
3週間も居候したシエナを離れ、重太は一人、イタリア各地を放浪することにしました。
イタリアの歴史と文化を知る旅は、芸術の都フィレンツェからスタートします。
[ 1、シエナとパリオ ] [ 2、シエナでの日々 ] [ 3、シエナ周辺 ] [ 4、イタリア放浪1 ] [ 5、イタリア放浪2 ] [ 6、イタリア放浪3 ]
一人旅開始 1993年8月18日 [フィレンツェ] ★★★ シエナからトスカーナ地方のなだらかな丘を越え走ること1時間半。
バスは世界的に有名な芸術の町、フィレンツェに到着しました。
「…さてと…。」
ここからは生まれて初めての一人旅が始まります。
しかし、何をどうしたらいいのか、全くわかりません。
かと言って、まわりの誰かに旅の仕方を聞ける状況でもありません。
「…とりあえず、大聖堂でも目指すか。」
自分の居場所も東西南北も確認せず、気のむくまま歩き始めました。
「…これ、もしかして大聖堂じゃない?」
数分後、幸運なことに進んだ方向に大聖堂がありました。
心配など無用、一人旅なんてちょろいものです。
「はい、それではみなさん、移動しまーす。」
さすがは世界的観光地、フィレンツェです。
日本人団体観光客があちこちにいます。
どのグループも簡潔に見るものだけ見て、足早に次の場所へ移動していました。
「気に入ったものをじっくり見たくても、移動しなくちゃならないのかなぁ…。」
集合時間がないのが一人旅のいいところです。
興味の無い場所には行かずに済み、つまらないものは足早に、気に入ったものは好きなだけ見ていられます。「こ、細かい! すごい表現力だな!」
サンジョバンニ洗礼堂の扉のレリーフには聖書の様々なシーンが描かれています。(写真:右)
「す、すげぇ・・・。」
洗礼堂内部の天井に描かれた絵は大きく、見るものを圧倒します。
「初めて見たよ、こんなすごい芸術!!」
誰かにこの次々と沸き上がる新鮮な感動を伝えたくて仕方ありません!
しかし、まわりには誰も知り合いはいません。
これが一人旅の寂しいところです…。
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気の向くまま足のむくまま 1993年8月18日 [フィレンツェ] ★★
「何の料金だろう?」
わけもわからず目の前にある受付でお金を払い入ってみました。
中へ進むと、そこには階段があります。
「お金払ったんだから、のぼってみますか…。」
高いところ好きの重太は黙々と階段を上がって行きます。
ひたすら階段をのぼる事414段。
「うわぁ・・・!!!」
最上階では、フィレンツェの町を一望できる展望台が待っていました!
こげ茶色で統一された町並み。
すぐ下に見える大聖堂。
少し先に見える塔。
いくつもある教会。
はるか遠くに見える山々。
日本では決して見ることのできない景色が眼下に広がります。ガイドブックの地図からここがあの有名な「ジョットの鐘楼」とわかりました。
こんないい加減な出会いが一人旅の醍醐味かも知れません。
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鐘の音響く、フィレンツェの町 1993年8月18日 [フィレンツェ] ★ ジョットの鐘楼を後にし、シニョーリア広場に着きました。
広場に隣接するヴェッキオ宮殿には塔があります。
「シエナのマンジャの塔の方が高いぜ!」
シエナの住民でも無いくせに、塔の高さ比べをして一人で勝ち誇っていました。
その後、アルノ川にかかる2階建ての橋、「ポンテ ヴェッキオ」(=古い橋)に向かいました。
「あれ? いつ橋を渡り終えたんだ?!」
道の延長線上にさりげなく橋があり、その両側に宝石店などの建物が並んでいます。
「渡る」というよりは、「普通の道路を進んでいる」ような感覚の橋でした。
ゴーン ゴーン ゴーン………
ボボリ庭園の芝生で一休みしていると、正午の鐘の音が聞こえてきました。
「あぁ、この鐘の音。ヨーロッパって感じ!」
鐘の音一つに大感激です。
ゴーン ゴーン ゴーン………
「………また?」
その30秒後にも正午の鐘の音が聞こえてきました。
ゴーン ゴーン ゴーン………
「……また?」
さらに1分後にも正午の鐘の音が聞こえてきました。
鐘楼がたくさんあるとは言え、一体どれが本当の正午の鐘の音なのでしょうか?
