Mexico 97
1997年9月13日 〜 1997年9月27日
社会人として2年半がんばった自分へのご褒美に重太はメキシコ旅行を勝手に計画しました。
久々に目指す大好きなラテンの地、自然と気持ちは高ぶります!
昨年一緒に香港へ行ったトシやん、会社の同期のうるびーと2週間のメキシコ浪夢が始まります。

        
[ 1、メキシコシティー 編 ][ 2、トラブル 編 ][ 3、ユカタン半島 編 ]

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 メキシコを目指す日本人
[ 成田 → ダラス フォートワ−ス] 1997年 9月13日 ★

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「なんで、また…。」
トシやん と うるびー が口をそろえて言いました。

「…いや、だってさ、この方が何かと便利かと…。」
「だからってそこまで短くするか?」
「シゲタじゃないみたい…。」
旅のため気合いをいれた坊主頭の重太を見て、二人は呆れかえっていました。

「……うーん。」
手触りがなんだか不自然です。
生まれて初めて丸坊主にした本人も、頭に違和感を感じながら、メキシコを目指しました。
「……うーん。」
坊主にして初めて分かった『おでこの妙な毛の生え際』が少しだけ気になります。

MAP1
アメリカ合衆国のテキサス州、ダラスに着き、メキシコ行きの飛行機に乗り換えます。
「あれ、日本人はみんな、あっち行ってまうで…。」
トシやんが不安そうにつぶやきます。
新婚さんはみな、ダラスでカリブ海のリゾート地=カンクン行きの飛行機に乗り換えて行きました。
「おれたちはこっち…。」
大勢の日本人客の中でメキシコシティーを目指すのは、3人組の20代後半の男だけです。

「…しぶいね、おれたち!」
あま〜い雰囲気漂うカップルたちを横目に、男3人のしぶ〜い遺跡めぐりの旅が始まりました。

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 メキシコ到着
[ ダラス → メキシコシティー ] 1997年 9月13日 ★

夜遅くにメキシコシティーの空港に着きました。
入国審査を終え、空港のロビーに出ます。

TAXI
「タクシー?」
「こっち! こっち!」
「タクシーだよ!!」
ヒゲヅラのおじさまドライバーがワンサカいます。
「アミーゴ!! タクシー?」
初対面なのにアミーゴ(=友達)呼ばわりしてくるなれなれしい方々でいっぱいです。

何故か、誰も彼もがうさん臭く見えてしまいます…。
「ノー! ノー!」
行く当てもないくせに、どれもこれも拒否して通り過ぎます。

「旅行会社推薦のタクシー会社だよ!」
歩いて振り払ってもしつこくついてくるおじさんが身分証明書らしきものを3人に見せました。
「夜も遅いし、とりあえずどこかのホテルに連れてってもらうか?」
「…だな。 そうしよう!」
うるびーの提案に重太は賛成しました。
おじさんの身分証明書が本物かどうかわかりませんが、男が3人いればいざと言う時はなんとかなるでしょう。

空港の隣の立体駐車場にとめてあったタクシーに乗りこみました。
「メキシコの町ってどんな感じなんだろう?」
期待に胸を膨らませ、窓の外に目をやります。

ぷすん…………。
タクシーは走り出したとたんにバッテリーが上がってしまいました。
「まじかよ…。」
空港から町に出るどころか、駐車場の建物からも出ていません…。

おじさんは立体駐車場の道のど真ん中でケーブルをつないで バッテーリのチャージ作業をおこないます。
「おっさん、邪魔だよ!!」
当然、道をふさいでしまい、他の車に大迷惑です…。

「(…先が思いやられるな、こりゃ…。)」
景色が一向に変わらない窓の外を眺め、溜め息をつくしかありません。
…なかなか楽しそうなメキシコ旅行の始まりです。

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 たのしい3人旅 その1
[メキシコシティー] 1997年 9月13日 ★

bed
「…………せぇーの、じゃんけん ぽい!!!!」
「よっしゃー!」
「やったー!!」

「……まじかよ…。」

泊まったホテルにはベッドが二つしかありませんでした。
じゃんけんの勝者2人にはベッドでの快適な睡眠が、
敗者の重太には薄っぺらいクッションでの素敵な睡眠が授与されます。

