太もやれよ!」
「よし、そのカメラで女の子をひっかけて、写真を撮って来い!」
なんだか話が勝手に進んでいます。「どの子にしようかな…。」
「あの子がいいな!」
「あっちの子にしようぜ!」
ルーカ、ジョルジョ、みな、それぞれ自分の趣味を主張しあってモメています。
声をかける役目は重太なのに…。「ねぇ、オレ、イタリア語わかんないよ。」
「安心しな! 教えるから!」
イタリア男児は、こういうことにかけては特に熱心で親切です。
「よし! あの子に決定! シゲチャン、行ってこい!」
郷に行っては郷に従え、意を決して重太は指定された女の子に話しかけます。
「…スクージ、」(=…すみません、)
「Si?」(=はい?)
「…ぽっそ ふぁ てぃ うな ふぉと?」(=…写真を一枚撮ってもいいですか?)
「Mia?」(=わたしの?)
「Si!」(=はい!)
「...Bene. Non c'e problema!」(=いいよ。)
ちょっと戸惑った様子を見せながら、気さくに1枚撮らせてくれました。「Benissimo!!(=すばらしい!!)」
「Bravo!!」(=ブラボー!!)
重太から少し離れた所でアンドレたちが拍手をして騒いでいます。
「Bravo! Giapponese!」(=いいぞ! 日本人!)
いつの間にかまわりの知らない人達まで拍手を始めました。
どうやらこの状況をアンドレがみんなに説明した様です。なんだかしらないうちに、重太は一躍ヒーローとなってしまいました。
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インターナショナル・ディナー ![]()
1993年8月6日 [シエナ] ★★★ 「チャオ、シゲータ!」
週末になり、アンドレの両親が別荘からシエナに戻ってきました。
「チャオ!」
アンドレの両親とはアメリカ留学時代の卒業式以来の再会です。アンドレのお父さんは銀行員。
シエナ市内の銀行に車で毎日出勤しています。
昼には家に戻り、シャワーを浴び、家族と一緒に昼食を取ります。
その際、ワインにミネラルウォーターを加えて飲んでいました。
「え? 今日はもう仕事は終わりですか?」
「いや。 これくらい、飲んだうちに入らんさ!」
イタリアではワインを飲んで車に乗るのは当たり前、と言わんばかりです。アンドレのお母さんは幼稚園の先生。
英語を話せないので、重太とはイタリア語をまじえ身ぶり手ぶりでコミュニケーションします。その夜、アンドレのお姉さん、バルバラのドイツ人の彼とそのお母さんがバカンスでシエナにやって来ました。
「ミシェルです。よろしく。」(=英語)
「シゲタです。はじめまして。日本から来ました。」
ここに日本、ドイツ、イタリアの三国協定が復活しました。夜は皆でアンドレの家のテラスで食事をしました。
アンドレ家族はイタリア語を話し、 ミシェル家族はドイツ語で話します。
バルバラとミシェルは何故かフランス語で話し、 アンドレと重太は英語で話します。
「言語の博覧会だな・・・。」
と日本語でつぶやく重太。
何ともインターナショナルな晩餐でした。「シゲチャン、果物はどう?」
「ケーキを食べたから、もういいよ…。」
「? ケーキはデザート。 果物はくだもの。 別物じゃないか!」
どうやら食後に食べるものの考え方がイタリアとシゲタでは違う様です。
「シゲチャン、遠慮なんかするなよ!」
遠慮なんか、全然してません…。
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イタリア語講座 1993年8月 [シエナ] ★ アンドレが友達とイタリア語で話しています。
「そう、留学中は一緒にTVゲームをしたよな。」(=英語)
「! なんで俺らが話してることわかったの? シゲチャン!」
アンドレがビックリしています。アルゼンチンで感覚的に覚えたスペイン語がおかげでしょうか。
似ている表現も多いイタリア語は何となく理解することができます。多少なりとも、その言葉がわかるとなると、興味もわいてきます。
アルファベットをローマ字読みすればよいイタリア語は読むのに苦労しません。
さらに日本人にとても発音しやすい言語だとわかりました。調子にのってその後もイタリア語について、アンドレやその友達にあれこれ聞くことにしました。
「『今日は何をしましたか』は『け こざ あい ふぁっと おっじ』って言うんだよ。」
誰でも自分の文化や言語に興味を持ってもらえると、うれしいものです。
アンドレの女友達、マルタとマリッサはきちんとしたイタリア語を教えてくれました。「『ぷろんと?』は『準備OK?』って意味だよ。」
「電話で最初に言う言葉でもあるんだよ。」(=もしもし)
「オ カピート!」(=わかりました!)