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水を買う 1993年8月18日 [フィレンツェ] ★★ さすがに8月のフィレンツェの日差しは強く、のどは渇きます。
ちょっと歩いただけでもどんどん汗が出てくるのです。
夏のイタリア観光に、水は必需品です。
バールに入り、水を買うことにしました。
「うな あくわ、ぺる ふぁぼーれ!」(水を1つ下さい。)
「こん がす お なとぅらーれ?」
即座に何か聞き返されました。
『こん がす』はスペイン語も同じ発音で『ガス入り』という意味です。
なので、多分、ガス入りかそうで無いか、聞かれたのでしょう。
そうです、ヨーロッパや南米ではミネラルウォーターにガス入りとガスなしのモノがあるのです。
馴染みのない日本人にはガス入りの水はちょっとのみにくいものです。
そのアルゼンチンで学んだ経験を生かす時がやってきました!
「なとぅらーれ!」(ガス無しのを!)
中途半端なスペイン語の知識とちょっとかじった程度のイタリア語でショッピングを続けます。
「ぐらんで お ぴっころ?」(大きいの? 小さいの?)
水を1本買うだけなのに、バールのおじさんの質問は続きます。
「ぐらんで、ぺる ふぁぼーれ!」(=大きいのを下さい!)
「Va bene!」(ほいよ!)
「やるなぁ、おれ!」
英語にたよることなく、なんとかイタリア語だけで水を買うことができました!
それも、「ガス無し」の水を!
重太はかなり御満悦状態でバールを後にしました。
こんなちょっとしたことが一人旅の醍醐味なのかもしれません。
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フィレンツェ観光地めぐり 1993年8月18日 [フィレンツェ] ★ ガイドブックを片手にフィレンツェの名所をめぐります。
「え? 本物なの?」
サンタクローチェ教会では、入口近くの壁にミケランジェロの棺を発見しました。
棺をあければ、あの画家=ミケランジェロがいるはずです。
そんな歴史上の有名人と数mの近くまで接近しているなんて…!
そう思うとなんとも不思議な遭遇をした気になります。
「入ってみるか…。」
何となく近くを歩いていたので、メディチ礼拝堂に入りかけました。
「入場料を払ってね!」
勝手に教会のようなものと思い込み、入場料などいらないと思っていました。
ここで引き返すのも何かかっこう悪いなので、9000リラを払い中に入ります。
「す、すげぇ!!」
ドーム型の広間の天井には大きく見事なフレスコ画がありました。
そのスケール、色使い、細かさなどに圧倒されます。
何気なく立ち寄るだけのつもりが9000リラもとられ釈然としないものがありましたが、そんなことなど一気に吹き飛んでしまいました。
逆になんだか、穴場を見つけて、得した気分です。
続いて、サンロレンツォ教会、大聖堂=サンタマリア デレ フィオレと教会をめぐりました。
広い内部、精密な彫刻、しずかで厳かな雰囲気。
シエナの大聖堂とはまた一味違った迫力があります。
ヨーロッパの教会の独特な雰囲気をここで存分に味わいました。
シニョ−リア広場の近くのみやげ物屋付近に鼻が金色の光ったいのししの銅像があります。
みな、コインで鼻をこすり、それを口の中にいれ、滑らせていました。
「やってみるか…。」
なんのおまじないかわからないまま、見よう見まねでコインを滑らせてみました。