「……くそ。明日は勝ってやる!」
楽しい3人旅はまだ始まったばかりです。

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 通じる? スペイン語 その1
[メキシコシティー] 1997年 9月14日 ★

昨晩なんとかチェックインしたホテルのレストランでメキシコ初の朝食をとりました。

「カフェ? オ テ?」(コーヒー? それとも 紅茶?)
ウェイターの放つスペイン語がなんだかとても懐かしく感じられます。
「かふぇ、ぽる ふぁぼーる。」(コーヒーをお願いします。)
驚きです!
スペイン語が自然と口から出て来るではありませんか!!
アルゼンチンで生活していた時以来、およそ15年ほど スペイン語そのものに触れていないのに!
そもそも、アルゼンチンでスペイン語など話したこともないのに!
熟成させたワインの様に今になって味がでるなんて!

「なんで、何言ってるのか、わかるんや? なんでスペイン語話せるんや?!」
今回が海外2回目のトシやんは驚きまくっています。
「いや、なんとなく、わかるだろ?」
「わかんねぇって! なぁ、うるびー?」
「いや、わかるよ。」
うるびーも重太に同意します。
というのも、彼は大学時代にスペイン語を学んでいたのです。

「ムーチャス、グラシアス!」(=どうもありがとう!)
朝食を食べ終え、いよいよ市内観光へ出発です。
何となくとはいえ、現地の言葉が分かるとなると、ちょっとばかり今後の展開が楽しみになって来ました。

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 シティー散策 その1 Sekai isan
[ メキシコシティー ] 1997年 9月14日 ★

3人は地下鉄に乗ってメキシコシティーの中心地へ行きました。
重太とうるびーはバックパックにガイドブックやカメラなど観光に必要なモノを入れて出かけます。
トシやんはバックパックでなく、白いコンビニ袋だけをたずさえてのお出かけです。

「…あのさぁ、そのコンビニ袋で歩くの、やめない?」
「なんで? ええやん!」
「…なんか違うだろ?」
「…そうかぁ?」
「………。」
彼には彼のこだわりがある様で、説得は難しそうでした。
ガイドブックでもカメラでもない、その袋の中身が気になります。

「……でけぇ…。なんだこりゃ?」
『ソカロ』と呼ばれる大きな中央広場のまん中には、2日後に控えた独立記念日のための大きな金色の鐘が飾られていました。

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広い広場の北側には大きな『カテドラル』。
東に『国立宮殿』。
南に『連邦区庁』。
そして、西に『金銀細工の店鋪』があります。
どの建物の壁にもメキシコの国旗をあしらった電飾で飾り立てられています。
華やかなお祭りムードいっぱいの首都の中央広場! という感じです。

カテドラルの右手奥へ進んでいくと『テンプロ・マヨール』という古代アステカの代表的な遺跡があります。
ピラミッドがあったとされる台座がそこにはありました。
「…台座って言われても…。」
遺跡無知の重太には、それが一体どういうものの台座だったのか、皆目検討がつきません。

併設されている『テンプロ・マヨール博物館』でレリーフが彫られた石盤や アステカの人々の衣装などを目にしました。
「…ふーーーん…。」
ヘビやワシなどをあしらったデザインはとてもいい感じです。

「ドロンズ、いないかなぁ…。」
当時、某テレビ番組で南北アメリカ大陸縦断ヒッチハイクをしていたお笑いコンビが メキシコシティーあたりにいると思われました。
「ドロンズ、いないなぁ…。」
ことあるごとに彼らを探してみましたが、そう簡単には見つからない様です。

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 通じる? スペイン語 その2
[メキシコシティー] 1997年 9月14日 ★

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「リベラって画家の壁画がここらへんにあるはずなんだけど…。」
うるびーはガイドブックをたよりに『国立宮殿』内で巨大壁画をさがしていましたが、なかなか見つかりません。
警備員さんに聞いてみましたが、スペイン語で『絵』を何て言うのか彼もわかりませんでした。