「すごい! シゲタは飲み込みが早いね!」
元気娘、マルタが驚いています。
彼女たちは英語が堪能なので、イタリア語を教えてもらうのもスムーズでした。「イタリア語会話の本を持ってるよ。」
「どれどれ…。」
イタリア語と見なれない日本語が書かれた本を二人は真剣に覗き込んでいます。「…アンドレとはアメリカで一緒だったんでしょ?」
静かでおしとやかタイプのマリッサが興味深そうに聞いて来ます。「うん、最初から最後までほとんど一緒に過ごしてたよ。」
「…アメリカ留学はどうだった?」
「はじめは特に大変だったなぁ…。」
「…英語が?」
「うん、そうだね。」
「今、あなたは学生?」
「そう、大学生。」
東洋から来た不思議な文化を持つ男にマリッサは興味を持ってくれた様です。「……そうだ。あなたの国の言葉も教えてくれない?」
「チェルト!」(=もちろん!)
イタリア語講座だったはずが、いつの間にか『ひらがな講座』になっていました。
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本当によく使うイタリア語講座 1993年8月 [シエナ] ★ 「『にゃーも!』は若者が使う『行こうぜ!』のくだけた表現だ!」
「トスカーナ地方では、語中の『K』の発音は『H』になるんだよ。」
「たとえばコカコーラ。トスカーナ風に言うと、『こはほーら』になるんだ!」
「バールで『こはほーら』って頼んでみな! 通(ツウ)だぜ!」
アンドレがトスカーナ地方の方言まで教えてくれました。「ナイスバディな女性をみたら、『むー! むー!』って言うんだ!」
「逆にぶさいくな女をみかけたら、すれちがってから小声で『みふぁかは』って言うんだ。」
ルーカたちは聞いてない言葉や汚い表現までどんどん教えてくれます。
彼らにとって、日本人が言いそうもないイタリア語を言うのがとても楽しいのでしょう。「この言葉は、絶対に父さんの前で言うなよ!」
「なんで?」
「もんのすごく汚い言葉だからだよ。いいな?」
アンドレが口をすっぱくして禁断の語句を教えてくれました。
「『ちくしょう!』とか『しまった!』って時は『ぽるか まいやーれ!』って言うんだ!」「アンドレ! なんて言葉を教えてるんだ!!」
横から突然アンドレの父さんが登場しました。
「ぽるか まいやーれ!!」
その後、アンドレがこっぴどく怒られたことは言うまでもありません。
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週末は別荘で ー大貧民編ー 1993年8月7日 [シエナ郊外] ★★ イタリアに来て初の週末、重太はアンドレの別荘へ行くことになりました。
シエナから車で2時間ほど走り、山間の小さな村に着きました。別荘は一戸建てでまだ建設中でした。
内装は毎週末に自分たちで少しずつ手を加え、完成させるのだそうです。
結構外国の人たちは自分の家を自分でつくっていく、という話をききます。
なかなか楽しそうですが、地震の多い日本でマネするのはやめておいた方がよさそうです。次の日は近所の人が集まって、庭でパーティーが開かれました。
ボール当てゲームをしたり、バレーボールをしたりして楽しみます。
「シゲチャン、みんなに『大貧民』を教えてよ。」
体を動かし疲れたところで、アンドレが言いました。
アメリカ留学当時に遊んだトランプをここでやろう、と言うのです。テーブルが無かったので、壊れて取り外してあった木の扉をテーブル代わりにしました。
なんとも豪快な急造テーブルです。
『大貧民』とは『大富豪』とも呼ばれる日本ではお馴染みのゲームです。
3が最小、2が最大。
手持ちの札を早く場に出し、なくした人の勝ちです。
一通りルールを説明して、ゲームを開始します。「Qの2枚組み、どうだ!!」
みんな自分の番が来ると、大きなカードを躊躇なくどんどん切って行きます。
「Kの2枚組み!」
「あああぁぁ!!」
彼らは自分の番がきたら後の事も考えず出せるカードを出せるだけ出す『戦術』です。
