
ロンダ、グラナダと放浪を終えた重太は旅の最終目的地、バルセロナを目指します。
ここでも予想しえなかった数々のトラブルが彼を待ち受けていました。
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それは何階? ![]()
1998年 6月17日 [ バルセロナ ] ★★★
夜9:30。
あたりも暗くなったバルセロナ、プラット空港に着きました。
「ぱせお で ぐらしあ 102、ぽるふぁぼーる。」
タクシーの運転手さんにホテルの住所をいい、ホテルを目指します。「その住所はここだよ。」
町の中心まではタクシーで20分程でした。
「え?」
彼が下ろされた交差点には、ホテルなどありません。「ちょ、ちょっっと!!」
夜遅くに、全く初めての町で見事にほうり出されてしまいました。
「…え、…え?! あれ?!」
あわてふためいて、よくあたりを見回してみます。
すると、角のマンションみたいなビルの入り口に「Hotel Paseo de Gracia」と書かれていました。とりあえず、ほっとして入ってみてました。
「…おい! 一体どうなってんだよ?!」
しかし、そこにはホテルの受付らしき場所はありません。
郵便受けがあったり、エレベーターがあるだけの、ただのマンションのロビーです。再び外に出て、よーく看板を見てみました。
『Hotel Paseo de Gracia、受付は2F』
「…なんてこったい!!」
重いリュックを背負い直し、階段で2階へ上がってみました。「…おい! ホテルはどこにあるんだよ?!」
しかし、2階にもホテルの受付らしきものは見あたりません。
いくつも普通の扉があり、ただのマンションの2階らしき雰囲気で満ちあふれていました。もう一度外にでて、よーく看板を見て考えてみました。
とりあえず、ホテルがこのビルにあることは間違いなさそうです。
そして、受付は『2F』にある様です。
2F………。「まさか!!!」
なにかひらめいた彼は再び階段を駆け上がりました。
そして、ホテルの受付をやっと見つけたのでした!
そう、スペインでいう「2F」とは日本で言うところの「3階」だったのです!!
彼が幼年期を過ごしたアルゼンチンでも同様のフロアーの数え方をしたのをキラリと思いだしたのでした。 階の数え方の違い
スペイン 日本 : : 3階 ( 3F ) 4階 2階 ( 2F ) 3階 1階 ( 1F ) 2階 地上階 ( GF ) 1階
このひらめきが無ければ、あやうく野宿するところでした。
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部屋は何階? ![]()
1998年 6月17日 [ バルセロナ ] ★★★
受付で無事チェックインを済ませ、今晩の寝床をなんとか確保しました。
これで一安心です。「301号室は『オクターヴォ』だよ。」
部屋の鍵をもらう時、受付のお兄さんがそう教えてくれました。
『オクターヴォ』という単語をあまり気にせず、とりあえず301号室を目指しました。「…301、301…………。」
しかし、301号室は、2階にも3階にも、受付から3階上の6階にもありませんでした。
重いリュックを背負ったまま階段を昇り降りした重太はもうヘトヘトです。「へ、部屋はどこ?」
再び受付に戻ってきた重太は受付のお兄さんに聞きました。
「だから、『オクターヴォ』だって。」
「???? 『オクターヴォ』?」
オクターヴォを理解できない重太に、お兄さんは指を立てて教えてくれます。「1、2、3、…、7、8本。…『8』?」
どうやら『オクターヴォ』とは、8の序数のことの様です。
確かに音楽用語の『オクターヴ』や、『オクトパス』(=たこ)は『8』に関係する言葉です。「『オクターヴォ』って8階なの? わかるかーー!!」
301号室が8階にあるのは反則です。
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一人目の天才とあう(現場泣かせの建築家) ![]()
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1998年 6月18日 [ バルセロナ ] ★★★★