「『クワァードラ』じゃだめかな…。」
ぼそっと重太がつぶやきました。
「あぁ、それなら正面から入ればすぐ右奥にあるよ。」
すると意外や意外、警備員さんが壁画の場所を教えてくれました。
イタリア語で『絵』に該当する単語を言ってみたら、なんと、通じてくれた様です。

4年前にイタリアに行った際、言葉が通じる面白さを実感し、 帰国後、少しだけ国営放送のイタリア語会話をかじってみました。
スペイン語とイタリア語は似ていると聞いていましたが、こういうところで役立ってくれるのはうれしいものです。
「やるなぁ、イタリア語講座!」
なんとなく見ていた国営放送、そしてジローラモさんに感謝、感謝です。

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 シティー散策 その2
[ メキシコシティー ] 1997年 9月14日 ★

ソカロを後にし、ホテル周辺の『ソナロサ』と呼ばれるエリアに重太たちは戻って来ました。
「この西側『チャプルテペックの森』には動物園、近代美術館、国立人類学博物館、お城とかがあるみたいだな。」
うるびーがガイドブックを見て解説をしてくれます。

なだらかな坂道を延々とのぼり、国立歴史博物館になっている城まで来ました。
「ほぉ、なかなかいいねぇ!!」
丘の上にあるだけあって、なかなかいい眺めです。
ホテルの近くにある独立記念塔やメキシコシティーの街が見渡せます。

ふもとには、白い6本の柱が立っていました。
「なんだ、これ?」
「『英雄少年記念碑』っていうやつみたい。祖国の為に命を捨てた学徒たちらしいよ。」
うるびーがガイドブックを見て解説をしてくれます。
メキシコに興味のある彼についていくだけで、いろいろ興味深いものが見れてしまいます。
旅に行くならうるびーみたいな人についていきたいものです。

「ホテルにはどうやって戻る?」
「タクシーでもいいけど、ここからなら歩けそうだよ。」
うるびーが適格な判断をしてくれます。
彼が先頭をきってテキパキと行動してくれるので、心強い限りです。

そもそもこのメキシコの旅は彼の発案によるものでした。
遺跡関連に興味のある彼は以前から一度、メキシコへ行ってみたかったとのことです。
あまりメキシコに興味のなかった重太ですが、実際に来てみると色々おもしろいものに出くわします。
何気なく来てみたメキシコですが、うるびーに感謝、感謝です。

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 ルチャリブレを見に行こう!
[ メキシコシティー ] 1997年 9月14日 ★

「ルチャ、見に行こうぜ!」
プロレスファンのトシやんが言いました。
ここメキシコは『ルチャリブレ』(=プロレス)が盛んな地です。
ホテルのカウンターで試合の予定を聞くと今晩試合があるとのこと!
早速、タクシーに乗り、会場へ行きました。

中に入ると薄暗く、小さな体育館に人がぎっしり入っています。
ワーーーーー!!
リングの上ではすでにレスラーたちが激しいバトルを繰り広げていました。

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リングサイドのボロいイスに座り、試合を見ます。
「ふーん…。」
普段、まったくプロレスなど見ない重太には会場から試合の様子まで全てが物珍しく見えます。

試合は大変わかりやすいものです。
レスラーは『悪役』と『ヒーロー役』がハッキリ別れています。
覆面をかぶった『悪役レスラー』が武器などを使い、『ヒーロー役レスラ−』を苦しめます。
「あいつ、武器をつかってるじゃないか!」
『ヒーロー』がレフリーに講議しますが、レフリーは聞く耳持たず状態です。
『悪役レスラー』は卑劣な行為を繰り返します。
そんなピンチを脱し、最後は『ヒーローレスラー』が大技をかけ勝つ、と言うものです。
わざとらしさがリング場からプンプン臭ってきて、とても笑えます。

「ぶったおせぇ!」
「おいおいおい!! 今の反則だろ!!」
「フォールしろぉ!」
「ああああぁ!!」

ヤジ、罵声、悲鳴に絶叫…。
リング上の出来事に観客は一喜一憂します。
庶民のストレス発散、身近な娯楽として『ルチャリブレ』がものすごく浸透している様子が伺えました。