それはなんとも刺激的な戦い方でした。
その結果、「4」とか「6」という小さなカードが手元に数枚残ってどうしようもなくなり負けてしまう人ばかりです。
「Qだぞ!」
「Kだ!」
「A!」
「2があるぜ!」
「あぁぁぁ…。」
何度ゲームを繰り返しても、戦術性という言葉とは無縁の戦いが繰り広げられました。「(こんなカードゲームにも国民性って出るんだなぁ…。)」
ずっと一人勝ち状態の重太は、ゲームの勝利以外に意外で貴重な体験をしました。
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週末は別荘で ーグラッパ編ー ![]()
1993年8月7日 [シエナ郊外] ★★ 夜になり、夕食もおわり、みな食後のひと時を過ごしていました。
「ぽるか まいやーれ! ぽるか まいやーれ!」
お酒を飲んで出来上がってしまったおじさんが、笑いながら禁断の語句を連発していました。「ぽるか まいやーれ! なんだ、この東洋人は?」
「日本から来た俺の友達だよ。」
「ぽるか まいやーれ! 『グラッパ』という酒を飲んだことあるか?」
「…いや、ないです。」
「ぽるか まいやーれ! そんなら、俺が飲ましてやる。ちょっとここで待ってろ!」
皆が止めるのも聞かず、そのおじさんはものすごい千鳥足で車に乗りこみ、バールへ向かいました。数十分後。
「ぽるか まいやーれ! バールから買ってきてやったぞ!!」
とりあえず無事におじさんはグラッパを片手に戻ってきました。「ぽるか まいやーれ! 一息で飲むんだぞ!」
みんなが見守る中、ショットグラスいっぱいにつがれたグラッパを重太は一気に飲み干しました。「ウワッハッハッハー!!」
「よく飲んだぞー!!!」
「ぽるか まいやーれ!」
場内、拍手喝さいです。
「・・・うぐっ!!」
しかし、なんとキツイお酒でしょう!!
それは40度くらいある「きつーいリキュール系」の食後酒でした。
味も重太がおいしいと思わないカテゴリーのものです。
そこそこ酒をたしなめる重太もこの酒を一気に飲むのは無理がありました。「いけるねぇー! もう一杯いくか?」
「・・・パス、パス!」
「ぽるか まいやーれ!!」
むせて、涙目になり、もう一杯飲むどころではありません。「・・・ぽ、ぽるか まいやーれ!!!」
重太はこの食後酒を2度と飲むまいと心に固く誓いました。
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イタリアに溢れる日本のマンガとアニメ 1993年8月 [シエナ] ★★ アンドレは日本のマンガ、アニメが大好きです。
シエナの本屋やキオスクでもマンガ、アニメ情報誌が売られていて、彼はよく買っています。● アニメ ●
アンドレのビデオライブラリはなかなか凄いものがありました。
各種日本のアニメ(イタリア語版)から、オリジナル(=日本語版)までズラーっと揃っています。『ルパン三世 カリオストロの城』(イタリア語版)
「また、くだらぬものを斬ってしまった…。」という伍右衛門の名台詞は
「おまえは俺がいないと何もできないのだな。」
と状況に即した訳があてられていました。『紅の豚』(日本語版)
イタリアのお話だから、アンドレへのお土産にビデオを買ってこようかと思いましたが、買わないで良かったです。
1年前に公開されたばかりの作品を既に持っているところが驚きでした。『ガンダム0083』(日本語版)
ガンダム好きの重太が日本で見たばかりのビデオ作品です。
これらの新作を一体どうやってどこから仕入れるのでしょうか?『電影少女 ビデオガール』(日本語版)
重太も見たことのない、週間少年ジャンプに連載していたマンガのビデオアニメ作品です。
なぜ、こんなものまで持っているのか、もはや聞くまい、という心境です。日本のVTR(=NTSC方式)を買って来てもイタリアではPAL方式なので、見れないはずです。