後で読んだガイドブックによると、「再びフィレンツェに戻ってこられるという言い伝えがある」とのことです。
「そんなことあるわけないじゃん…!」
1日フィレンツェの町を歩いて観光した彼は帰りのシエナ行きのバスの中、一人でつぶやいていました。
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フィレンツェ美術館めぐり ![]()
1993年8月19日 [フィレンツェ] ★★ 「いのししのおまじない」が効いたのか、重太は次の日もフィレンツェにいました。
たった1日の観光では、見ていない場所がまだまだあったからです。
今日は観光というよりは「美術館めぐり」に重点をおきました。
パラティーナ美術館では、人物画、風景画以外に悪魔や空想の生き物が描かれた絵が印象的でした。
絵もいいのですが、美術館自体が芸術作品という感じです。
つづいて、ウフィツィ美術館へ行きました。
入場に1時間ほど待たされるところは、世界的に有名な美術館という証でしょうか。
ボッティチェリの「プリマヴェーラ」そして「ヴィーナスの誕生」の前にはすごい人だかりができていました。
絵を傷つけないための配慮なのでしょうが、手前に置かれたガラスにライトが反射して見にくかったのが印象的です。
3ヶ月前の93年6月に爆弾テロがあったため、美術館内に1部閉鎖されている区画がありました。
楽しみにしていた「ミケランジェロの聖家族」は結局見れませんでした。
「く、首が疲れる…。」
どちらの美術館も所蔵数の多さもすごいのですが、壁、額縁、さらには天井にも細工がほどこしてあります。
どれもこれも見ようと欲張ると、もう大変です。
「こりゃ、体力勝負だな…。」
美術品を鑑賞するのも楽ではありません。アカデミア美術館では、「ダビデ像」のオリジナルを見ました。
「でかい!!」
リアルな造型より像の大きさに驚かされました。
よくあんな大きいものをミケランジェロは作れたものです。
重太は1日かけ美術館めぐりをしてへとへとです。
「…もう、芸術は当分いいや…。」
シエナ行きのバスの中で感動と共にくたびれ果てていました。
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ピサの斜塔 1993年8月21日 [ピサ] ★★ フィレンツェ芸術めぐりで疲れた重太はシエナのアンドレ宅で1日休息をとりました。
そしてその翌日、斜塔で有名なピサを目指すことにしました。
この旅初の列車の旅になります。
日本で買ったおいたイタリア国鉄30日間フリーパスの出番がついにやってきたのです。
「…?? なんだ?」
乗り換え駅=エンポリに着く直前、列車が停車しました。
何かトラブルが発生した様です。
予定がぎっしりつまった急ぐ旅ではないので、ただ気長に待つことにしました。
状況は良くわかりませんでしたが、なんとなく出鼻をくじかれた気分です。
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その後、30分ほどしてから列車は無事発車しました。
エンポリで乗り換えもうまく行い、ピサ駅に到着です。
ピサ駅からは市バスで斜塔を目指します。
「…どこで降りりゃいいんだろう??」
バスに乗ること15分、観光客が多くなった場所でとりあえず降りてみました。
「これが噂の!」
そこには歴史の教科書やガイドブックで良く見るあの斜塔がありました!