「そうだ! いけぇーー!」
「審判!! カウント、おせえぞ!!!!」
「こらぁ! 早く跳ね返せ!」
「きゃーーー!!」

試合より異常なほど熱狂的な観客も見ている方が面白いかもしれません。

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 戦う日本人レスラーたち
[ メキシコシティー ] 1997年 9月14日 ★

『ルチャリブレ』は、1晩、1つの会場で何試合もおこわなれます。
中には日本人のレスラーたちの試合もありました。

ドッガーーーーーン!!
試合の素晴らしい演出によって、『マグナム・トーキョー』というレスラーが場外に吹き飛ばされ、トシやんの隣にきました。
「大丈夫っすか?」
トシやんがマグナムを気づかいます。
「ありがとう。……先週の試合で足を怪我してんだよ………!」
「え? まじっすかぁーーー?」
とっさに切り返したトシやんのコメント。
とらえ方によってはとっても失礼な受け答えです。

他にも『スモー・フジ』『ジュードー・スワ』というわかりやすいくらい日本をアピールしたリングネームのレスラーたちがいました。
こういう人たちのおかげで、メキシコにも『相撲』『富士山』『柔道』といった日本語が浸透していくのです。
彼らこそ文化親善大使としてもっと世に認められるべき人たちなのかもしれません。


数年後、『マグナム・トーキョー』が日本のテレビに出ていました。
なぜか『お笑い系のレスラー』の様な扱いだった気がしますが…。

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 タクシーとみやげ屋
[テオティワカン、ちょい手前] 1997年 9月15日 ★

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昨日、町中で『ツーリスト・ポリス』たる人と話しました。
その人の紹介で、3人はタクシードライバーを雇いました。
メキシコシティー郊外にある、ある有名観光地へ行くためです。

「おおおぉぉ!!」
メキシコシティーから車を北東へ走らせると、遠くに大きな三角形が見えて来ました。
『テオティワカン』の『太陽のピラミッド』です。
このピラミッドを見るためにメキシコに来たと言っても過言ではありません!

「ここがここらへんで有名なみやげ屋だ。何かいいものを買ってはどうだい?」
「…い、いや…。」
ピラミッドを見に行く前にみやげ屋へたちよる羽目になりました。
頼んでもいない、余計なサービスです。

「このパーカーなんて似合うんじゃないかな。」
「こっちのアステカのカレンダーもいいんじゃない?」
ドンタコスのCMに出てきそうな店員さんがしつこくまとわりついて来ます。

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重太たちの興味はみやげ物よりピラミッドです。
こんなところは早く切り上げてピラミッドに行きたいのに、ドライバーはなかなかタクシーを出してくれません。
「何も買わないのかい? ここのみやげ屋はいいものを揃えてるんだよ!」
どうやら、そのタクシードライバーはみやげ屋と提携しているようです。

「こっちのテキーラなんてどう?」
「この織物、きれいだろう? どう?」
「このソンブレロなんかどうだい?」
よくもまぁ、と呆れるくらい、次から次へとメキシコみやげを薦めて来ます。
「はい、チーズ!」
そんな誘いにのって、ソンブレロをかぶって笑顔で記念写真を撮る重太たちもちゃっかりしています。

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 坊主と月のピラミッド
[テオティワカン] 1997年 9月15日 ★

「…じゃ、行こうか。」
やっとのことでみやげ屋を後にし、テオティワカンの入口に来ました。
冷房のきいた博物館でこの遺跡の予習をお勉強します。
その後、すぐ隣の『太陽のピラミッド』を目指しました。

「…で、でけぇぇ!!」
真下から見上げるピラミッドのスケールは写真で見るものとは次元が全く違います。

「…誰が、いつ、なんのためにこれらを造ったんだろう…。」
そんなことを考えていると、なんだかとても神秘的な気分にひたれます。

階段を一歩一歩踏み締め、ゆっくりゆっくりと『太陽のピラミッド』の頂上を目指します。
途中、何度か振り替えって景色を見ようかと思いましたが、それは頂上に上り切った時の楽しみにとっておきました。