バルセロナでの初めての朝を迎えました。
TVでは『ドラえもん』と『ドラゴンボール』をやっています。
スペインでも日本のアニメは人気がある様です。
『ドラゴンボール』は去年訪れた、メキシコでもやっていました。
偉大なり、ドラゴンボール。
話を知っていながら、ついつい見てしまいます。
ホテルの3階のレストランでゆっくり朝食をとった後、地下鉄でまず『サグラダファミリア』を目指します。
ガウディの設計で有名なバルセロナの観光名所の一つです。「…うおぉぉぉぉ!!」
地下鉄の出口で後ろを振り返ると、テレビや写真で見たことのある塔が天に向かってそびえ立っていました。
なんだか間近で見ると感激してしまいます。
すぐに入場料(800ペセタ)を払い、中に入りました。「…いいねぇぇ!!」
入口からすぐ見える『栄光の門』はいきなりインパクトがあります。
大抵、彫刻と言うと、リアルでなめらかな曲線で構成されているものです。
しかし、この『栄光の門』の十字架にはり付けられたキリストや最後の晩さんを描いた彫刻はみな『カクカク』しているのです。
コンピュータグラフィックス的に言うと『ポリゴン』っぽい彫刻なのです。
できのものすごく悪いCADソフトで精一杯のデザインしたかのようです。
こんな見たことも無い彫刻に早速重太は度胆を抜かれました。反対側に回ってみるとそこには『誕生の門』がありました。(右写真)
「…こまけぇぇ!!」
『栄光の門』とはうって変わってこれでもかと言わんばかりの曲線で構成されています。
見る側に強烈なインパクトを与え、だまって唸らせるほどの素晴らしいものでした。鍾乳洞の様な細工の細かいこと。
あんなに曲線があると、それを石で作る現場の職人は途中でいやにならないかと余計な心配をしてしまいます。
「…ガウディ、おそるべし…!」
自由な発想、自由なデザインから人の目をひく素晴らしいものができるのだな、と感心せずにはいられません。
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いらない足跡 ![]()
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1998年 6月18日 [ バルセロナ ] ★★★★
サグラダファミリアの内部に入ってみると、まだまだ建設途中の様です。
「…ふーん。」
木の幹のように上にいくとどんどん枝別れしていく教会の柱がとても印象的でした。1階のおみやげやには、この教会の完成予定図のポスターや絵葉書が売られていました。
「へぇ、こんな風になるんだ!」
今ある塔の1.5倍の高さはあるかという『キリストの塔』が、教会のど真ん中に立つ様です。
「ほんとにこんな風にできるのか?!」
現在の教会の出来具合いから、その完成予想図はあまりにも無謀に見えます。
思わず笑ってしまう程です。
と、同時に自分が生きている間に是非完成したサグラダファミリアを見てみたいものだとも思いました。塔にも上ってみました。
「うわぁぁぁ!!」
バルセロナ市内を一望できる最高の展望台がそこには待っていました。しかし、途中の螺旋階段の壁には落書きがいっぱいです。
日本語で書かれた落書きもたくさんありました。
そんな足跡など残さなくてもいいのに、なんとも嘆かわしいものです。
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一人目の天才とあう その2 ![]()
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1998年 6月18日 [ バルセロナ ] ★★★
続いて、『グエル公園』に足を運びました。
ここもまたガウディの設計で有名な地です。
白いお城のような壁、カラフルなタイルをちりばめたトカゲの像。
入口(写真 下 左)から来る人を楽しませてくれる公園です。
グエル公園の波形のベンチ(写真 右上)は「これでもか!」というくらいにくねくね曲がったデザインです。 ![]()
見る側にはとても楽しく、石を細工する作業員には涙が出るデザインとしか言えません。「お、いい感じ!!」