確かに塔が傾いています。
間近で見ると想像以上のかなりの倒れ具合です。
その昔は斜塔に登れたそうですが、93年にはすでに登れないようになっていました。
それほど塔が倒れかねない状況なのでしょう。
さらに、塔の付け根に重石を乗せ、逆側にこれ以上傾かないような措置がとられていました。
「はい、ポーズ!」
斜塔が倒れない様に支えているように写真を撮る人があちらこちらにいます。
横から見る限りでは、ただの変な人です。
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イタリアの車窓から ![]()
1993年8月21日 [ピサ→ルッカ] ★★★ ピサで一通りの観光を終え、隣町ルッカを目指します。
夏の日ざしの下、トスカーナの大地にとうもろこしやひまわり畑が続いています。
列車内には人が少なく、窓から心地よい風が入ってきます。
「……。 のどかで、いいなぁぁ。」
数十分間の列車の旅で車内から景色を眺めていたら、何か込み上げてくるものがありました。
「もっとのんびり楽しく生きたら?」
日本でせかせか生きている自分がこの景色に笑われている様に感じられます。
ゆったりとした時の中、ルッカの駅が近付いて来ました。
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心温まる町、ルッカ1 1993年8月21日 [ルッカ] ★★★★
列車はルッカに到着しました。
「よく戻って来たなぁ、うん、うん! さ、家に帰ろう!」
重太が駅を出る時、青年が父親に出迎えられていました。
坊主頭の青年は背筋が伸び、きびきび歩いています。どうやらその青年は兵役を終えて、久々帰郷した様子です。
父親がニコニコと嬉しそうに息子を車にのせ、走り去って行きました。
「…なんだか、映画の1シーンみたい…。」
こんな素朴なシーンを見せられてしまっただけで、この町の最初の印象は最高に良いものとなってしまいました。
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心温まる町、ルッカ2 1993年8月21日 [ルッカ] ★★
ルッカは周囲4kmの城壁に囲まれた小さな町です。
城壁の上にはたくさんの木が植えられていて、ジョギングやサイクリングに気持ち良さそうでした。
ドゥオーモ、サンジョバンニ教会を簡単に見たあと、バールに入りました。
遅目の昼飯をとるためです。
薄暗い店内は人も少なく、落ち着いた雰囲気です。
「ぷれんど くえすと!」(=これ下さい!)
指でサンドウィッチを指し示しました。
「ぱら べべーる?」
カウンターの向こうで若い女性が何か聞いて来ます。
「?」
「べべーる。」
「???」
べべーると繰り返していますが、何を聞かれているのか、よくわからりません。
「べべーる。」
全くわからない顔をしていると何かを飲む仕種をしてくれました。
「あぁ、飲み物ってことか! のぉ、ぐらっつぃえ!」(=結構です)
イタリア語を話せない東洋人に丁寧に接してくれたことで、この町の印象はさらに良いものとなってしまいました。
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円形劇場 1993年8月21日 [ルッカ] ★★ サンミケーレ教会、サンフレディアーノ教会と町の中にある教会を見学しました。
町の中を歩いた感じでは、夏休み中のためか人影はまばらで、ずいぶんと落ちついた印象を受けます。
30分ほど歩くと町の反対側の城壁にたどり着いてしまいました。
途中、家に囲まれた小さな円形の広場がありました。
古代ローマ円形劇場です。
劇場というよりは、小さな丸い広場を家々がビッシリ囲っている感じです。
子供達が自転車にのって走り回っていました。
おいかけっこをして遊んでいる様です。
何百年ものあいだ、ここの子供達はこの広場で同じように遊んで来たのでしょう。
こんなちょっとした風景にあれこれ空想をふくらませてしまいます。「…のんぎりしていい町だな…。」
ほんの数時間しかいなかったのですが、ルッカは静かで過ごしやすそうな町として重太の目には映りました。
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シエナへ向かう車内で 1993年8月21日 [ルッカ→シエナ] ★★★★ ピサ、ルッカと観光し、シエナへ電車で戻ることにしました。
少しずつ陽が傾きかけた窓の外を流れる風景も、もの寂し気ですが旅情をかきたててくれる何かがあります。
少しすると、車掌さんが検札に来ました。
「ぼなせーら」(こんばんは。)
車内に人が少ないためでしょうか。
一人旅の日本人青年を見て、話し掛けて来ました。
「シエナに戻るなら、エンポリっていう駅で乗り換えてね。」
物腰しずかな細身の車掌さんは英語を話せる様です。
親切に乗り換え駅を教えてくれました。
「どの国から来たの?」
「英語はどこで学んだんだい?」
何気ない会話が5分程続きました。
「ピネンツァって町は知ってるかい?」
「ルッカっていういい町があるよ。」
「あ、今日、そこに行って来たんです!」
「よかったでしょう?」
車掌さんはニコっと微笑みました。誰に勧められることなく、自分でガイドブックを頼りに訪れ気に入った町、ルッカ。
その町を地元イタリアの人に訪れた直後に勧められるとは!