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「おおぉぉ!! すげぇぇ!!」
頂上からの景色は素晴らしいものでした。
『月のピラミッド』や『死者の道』と呼ばれる遺跡内のメインストリート。
遠くまで続くなだらかな丘。
青空に映える景色がそこには広がっていました。

「写真、撮って!」
この旅行の為に新調した一眼レフのカメラでうるびーに写真を撮ってもらいます。
背景は少し先に見える『月のピラミッド』。
坊主頭の重太とは妙なマッチングでした。

『坊主と月』。
文字ヅラだけみると、なんだか日本の風景を連想しそうです。

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 人類史上初?
[ テオティワカン ] 1997年 9月15日 ★

「…いいねぇ!」
『太陽のピラミッド』の頂上。
360度広がるのどかな景色は心を和ませ、時の経過を忘れさせてくれます。

ブワッ…!
トシやんが白いコンビニ袋から『かっぱえびせん』を取り出しました。
「いや、ここで食おうと思ってな。」
「…………………あ、そ。」
あの白いコンビニ袋の中身が『かっぱえびせん』だったとは、予想もできませんでした…。
『ガイドブック』でも『カメラ』でもなく、『えびせん』を観光に持ち歩くとはかなりのツワモノです。

「うまい!」
トシやんはピラミッドの頂上に腰をすえ、えびせんを食べ続けます。
彼はもしかしたら、人類史上初めての『太陽のピラミッド上でかっぱえびせんを食べた人間』かもしれません…。

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 偶然の出会い
[ メキシコシティー ] 1997年 9月15日 ★

『太陽のピラミッド』に上った後、『死者の道』を通り『月のピラミッド』と呼ばれる もう一つのピラミッドにも上りました。
その後、広い遺跡内を十分に歩き回った3人はメキシコシティーに戻りました。

「うめぇ!!」
少し遅めの昼飯は、重太の好物の『タコス』です。。
本場で食べるタコスは、『本場はちょっと美味しいかも』スパイスが効いているせいで、一層おいしく感じられました。
「なんか、メキシコでタコスを食べると『メキシコー!!』って感じがするよな!!」
日本でタコスを食べるとどう感じるのでしょうか?

食後は街中で買い物をすることにしました。
横断幕、ラッパの音、露店…。
独立記念日前日ということで街中がお祭りムードです。
ガヤガヤ、ガヤガヤ…
ただでさえ人口が2000万人と言われているメキシコシティーの街がさらに人であふれかえっています。

「顔のペイントやらない?」
サンプルの描かれた紙ををもって、小さな女の子が近寄って来ました。
「クワント? (いくら?)」
「1ペソだよ。(=約30円)」
お手ごろ価格なので、旅の記念にと頬にメキシコの国旗をペイントしてもらうことにしました。

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しばらくその場で顔ペイントをしてもらっていたその時です。
「あああああああ! おったぁ!!!」
何やら遠くから関西弁が聞こえて来ます。
その人はどんどんこちらにやってきます。

「やっと、見つけたよぉ−−−!」
「あれぇ!! キタさん?!」

なんとその人は重太の会社の先輩、キタさんだったのです!
同時期にメキシコを旅行すると聞いていましたが、現地で会う約束は特にしていませんでした。
「えぇ? 本当にキタさん?!」
「そうや!」
タダでさえ人の多いメキシコシティー。
さらに人が集中する独立記念日の街の中心地で偶然会うなど誰が予想したでしょう?
どこかのヤラセ旅番組みたいな展開に驚きです!

「よくこんな人混みの中で我々を見つけられましたね!!」
「いや、妙に一人浮いてる奴がいたんでな!」
それが、白いコンビニ袋を持っている奴ということは、言うまでもありません。

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 外国人の洗礼 その1
[ メキシコシティー ] 1997年 9月15日 ★

重太、うるびー、トシやんと大都市メキシコシティーの街角で偶然出会った会社の先輩、キタさん。
4人で独立記念日の前夜でおおいに盛り上がっている街の中心地『ソカロ』を目指します。