座ってみると意外に座り心地が良いのも驚きでした。公園内には『ドーリス式列柱』という白い柱の並ぶ空間や、『ガウディ美術館』などもあります。
市内を一望できる『十字架の丘』もあり、のんびりとした時間を過ごすことも出来ます。
日本にもこんな目にも楽しい、のんびりした公園がたくさん欲しい所です。
●カサミラ (写真右、白い建物)
波の形をした外装。
屋上には兜型の煙突が並ぶ。●レイアール広場
ガウディがデザインした街灯がある。●グエル邸
スポンサー、グエルの為に建てられた邸宅。バルセロナ観光初日は、ぜいたくなくらいどっぷりとガウディにつかった1日でした。
凡人が直線で済ませてしまいそうなところは曲線で、逆に丸みを出そうとするところは直線で表現する。
天才のやることは常規を逸していて、その意外性が見る側にはなんだかとても小気味いいものです。「…ひたすら、いいねぇぇ!!」
そのデザイン、遊び心を重太は勝手に自分流の解釈をし、一人で感心しまくっていました。
この後に待ちうけている、一騒動のことなど知る由もなく…。
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「うそぉ…。」 1998年 6月18日 [ バルセロナ ] ★★★★
「せっかくだから、ここも見に行ってみよう。」
「ここまで来たんだから、もう少し足をのばそう。」
体力も残っているし、日もまだ高いからと、思い立って行動を起したが最後。
予想外につぐ予想外の出来事が重なり、思いっきり疲れる事態を招きます。
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PM5:45、バルセロナ港
「ここ、きれいだな。どこだろう?」
一日ガウディを満喫し、重太はバルセロナの港に座り込み、一人のんびりガイドブックを見ていました。
そこで『カタルーニャ美術館』の写真を発見してしまいます。
せっかくだから、その外観を一目見ようと、地下鉄に乗り、カタルーニャ美術館周辺を目指します。事の発端はここからでした…。
PM6:10、カタルーニャ美術館周辺
地下鉄の駅を出ると大きなロータリーがありました。
左に振り向くと遠くにカタルーニャ美術館が見えます。
ガイドブックで見たのと同じ風景です。
そこから歩き出し、徐々に近付いてくるカタルーニャ美術館の情景はなんとも荘厳な雰囲気をただよわせていました。
写真以上に美しい建物です。
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PM6:50、オリンピックスタジアム
カタルーニャ美術館を右手に裏にまわると、そこには92年のオリンピックの舞台となったオリンピックスタジアムがをありました。「なんだろう?」
ゲートの前では若い女性がたくさん並んでいます。
電光掲示板には「SANZ」というミュージシャンの映像が流れています。
どうやら奥の野外会場でコンサートがこれから行われる様でした。オリンピックスタジアムの近くには競泳用のプールもありました。
モンジュイックと呼ばれるこの一帯は緑が多くとてもゆったりしています。
しかし、とても広く、アップダウンが多いため、歩いての移動はお勧めできません。
PM7:10、パルク・デ・モンジュイック駅
その後、モンジュイックの丘を歩いているとケーブルカー(フニクラ)の駅がありました。
丘の頂上にはモンジュイック城があり、そこからの景色は素晴らしいはずです。「このケーブルカーで丘の頂上の城に行けるのかな?」
重太は、行き先をよく確かめもせず、勢いよく往復券を買いました。「え、え? ちょ、ちょっと!」
ケーブルカーは無情にも下に向かって走り出しました。
そう、頼んでもいないのに一気に丘を下山したのです。まるで、誰かが重太を丘の頂上へ行かせない様にしているみたいです。
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PM7:30、地下鉄3号線パラ・レル駅
ケーブルカーはものの数分で丘のふもとの駅、パラ・レルにたどり着きました。
一生懸命歩いて来た道のりをあっという間に振り出しに戻してくれる出来事でした。「…このままホテルに戻ろうか、それとも丘の頂上の城を目指そうか…。」