なんだかうれしくなってしまいます。
その日は一日中暑く、かなり歩き回ったため身も心も疲れていたのですが、 この車掌さんとの静かなひと時の交流で少し元気を取り戻せました。
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ヴァチカン入り ![]()
1993年8月23日 [ヴァチカン] ★★★ 「にゃーも!」(行こうぜ!)
アンドレが重太のローマ観光の初日だけ付き合ってくれることになりました。
列車でローマに着き、地下鉄でまず世界で一番小さな国、ヴァチカン市国のサンピエトロ広場を目指します。
「シゲチャン、なんでローマには地下鉄が2つしかないか知ってる?」
アンドレからいきなりローマクイズが出されました。
「? わかんない。なんで?」
「穴を掘る度、遺跡が出てきて工事が進まないからさ。」
イタリアンジョークかと思ったら、どうやら本当の様です。
サンピエトロ広場には入国審査も税関も無く、すっと入れてしまいました。
入国したと言うよりは、町のある一角に行った、としか言いようがありません。
「一人はガイドでいろいろ案内をしてくれて、もう一人はずっと動かずあそこに立ってるんだ。」
2人組で入口を守るスイス衛士について、アンドレが説明してくれました。
「絶対、動かないの?」
「ああ、それが仕事だから。」
そこまで言われると動いているところを見たくなってしまいます。
「おおおぉぉ!」
TVや写真で良く見るサンピエトロ広場にやってきました。(写真:右)
「呼べば、あそこからローマ法皇が手を振ってくれるよ。」
アンドレのジョークを軽くかわし、重太はとっととサンピエトロ寺院に入って行きました。
有名なミケランジェロの彫像「ピエタ」を見るためです。
「半ズボンや袖無しシャツではサンピエトロ寺院にはいれないからな!」
またアンドレのジョークかと思いましたが、これまた本当の様です。
入口に服装によって入場をお断りする人の看板が出ていました。
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ローマのマックは世界一? 1993年8月23日 [ローマ] ★★★ 巨大なサンピエトロ寺院に圧倒されたあと、地下鉄に乗りスペイン広場に行きました。
映画「ローマの休日」で世界的に有名になった広場です。
「ふーん、それで?」
「言ったろ、大した事ないって。」
男2人であっさりした感想を残し、昼飯を食べることにしました。
「でもな、シゲチャン!」
アンドレがもったいつけるように話し始めました。
「スペイン広場の横にあるマクトナルドは世界で一番うまいぞ!」
何を根拠に言っているのか、アンドレは自信たっぷりに言い放ちました。
ローマのマクドナルドは内装がローマっぽく古代の柱や白塗りの壁で装飾されています。
遺跡の雰囲気がしてシャレています。
「ハンバーガーと、サラダと、コーラ。」
支払いに日本から持ってきたイタリアリラの新札を重太は出しました。
「ちょっと待ってね。」
何度も紫外線チェックをして、それが本物かどうか確認しています。
それほど、ピン札が「ニセモノ」に見えた様です。
「なんだかなぁ・・・。」
ハンバーガーを食べるだけで犯罪者扱いされている様でした。
「どうだ、うまいだろう!!」
「・・・。」
「な!」
「…い、いや、普通じゃない?」
重太には、味より値段のわりに日本のより一回り小さいハンバーガーの方が気になりました。
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歴史に直に触れる ![]()
1993年8月23日 [ローマ] ★★★ 「どこまで本当なんだろう?」
「先生はそれを見たんですか?」