「うわっ!」
突然、後ろでトシやんが悲鳴をあげました。
「どうした?」
「いや、何か知らんけど、すれ違った人に急にスプレーをかけられたんよ!」
トシやんの頭の上には整髪剤の白いムースが吹き付けられていました。
「なんでこんなこと、されんやろ?」
トシやんはちょっとふくれっつらです。

awa
シューー!!
シュー−ー!!!
シューー−ー!!!!
ソカロに向かう途中、トシやんは体中がムースだらけになってしまいました。

「トシやん、雪が降ったみたい!!」
「なんで俺だけ…。」
たしかに他の3人は全く無傷でした。

メキシコでは、独立記念日に他人にムースをかける風習でもあるのでしょうか?
それとも、白いコンビニの袋が原因なのでしょうか?

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 外国人の洗礼 その2
[ メキシコシティー ] 1997年 9月15日 ★

「うわっ!」
「ぶっ!!」
「なんだ!!」
「おえっ!!」
ソカロに到着すると4人はムース攻撃の標的にされてしまいました。

「これ、どういうことだよ!!」
独立記念の会場、ソカロは何でもありの無礼講状態となっていたのです。
誰もが知らぬ人にムースや小麦粉、紙吹雪などを掛け合っています。
どうやらこうやって大騒ぎをして独立記念をみんなで祝う国の様です。
ムースなどの攻撃をガードするために顔全体を覆う透明なプラスチックが売られているのもうなずけます。

「そりゃっ!!」
重太たちも屋台で売ってるムースの缶を数本購入し、見知らぬ人たちにムースをかけ始めます。
「うわぁぁぁーー!!」
しかし、攻撃すると言うことは、攻撃されると言うこと。
みなり、雰囲気がメキシコ人と違う日本人は格好のエジキになりました。

「くそぉぉーー!!」
重太たち4人はお互いの背中を守りながら反撃をします。
しかし、所詮、他勢に無勢。
四方八方から飛んでくるムースをかわしきることなど、出来るはずもありません。
自分がニュータイプでないことをただ思い知らされただけでした。

「…まじかよ。」
結局4人は全身ムースまみれになるしかありませんでした。

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 『メキシコ、ばんざーい!!』
[ メキシコシティー ] 1997年 9月15日 ★★★

日も沈みかけたソカロでは、ムース戦争がまだ続いていました。

「あれ、うるびーとトシやんは?」
「わからん! それどころやあらへん!」
ムースの掛け合いをしているうち、重太とキタさんはうるびーとトシやんと離ればなれになってしまいました。
それもそのはず、メキシコ人たちのムース攻撃は次から次へと重太たちへ容赦なく続きます。
顔全体を腕でガードするのが精一杯で、まわりを見る余裕などなかったのでした。

「ちょっといいかな?」
他のどのメキシコ人よりも体中ムースまみれになった重太に声をかけてくる人たちがいました。
ムースをかけられないように少し警戒してそちらを向きましたが、どうやら顔面攻撃してくる様子はありません。
それどころか、大騒ぎしている他のメキシコ人たちとは明らかに雰囲気が違いました。

「なんだろう? 『メキシコ人以外は独立記念日を祝うな!』 とか怒られるのかなぁ?」
恐る恐るその人たちを目をやると、マイクやカメラを構えています。

「スペイン語わかる?」
重太にマイクが向けられました。
「うんぽーこ!!」(ちょっとだけ!!)
よく事態をつかめていませんが、重太はとりあえず質問に答えます。
「英語は?」
「Yes, I can speak English! (はい、話せますよ。)」
そう答えると、後ろから英語を話せるインタビューアーが登場し、英語による街頭インタビューが始まってしまいました。

「どこから来たんですか?」
「メキシコにはどのくらいいるのですか?」
「メキシコに来た目的は?」
次々と入国審査で聞かれるような『外人に聞くお決まりの質問』をされました。
入国時との大きな違いは『答える人間が全身ムースまみれ』ということです。

viva MEXICO
「こういうお祭りはどうですか?」
どうやら独立記念日前日のソカロの様子を取材に来たテレビ局の様です。
「こんなクレイジーな(=狂った)感じのお祭り騒ぎ、大好きです!!」
とらえ方によっては全メキシコ国民を敵にまわしかねないコメントを発し、カメラの前ではしゃぎます。
「ビバ! メヒコ! (メキシコばんざーい!!)」
フォローするため、知りうる限りのスペイン語を大声で叫んだところで取材は終わりました。
シュー−ー!!!
その後はまたムースの標的となり続けました…。