ホテルまではこの3号線に乗れば1本で帰れてしまいます。
しかし、城を見ずにかえってしまうのは残念です。
とはいってもすでに夜の7:30。
まだ明るいとは言え、夜遅くなるのも不安です。
これからどうしようか、重太は悩みました。
「城を目指そう!」
悩みに悩んだ挙げく、往復券を買ってしまったついでということで、ケーブルカーで再登山することにします。
そして、今度こそなんとか丘の頂上のモンジュイック城にたどり着いてやろうと、重太はこの時決心しました。
この決心がさらに疲れる結果を招くとは知らずに…。
PM7:40、パルク・デ・モンジュイック駅
先ほどの丘の途中にある駅にケーブルカーであっという間に戻ってきました。
なんともマヌケな数十分でした。「なんだ! これで頂上へいけるんだ!」
ケーブルカーの駅のすぐ隣に丘の頂上に行くゴンドラ乗り場がありました。
ケーブルカーでは無く、このゴンドラに乗って丘の頂上の城へ行けるようです。「…あれ、しまってる。」
しかし、入り口らしき場所は扉がしまっています。
ゴンドラも動いている様子がありません。
なぜか、ゴンドラは運休しているようでした。
まるで、誰かが重太を丘の頂上へ行かせない様にしているみたいです。「こうなれば何がなんでも頂上にたどり着いてやる!」
彼は意地になってモンジュイックの丘を頂上目指して歩き始めました。
PM8:00、モンジュイック城
「この道でいいのかなぁ…。」
地図もなく道も分からず、不安ながらもくねくね曲がった坂道をひたすら上ります。
下からだと丘の上はまるで見えません。「やっぱり、道が違うのかなぁ…。」
不安と戦いながら上り続けること20分。
なんとか目的のモンジュイック城にたどり着くことが出来ました。
「うわぁぁ……。」
夕焼けに照らされる美しいバルセロナの町をそこから一望することが出来ました。サグラダファミリア、バルセロナ港、カタルーニャ美術館など、今日訪れた場所もよく見えます。
その景色は数々のトラブルや歩いて登ってきた疲れを一気に吹き飛ばしてくれるものでした。
PM8:15、モンジュイック城
このままゆっくりここで夕陽に照らされるバルセロナの美しい景色を眺めていたいところです。
しかし、地下鉄の最終電車の時間がわからないので、足早に城を一周し、急いで丘を降りることにしました。
PM8:25、パルク・デ・モンジュイック駅
上るのに20分かかった道のりを10分で一気に下り、ケーブルカーの駅まで戻ってきました。
ここまでくれば、ふもとのパラ・レル駅まであっという間です。「…うそぉ…。」
なんと、さっき乗ったケーブルカーの駅の入り口が閉まっているではありませんか…。
これではふもとまで行けません!
全く信じられない事態が発生してしまいました。
まるで、誰かが重太に嫌がらせをしているみたいです。地下鉄の終電を心配する前に、ケーブルカーの終電を心配する必要がありました。
それにしても、8:00代に営業を終えてしまうのは、日本人には理解しがたいところです。「…どうやってホテルまで戻ればいいんだ…?!」
「…タクシーは全然走って無いし…。」
「………………………………。」
予想外の展開と一日の疲れから数分間、彼は絶望感に襲われます。
PM8:27、パルク・デ・モンジュイック駅
「そうか! さっき歩いて来た道を戻ればいいんだ!」
そのことになんとか気付いた彼は猛ダッシュで先ほど通り過ぎたオリンピックスタジアム、カタルーニャ美術館を逆行します。先ほどは時間を気にせずのんびり歩いてきましたが、結構な距離を歩いて来たことに今さらながら気付かされます。
歩いても歩いてもなかなか駅に近付きません。「…ああ! こんなところに!」
途中、ミロ美術館を発見してしまいましたが、それどころではない状況です。「…きれいな景色…。」
カタルーニャ美術館の正面から駅を見下ろす景色はなかなかすばらしいものがありました。
しかし、今はその景色に酔いしれている場合ではありません。
PM8:50、エスパーニャ駅
小走り、早歩きを繰り返し、なんとか、まだ明るいうちに地下鉄の駅に戻って来ることが出来ました。
「やったぁー!!」
地下鉄もまだばっちり動いています。
これでホテルまで帰ることができます!
やっと、一安心です!