学校で勉強する「歴史」は、重太にとってなんとなく信じ難いものでした。
というのも、自分よりたかだか20〜30年ほど先に生まれただけの先生がなんで大昔のことを全て事実の様に語れるかと思えてしまったからです。
本当はただ丸暗記するだけの歴史の授業にあまり興味を持てなかっただけなのですが…。
ローマの観光名所、コロッセオに入りました。
崩れかかった石の壁。
角の丸まった石の階段。
何年もの時を感じさせる風化した石の巨大建造物。
「歴史の授業で習ったことは本当かも知れない…。」
目の前にこんな物的証拠を見せつけられると、そう思わずにはいられません。
歴史がキライな子供も実際にその場に行ってみると、少しは興味も出てくることでしょう。
ローマにはこの他にフォロロマーノ、カラカラ浴場などの遺跡があります。
「何千年前も人間って生きていたんだなぁ…。」
地上に残った3本柱、壁で仕切られた浴場跡など見てしまうと、誰がいつ作ったのか、それがその時どう使われていたのか、など考えてしまいます。
それまであまり興味がなかったくせに、急に歴史について勉強したくなってしまいます。
たいてい、その時だけの軽い熱病なのですが…。
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ローマの観光地 1993年8月23日〜25日 [ローマ] ★ ◆トレヴィの泉
海の神様、ネプチューンが凱旋門から出る姿を表現した有名な泉です。
まわりの観光客らしき人たちが泉に背を向け、コインを投げていました。
「…よし! 俺も!」
それをマネて、重太も一応コインを投げておきました。
なんのおまじないか知りもしないで…。◆真実の口
嘘つきな人の手は抜けなくなる海神トリトーネの口。
映画「ローマの休日」で有名なこの丸い石盤は当時修復中でした。
そのため、重太は口に手は突っ込めませんでした。
「…(よかった。)」
抜けなくなる心配が無くなって、かえって良かったかも知れません。
◆数々の名所
ほか、サンタンジェロ城、最高裁判所、コンスタンティーノ凱旋門、クイリナーレ宮殿 ジャニコロの丘など、行ける限りの場所を訪れました。
「ブエノスに似てるなぁ…。」
町を歩いていると、なんとなく、どことなく重太が幼少期を過ごしたアルゼンチンの首都、ブエノスアイレスの町並みが思い出されます。
ヨーロッパの雰囲気がブエノス『に』似ているのではなく、ブエノス『が』似ているということに気付くのは、このずっと後のことです。
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ナヴォーナ広場にて ![]()
1993年8月23日[ローマ] ★★★★ ナヴォーナ広場。
ローマの中にある長方形で少し大きめの広場です。
ここにも彫刻で装飾された噴水があり、市民の憩いの場となっています。
観光客目当てでしょうか、似顔絵描きがたくさんいました。
アメリカ人の女の子が似顔絵を描いてもらったところでした。
その女の子は、出来上がった絵をまわりの人々に見せています。
「似てる! かわいいね!」
見せられた絵をみて重太はとっさに言いました。
「ありがとう! 妹を待ってて時間があったから絵を描いてもらってたの。」
「その妹も似てるの?」
「もちろん! 双児だもん! もう少しすればここに来るはずよ。」
10分程待っても妹さんが現れる気配がありません。
「妹さんにも会ってみたかったけど、そろそろ行かなくちゃ…。」
仕方なく重太は、その場を離れました。
ナヴォーナ広場を出ようとした瞬間、似顔絵そっくりの女の子が前からやってきました。
「ああぁ!! 君、双児でしょ?」
スレ違い様、重太はその女の子に大声で話し掛けました。