この様子がオンエアされたかどうか、いまだに不明です。

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 腹ごしらえ
[ メキシコシティー ] 1997年 9月15日 ★

日もいつの間にか沈み、とっくに夕食の時間が過ぎていました。
ムース戦争はまだまだ激闘が繰り広げられていますが、腹が減ってはいくさはできません。
なんとかうるびーとトシやんを見つけだし、戦場のソカロから離れ、 腹ごしらえをしに行くことにしました。

ソカロ周辺の店は独立記念日前夜ということでどこも営業をしていません。
少し歩いた先にやっと開いている大衆食堂を見つけました。

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「うわ、なんだい? あんたたち…。」
ウェイタ−はあきれ顔で重太たちを見ます。
それもそのはず、全員顔中、全身にムースと紙吹雪がこびりついていたのです。

席に腰を落ち着け、オーダーをしました。
「それにしてもすごかったなぁ…。」
ソカロでたった今まで繰り広げられていたムース戦争を思い返します。
「うわ、うるびー、ムースまみれだぞ!」
「重太もだよ! すごい顔してるぞ!」
そこにいた日本人は4人とも、服のまま泡風呂から出て来た感じです。
ウェイターさんが嫌な顔をするのもうなずけます。

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 コーヒー事件簿 その1
[ メキシコシティー ] 1997年 9月15日 ★

「…はい、どうぞ。」
「……うわっ……。」
重太の目の前に、衛生面で非常に問題のありそうなスープが出されました。
「…………ずずっ……。」
これからまだ続く旅のことを考えると、軽く口をつけるのが精一杯でした。

「おれ、せめて食後のコーヒーを飲みたいな…。」
うるびーがコーヒーを頼みました。

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タン、タン…。
「…え?」
数分後、我が目を疑うようなものが机の上に置かれました。
『グラスに入った一杯のお湯』と『インスタントコーヒー一缶』です。
「自分でコーヒーを作って飲め、ってこと?」
「………そうなんじゃ?」

ポカーーーーン
日本の喫茶店やレストランではありえないこの状況に、全員空いた口がしばし塞がりませんでした。

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 撤退命令
[ メキシコシティー ] 1997年 9月15日 ★

ほんの少しだけ腹もふくれ、再び4人はソカロへ戻りました。
しかし、わずか数十分ほどいなかった間にソカロは人で満杯になっています。
先ほどはまだ自由に動くスペースがあったのに、もう人が立つ隙間すらありません。
とっくにムースの掛けあいなどできる状況ではなくなっていました。

「なんで、お前らがオレたちの国の独立記念を祝うんだ?」
「これから始まる盛大なメキシコのお祭りに、何故日本人がいるんだよ!」
なんとなくそんな感じの視線を重太たちはビシビシと浴びます。
「…なんか、ちょっとヤバイ感じじゃないか?」
祭り騒ぎに乗じて、何が起こっても不思議でない程、イヤーな感じがして来ました。
先ほどまでのムース戦争など、これから始まるお祭りのほんのささやかな前哨戦に過ぎなかった様です。

「ホテルに戻った方が良さそうだな…。」
身の危険を感じた重太は退却を提案します。
「…了解。」
4人ははぐれない様に前の人の肩をしっかりとつかむ『ジェンカ・スタイル』で、ソカロ脱出を試みます。

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「うわ!」
しかし、人がギュウギュウ詰めになったソカロでは、なかなか思うように歩けません。
進みたい方向とは関係ない方向へ押しやられ、どっちに向かっているのかよくわからなくなってしまうのです。

ソカロにはまだまだ人が増え続けている感じです。
「朝のラッシュ時の山手線なみだな…。」
広大な広場のソカロが立ったまま動けない『超満員通勤電車状態』になっていたのです。
これが一晩中続くとなると、ラッシュの方がまだましに感じられました。

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 危険な迷子
[ メキシコシティー ] 1997年 9月15日 ★