PM9:20、ホテルの近くのレストラン
「………。 うまい!!!」
この日、彼はそれまでの人生で一番うまいビールを飲みました。
炎天下の中、1日35、000歩も歩けばどんなビールでも最高にうまくなります。大事には至りませんでしたが、予想外の展開の連続にヒヤヒヤ、どきどきの3時間半でした。
「……料理はまだか?」
ビールを飲んで落ち着き、眠くなってきましたが、注文した料理はなかなか出て来ませんでした。
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二人目の天才とあう(自由な心の画家) 1998年 6月19日 [ バルセロナ ] ★★★★
バルセロナ観光2日目は、20世紀最も有名な画家に会いに行きました。
もちろん重太もその画家の名前や作品の数点は知っていました。
しかし、彼はそこで思ってもみなかったほど大きな衝撃を受けることになります。その画家の名はピカソ。
バルセロナのピカソ美術館では彼の作品を年代順に並べ展示してありました。
ピカソの作品と言えば、目と鼻の位置がおかしい絵を重太は思い描きます。
しかし、それは彼の作風の一つに過ぎなかったのです。「……うまい!」
なにより驚かされたのは、彼が14、15才のころに描いたデッサン、スケッチ、油絵の数々です。
とにかくうまいのです。
人間の筋肉、表情、陰影…。
これがガキンチョの描く絵か?と思ってしまう程、うまいのでした。重太はピカソが小さい頃、こんなに見事な絵を書いていたことにとても驚きました。
「14才の子供の画力」、「ピカソのマトモな絵」という2点がとても印象的だったのです。その後、順路をたどって行くと、彼の作風の変化を見て取れました。
一度は極めた描写力を崩し、形を替え、様々な表現方法を探究して行く様子がこの美術館で見事にわかりやすく展示されていました。
それは、青くなり、明るくなり、四角くなり…。「次はどんな絵だろう?」
「こう来たか!」歩を進め、次の絵を見るのが楽しくて仕方ありません!
「これも作品か…。」
画用紙に線をさっさと引いて描いたデッサンがまとめて展示されていました。「まじかよ…。」
段ボールをキャンバスに描いた絵がありました。
筆をほとんど重ねない「一発勝負」的な作風のため、キャンバスの下地がみえてしまっているのです!
絵はキャンバスや画用紙に描くもの、そう思い込んでしまいがちな凡人重太にすごいカウンターパンチが入りました。
遊び心、何ごとにもとらわれない自由な心が感じられます。
ピカソがやったからこそ認められたのかも知れませんが、こんな素朴な絵一枚からでもいろいろ学べます。
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公園のひととき ![]()
1998年 6月19日 [ バルセロナ ] ★★
6月のバルセロナはものすごい熱気でおもいきり暑いです。
公園に集う人々も噴水の近くに陣取り、霧ような水しぶきを受け、ゆっくりと時をすごしています。
カタルーニャ公園ではフォルクローレを演奏している人達がいました。
フォルクローレと言えば、彼がアルゼンチンに住んでいた頃、よく聞いた南米の民族音楽です。
体が自然にその調べに吸い寄せられてしまいます。ケーナ(笛)の主旋律に、チャランゴ(弦楽器)と ギターの伴奏、ボンボ(打楽器)のリズムが彼には大変懐かしく、心地よいメロディーでした。
「1枚、下さい。」
重太は迷わず、CDを購入しました。「ちょっといい?」
♪チャララ〜…。
ちょっとだけひさしぶりにチャランゴを触らせてもらいます。「ほう、お前、チャランゴをひけるんだ! 何か演奏できるかい?」
「………『花祭り』なら!」
「よし、それ、行こう!」
「…え? え?」
いきなりフォルクローレ楽団に飛び入りすることになりました。♪チャ チャ チャ チャ チャン! チャ チャ チャ チャ チャン! 〜…。
♪「『じぇんがんど えすた える かるなばーる… 」(=カーニバルに到着したぞ、〜)
:
:
重太が唯一覚えている曲、『花祭り』がバルセロナの空の下、陽気に演奏されました。「ブラボー!!」
「いいぞぉー!!」
演奏が終わるとまわりからは拍手喝采です。
一曲だけでも楽器を演奏できてよかったと、心から思える瞬間でした。