「???? な、なに?」
怪訝そうな顔をしてその女の子は足早に去って行ってしまいました。
「あぁ…。 行っちゃった…。」
いくら似ているとは言え、その女の子はさっき話をしていた女の子とは違う場所にいた別人(=双児の妹)なのです。
いきなり双児でしょと言われても、困ると言うもの。
東洋の変なナンパ師とでも思われてしまったことでしょう。
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動かぬ?スイス衛士 ![]()
1993年8月24日 [ローマ] ★★★
バチカン美術館へ向かう途中、二人組のスイス衛士が守る入口の前を重太は通りかかりました。
「本当に全然動かないや…。」
昨日のアンドレの説明通り、やはり一人は全く動かず入口を守っています。
しばらく見ていてもやはり一人は全く動きません。
こうなると、引き継ぎの瞬間でもトイレに行く時でもいいから、彼が動いているシーンを見てみたくなります。
バチカン美術館をじっくり見学した後、どうしても彼が動いているシーンを一目見たくなり、重太はまた入口にやってきました。
一人が観光客からの質問などに対応し、道を教えていたりします。
もう一人の衛士はやはり入口の脇で直立不動状態で待機しています。
「本当の本当に全然動かないや…。」
20分程見ていましたが、どうやらアンドレの説明通りのようです。
重太が諦めかけて、その場を去ろうとした瞬間です。
「アウト!!(入るな!)」
衛士が直立したまま片手を上げ、大声で叫びました!
そう、『動かないはずの』衛士がついに動いたのです!!
相方の案内役の衛士がしばしいない間のことでした。
ある観光客がヴァチカン美術館と間違えたんだか、その入口から入ろうとしたため、叫んだ様です。
何にせよ、衛士が動いているのを見てしまいました。
「見ーちゃった、見ーちゃった!」
たったこれしきのことですが、何だかとても得した気分です。
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システィーナ礼拝堂 ![]()
1993年8月24日 [ローマ] ★ 世界で一番小さな国、バチカン市国。
ローマを訪れたら、多分、誰もが足を運ぶ場所。
サンピエトロ寺院、サンピエトロ広場などと同様、バチカン美術館も是非足を運んでおきたい場所です。
「うわあぁぁ…!」
ゆるやかな螺旋坂道を上がり、入口をすぎるとそこは驚愕の世界でした。
フィレンツェの数々の美術館同様、この美術館のスケールも大きすぎます。
「ふむふむ…。」
体力もあり、感動も新鮮な初めのうちは絵を一つ一つじっくりと見ていきます。
しかし、途中からはパッと見ては次の絵へ、そしてまた次の絵へ、という雑な鑑賞法方に変わってしまいます。
これだけ多くの絵画が展示されていると、だんだん絵の有り難みがうすれてしまうのです。
「まだ、あるのかよ…。」
展示室はまだまだ果てしなく続いています。
お目当ての絵にたどり着くまでが大変です。
「…………。」
疲れた面持ちで歩いていると、何やら教会の一室のような場所に入りました。
何故かみんな天井を見上げています。
つられて重太も疲れ切ったこうべをがんばって上に向けてみました。
「うわぁぁぁぁ!!!!」
ありました、ありました、ありました!!
ミケランジェロが天からしたたり落ちてくる絵の具と戦い、4年の歳月をかけ完成させたフレスコ画が!
イラスト
凄すぎます!
こんなにでかい絵を、よくもまぁ、上を向きながら書き上げたものです。
デッサン力も凄いですが、全体を見通した配色もすばらしいとしか言い様がありません。
なんとなく思い入れのあった「アダムの創造」をついに生で見ることができてしまいました!