「あれ、うるびーがいない!」
『ジェンカ』の最後尾にいたはずのうるびーがいつの間にかいなくなってしまいました!
人の渦に飲み込まれた様です!!
これは大事件です!
この『超満員通勤電車状態』のソカロの中で一人の人間を探し出すことなど到底不可能なことでした。

「ホテルでうるびーを待つ方が良さそうですね。」
「そうだな…。ホテルはどこ?」
「カピトルってところですけど…。」
「マジで?」
驚くべきことにキタさんも重太たちと同じホテルに泊まっていたのでした。
「すっごい偶然やなぁ…。」
3人はとりあえずホテルに戻り、彼が帰ってくるのを待つことにしました。

 :
 :
10分…。
うるびーは帰って来ません…。

 :
 :
 :
15分…。
うるびーはまだ帰って来ません…。

 :
 :
 :
 :
30分経過…。
うるびーはなかなか帰って来ません…。

「…大丈夫かなぁ?」
ソカロからホテルに戻ってくる道中、盾を構えたたくさんの機動隊員が街中を走っていく姿を目の当たりにしました。
暴動に対する備えなのでしょうが、かなり物騒な様相を呈していたのです…。

 :
 :
 :
 :
45分が過ぎ、とうとう1時間経ちました。
それでも、うるびーは戻って来ません…。

「なんか、まずいことでも起こったのかな?」
「道に迷ってどこにいるのか、わからないとか?」
「メキシコ人に袋だたきにあってるとか?」
「ムースが目にはいって、何も見えなくなったとか?」
「理由もなくからまれてるとか?」
よからぬ思いをいろいろめぐらせていた頃、うるびーがホテルに帰って来ました。

「大丈夫かよ?」
パッと見た限り、怪我などしている様子はありません。
「どうしてたんだよ?」
「いやぁ、機動隊に道を封鎖されて、すげぇー遠回りさせられてさ…。」
さらにちょっと道にも迷って、帰るのが遅れた様です。

「とりあえず、無事でよかったよ…。」
「…ほんと、ほんと!」
なんとも騒がしい1日がやっと無事に終わろうとしていました。

「服、洗濯しないとな。」
服にこびりついたムースや紙吹雪は、すでに乾いてしまっていてなかなか落ちません。
そればかりか、紙吹雪がカラフルな小さな斑点となり、下着いっぱいに色落ちしていました…。

Mexico 97

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普通に観光に来ただけのつもりが、独立記念日という予想外の事態に巻き込まれ、 波瀾含みの幕開けとなったメキシコ旅行。
この後もトラブルはまだまだ続きます。

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 メキシコ97 [1 メキシコシティー 編] 目次 

メキシコを目指す日本人 ………男3人のゴーヂャスな旅のはじまり

メキシコ到着 ………一筋縄では行かないホテルまでの道のり

たのしい3人旅 その1 ………2つしかないベッドの奪い合い

通じる?スペイン語 その1 ………久しぶりに触れる生のスペイン語

シティー散策 その1 ………中央広場、『ソカロ』へ

通じる?スペイン語 その2 ………意外にいけちゃうなんちゃってスペイン語

シティー散策 その2 ………頼れる旅の友

ルチャリブレを見に行こう! ………メキシコでプロレス観戦

戦う日本人レスラーたち ………ルチャリブレで見かけた日本人レスラー

タクシーとみやげ屋 ………こうやって成り立つ観光業

坊主と月のピラミッド ………テオティワカン観光

人類史上初? ………太陽のピラミッドの上で…

偶然の出会い ………異国の地で再会した意外な人

外国人の洗礼 その1 ………襲撃されるトシやん

外国人の洗礼 その2 ………独立記念日前日の大騒ぎ

『メキシコ、ばんざーい!!』 ………ムースまみれの重太にインタビュー

腹ごしらえ ………ひとまず休戦、レストランへ

コーヒー事件簿 その1 ………食堂で頼んだコーヒーにビックリ

撤退命令 ………狂喜乱舞のソカロ

危険な迷子 ………何が起こってもおかしくない独立記念日前夜のハプニング

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