誰かに頼んでPAL方式に変換してもらっているのでしょう。● マンガ ●
『キャプテンハーロック』
『聖闘志☆星矢』
『北斗の拳』
『電影少女』
『うる星やつら』 などなど、いろいろお馴染みのマンガがイタリア語版となり、書店やキオスクで売られていました。
『北斗の拳』で雲のジュウザがラオウに殺される直前に「…ばかやろう…!」という台詞があります。
イタリア語版でその台詞は「Stronzo!」(ストロンツォ!)となっていました。
多分、同等の意味があてられているのでしょう。
日本語で読んだことのある作品だと、イタリア語を勉強するのにいい教材になりえます。
「この曲好きなんだよ!」
アンドレが重太に聞かせたのは、TOM CATが歌う、『北斗の拳』のエンディングテーマでした。「どういう意味か、訳してくれよ。」
居候の身で文句は言えません。
その晩、重太は寝ずに『北斗の拳』の日本語の歌詞を英語に翻訳しました。
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本場のカプチーノ 1993年8月31日 [ボローニャ] ★★★ 「うまい!」
その名前は知っていましたが、重太は生まれて初めてカプチーノを本場、イタリアで飲みました。
それから、どこへ行ってもメニューにその名を見つけると、カプチーノを好んで頼むようになりました。
日本でもカプチーノを飲むことが出来ます。・絵柄の入った洒落でちょっと大きめのカップ。
・うっすら気持ちだけの蒸気ミルク。
・その上にシナモンパウダー。
・ソーサーの横にちょこんとおいてあるシナモンスティック。こんなお上品なカプチーノ、イタリアでは見たことがありません!
エセカプチーノです!・小さめの真っ白なカップ。
・エスプレッソを少しいれ、その上にたっぷり蒸気ミルクをかぶせる。これぞ、本場のエスプレッソなのです。
シナモンパウダー、シナモンスティック。
そんなものは一切必要ありません。さらに重要なのは、砂糖です。
角砂糖や黒砂糖なんてお話になりません!
カプチーノにはあのシャリシャリ口の中で歯ごたえのある白い通常の粉砂糖しか考えられません!!
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イタリア人の生活にふれるのも面白いのですが、 せっかくイタリアに来たのですから、観光も忘れてはなりません。
重太はまず、パリオまでの日々にシエナ周辺のいろいろな町をアンドレと訪れました。
[ 3、シエナ周辺 ]へ
イタリア93 [ 2, シエナでの日々 ] 目次 ・シエナの夜遊び その1 ………イタズラ好きのイタリア人
・シエナの夜遊び その2 ………街灯の下に立つお姉様にイタズラを
・たのしいイタリア人1 ………いつでも考えてることはイタズラ
・美味しいエスプレッソ ………エスプレッソメーカーでいれるとおいしい!
・たのしいイタリア人2 ………笑いのネタは身近にころがっている!
・ローマに行ったらローマ人のするようにしろ! ………郷に行っては郷に従え!
・たのしいイタリア人3 ………どこでもやることはイタズラ
・これぞイタリア男児! ………ナンパ大好きのイタリア男児!
・がんばれ日本男児! ………イタリア男児に負けてはいられません!
・インターナショナル・ディナー ………色んな国の色んな言語が飛び交う
・イタリア語講座 ………イタリア語講座からなぜかひらがな講座に
・本当によく使うイタリア語講座 ………アンドレたちが教える本当に使えるイタリア語講座
・週末は別荘で ー大貧民編ー ………すさまじいカードの切り方
・週末は別荘で ーグラッパ編ー ………食後酒グラッパを一気に飲み干すと…?
・イタリアに溢れる日本のマンガとアニメ ………その知識は日本人以上?
・本場のカプチーノ ………カプチーノの飲み方の決定版!
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