「人間には凄いことをやり遂げてしまうパワーがあるんだなぁ!!」
このフレスコ画を見たら、感激せずに入られません。
今までの歩き疲れが一気に吹っ飛ぶびました。
残念ながら、礼拝堂壁面を飾る「最後の審判」は93年夏当時は修復中で見れませんでした。
「…やるなぁ、日本人!」
日本からの援助によって、このフレスコ画の修復作業が行われていたことを重太が知ったのは、それから数年も経ってからの事です。
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ローマの夕食 1993年8月24日 [ローマ] ★★ ユースホステルで知り合ったブラジル人=ジュリアーノとアメリカ人=ダンと出会いを祝して夕食を食べに行きました。
「おもしろいよなぁ!」
ダンが陽気に話し始めました。
「『アメリカ』人、『ブラジル』人、『日本』人が
『イタリア』、ローマの『スペイン』広場近くの『中華』料理屋で
『ポルトガル』ワインを飲みながら夕食してるんだぜ。これは面白いだろう!」
「…なるほど!!」
国名を多く並べればいいと言うものではありませんが、ダンの着眼点もなかなかです。
たしかになんて国際的な夕食なのでしょう!
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泥棒のメッカ、ローマ 1993年8月23日 [ローマ] ★★★★ ローマの治安はあまり誉められたものではありません。
ユースホステルで知り合ったブラジル人の男性=ジュリアーノは、バスの中でスリに財布を取られた、とのことです。
「生まれてから住んでる治安の悪いブラジルでもすられたことが無いのに!」
かなりショックを受けていました。
重太がバスに乗っている時、観光客らしき男性が英語で叫びはじめました。
「おい! お前! 今、俺のサイフとったか!」
目の前に座っていたちょっとみすぼらしいイタリア人男性に叫んでいます。
そのイタリア人男性は次の停留所でそそくさと降りていきました。
重太自身もローマでいやーな思いをしています。
ポポロ広場で道を聞こうとしたおじさんにしつこく付きまとわれたことがあります。
人に道を聞く際、注意が必要なのですが、見かけは普通のおじさんだっただけに、なんとも防ぎがたいものでした。
「ネェ、キミィ、今、ひまぁ?」
サンピエトロ広場で友達に絵葉書を書いていたら、2人組のお兄ちゃんに英語で声をかけられました。
「遊びに、いこうよぉー。」
「疲れているからいい!」
「疲れてるのぉ? 車があるよぉ。」
ついていってもいいことは無さそうなので、さっさとその場を後にしました。
ローマはお世辞にもガラの良い町と言えなさそうです。
つづいて、ナポリ、ヴェネツィアなどを放浪します。
[ 5、イタリア放浪2 ]へ
イタリア93 [ 4、イタリア放浪1 ] 目次 ・一人旅開始 ………生まれて初めての一人旅がフィレンツェでスタート!
・気の向くまま足のむくまま ………芸術の町、フィレンツェを一望
・鐘の音響く、フィレンツェの町 ………鐘の音がヨーロッパを演出
・水を買う ………暑い真夏のイタリアで水分補給は重要
・フィレンツェ観光地めぐり ………主にフィレンツェの様々な教会をめぐる
・フィレンツェ美術館めぐり ………美術館のはしごで思わぬことに
・ピサの斜塔 ………斜塔を倒さない対策とは?
・イタリアの車窓から ………ピサからルッカへの車窓に流れる風景を見て
・心温まる町、ルッカ1 ………駅前で遭遇したある一組の親子
・心温まる町、ルッカ2 ………バールでのちょっとしたエピソード
・円形劇場 ………静かな町の穏やかな広場の1シーン
・シエナへ向かう車内で ………車窓さんとの会話が疲れを飛ばしてくれた
・ヴァチカン入り ………すべての道が通じているローマへ
・ローマのマックは世界一? ………スペイン広場横のマクドナルドは要チェック!
・歴史に直に触れる ………数々のローマの遺跡めぐり
・ローマの観光地 ………数々の観光名所を訪れる
・ナヴォーナ広場にて ………似顔絵を描いてもらったアメリカ人の女の子とのエピソード
・動かぬ?スイス衛士 ………ヴァチカンを守る門番
・システィーナ礼拝堂 ………驚異のフレスコ画との対面
・ローマの夕食 ………国際的な夕食会
・ 泥棒のメッカ、ローマ ………観光客を狙う物騒な町、大都市のいやーな副産物
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