「いやぁ、楽しかった! でもそろそろ行かないと…。」
「そうか…。我々も楽しかったよ!」
「よい旅を!! アミーゴ!!」
この場を去りがたいほど楽しく気持ちのいいひとときを過ごせました。
しかし、今日、スペインを発たなくてはならないのです。
もう少し見たい所もあるので、楽しい思い出を胸に公園を後にしました。「………あれ? あれ? 金がないよ!!」
先程CDを買ったため、空港まで行くためのお金がぎりぎりと気付いたのはその直後でした。
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カタルーニャ音楽堂 ![]()
1998年 6月19日 [ バルセロナ ] ★★
カタルーニャ公園から少し歩いたところの細い路地の奥にカタルーニャ音楽堂はありました。
「すごい装飾だなぁ…。」
彼は外からその外観を眺めました。
赤レンガ作り、二重に重なるアーチ。
柱の上にそびえたつ演奏家だか作曲家だかの胸像。
そして最上部に描かれたモザイク画。
すばらしい装飾は目を見張るものがあります。「…でもなぁ…。」
外観もたしかに見ごたえがあります。
しかし、ガウディの自由な曲線でデザインされた建築物をたくさん見てきた後だと、少しインパクトが足りなく感じてしまいました。
それほど素人目に見たガウディの建築郡は他にはないインパクトのあるデザインだったのです。「…多分、内部の装飾と演奏会場がそれはもう最高に素晴らしいんだろう。」
ガイドブックには「内部の装飾が見事」と書かれていますが、入場方法もわからず、時間もなかったので入りませんでした。重太は外から写真を撮るだけ撮ってそこを後にしました。
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空港のひととき ![]()
1998年 6月19日 [ バルセロナ ] ★★
フランスワールドカップ観戦、スペイン旅行を終え、とうとう日本へ帰る時がきてしまいました。「………タクシー代がない…。」
先程、残りのお金のことを考えずにフォルクローレのCDを買ったため、お金が少ししか残っていません。
空港まではエコノミー価格の電車で行くしかありませんでした。
のんびり走る電車でバルセロナの空港へ行き、なんとか飛行機のチェックインも終えました。「…ああぁぁ!!」
空港で、万が一のために隠しておいた約3000ペセタを発見してしまいました。
つい先ほどまで、お金が足りなくなりそうであせっていたと言うのに…。「スペインのお金を残しても仕方がないよな…。」
と、空港内でショッピングを開始します。
昨日オリンピックスタジアムの裏でコンサートをしていた「SANZ」というミュージシャンののCDを一枚買いました。
あれだけ人が集まっていたので、多分いい音楽を聞かせてくれることでしょう。「まだちょっとお金が残ってるな…。」
最後に喫茶店でオレンジジュースを一杯飲んで、本当に1ペセタ無しになりました。
これで心置きなくスペインを後にできます。
旅のすべての日程を終え、とっとと日本へ帰りたいところですが、
フライトの都合上、ドイツへ立ち寄り、一泊しなくてはなりません…。
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ドイツへ
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スペイン98 [ 後編 ] -目次-
・それは何階? ………西洋風のシステムとの相違に泣かされる・部屋は何階? ………わかりにく部屋番号の付け方に泣かされる
・一人目の天才とあう(現場泣かせの建築家) ………細部までこだわるそのデザイン
・いらない足跡 ………塔の内部で見た悲しいもの
・一人目の天才とあう その2 ………意外性のあるデザイン
・「うそぉ…。」 ………ながーく果てしない夕方からの冒険
・二人目の天才とあう(自由な心の画家) ………変化にとんだその画風
・公園のひととき ………おみやげを買ったが為に…
・カタルーニャ音楽堂 ………外装だけ堪能した世界遺産
・空港のひととき ………一文無しに
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